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オフ会してたら異世界に飛ばされたのでゲーム脳で生き抜いてみる  作者: 元 智
そして迷う

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 第57話 願うなら

第三章


 第57話 願うなら

  


 夜。


 ルノア村。


 最近できた居酒屋『赤ちょうちん・山賊村』。


 木造の店内。


 酒の匂い。


 焼き魚の煙。


 村人達の笑い声。


 そして、やたら声のデカい元山賊達。


「姐さん! こっち空いてますぜ!」


「あとで行くからっ!」


 のんちゃんが手を振る。


「あと山賊焼き頼んどいて!」


「了解っす姐さん!!」


「完全に常連じゃねぇか……」


 たにしが、

呆れたように酒を飲んだ。


「名前そのまんまだしな」


 向かいで、

たくろーが冷静に返す。


「なんで許可したんだよ俺」


「酔った勢いで判押してた」


「終わってんな俺」


 カウンター奥。


 店主のおっちゃんと一緒に、

元山賊達が忙しそうに料理を運んでいる。


「いや、のんちゃん酒飲めないだろ」


「飲めないよ?」


「じゃあなんで来た」


「焼き鳥」


「自由か」


 のんちゃん、

もぐもぐしていた。


 たくろーが、

酒を飲みながら呟く。


「まぁでも、こういう店出来るのは平和って感じするな」


「まぁなぁ……」


 たにしも、

少しだけ店内を見渡す。


 笑い声。


 酔っ払い。


 仕事帰りの村人。


 温泉帰りの観光客。


 元山賊。


「……変わったよねぇ」


 のんちゃんがぽつりと言う。


「最初なんも無かったのに」


「最初はマジで、ジージとソニアしか居ない過疎村だったからな」


「橋作って」


「市場作って」


「温泉掘って」


「旅館作って」


「居酒屋まで出来た」


「誰だよこんな発展させたやつ」


「たにしくんだよ」


 たくろー、即答。


「あと俺」


「あと私」


「共同経営者優秀だな」


「なんかその言い方ムカつくな……」


 でも。


 少しだけ笑っていた。


 その空気のあと。


 少し沈黙。


 たにしが酒を飲む。


 たくろーも飲む。


 のんちゃんは串を食う。


 そして。


「で」


 のんちゃんが言った。


「どーするの?」


「何が」


「中央だろ」


 たくろーが、少しだけ視線を向ける。


「中央制覇なぁ……。」


「乗り気ではって感じか」


「でも、前ほど嫌そうじゃなくなった」


「気のせいだ」


「そうか?」


 たくろーが苦笑する。


「たにしくん、ほんとに嫌な時もっと雑だぞ」


「“帰れ”だけで終わってたしねぇ」


「今回ちゃんと最後まで話聞いてたしな」


「……」


 たにし、黙る。


「まぁでも」


 たくろーが酒を置く。


「白虎はもう動くぞ」


「だろうな」


「お豆ちゃん止まらん」


「知ってる」


「ドラちゃんもなんだかんだ付き合う」


「知ってる」


「くにまるは不確かだがなんらかのアクションはあるだろうな」


「めんどくせぇ……」


 本音だった。


 のんちゃんが笑う。


「でもさぁ」


「ん?」


「たにしさんって、めんどくせぇって言いながら結局放っとけないじゃん」


「そんな事はない」


「ある」


 即答。


 たくろーも頷く。


「昔からそうだな」


「村燃えてると飛び出すし」


「子供泣いてると放っとけないし」


「面倒事拾う才能だけはある」


「それはお前らも同類だろうが」


 たにし、

深く酒を飲む。


 店の外。


 夜のルノア村。


 笑い声。


 灯り。


 温泉の湯気。


 守りたいと思ってしまった場所。


「……そういや」


 のんちゃんが、

串を振りながら言う。


「昔あったよねぇ」


「中央制覇したら何でも願い叶う説」


「あー……」


 たくろーが苦笑する。


「王になれば世界を書き換えられるとか」


「莫大な仮想通貨貰えるとか」


「好きな人生選べるとか」


「色々あったな」


「懐かしいなぁ……」


 たにしが、

少しだけ目を細める。


 全部。


 ゲーム時代の噂話。


 中央最奥。


 王の玉座。


 そこへ辿り着いた者には、

何かが与えられる。


 でも。


 誰も知らない。


 だって、

誰も届いていないから。


「……お前らは?」


 たにしがぽつりと聞く。


「もし本当に、なんか願い叶うとしたら」


「何願う?」


 少しだけ。


 空気が静かになる。


 のんちゃんは、

少し考えてから笑った。


「んー……」


「私は、今くらいでいいかも?」


「欲ないな」


「十分楽しいし」


 たくろーは、

酒を揺らす。


「俺は静かに休みたい」


「切実だな」


「お前らのせいで休めねぇからな」


「被害者面してる」


「事実だろ」


 少し笑いが起きる。


「たにしさんは?」


 のんちゃんが聞く。


「俺かぁ……」


 たにしが、

少しだけ天井を見る。


「俺はなぁ……」


 酒を揺らす。


「お前らって帰りたい?」


 不意の問いだった。


 のんちゃんと、

たくろーが少しだけ目を瞬かせる。


「もし、この仲間ん中にさ」


「帰りたいってやつがいて」


「それが叶うなら」


 たにしは、

静かに酒を飲む。


「まぁ……願うかもな」


 その言葉に。


 少しだけ。


 空気が静かになった。


 のんちゃんが、

たにしを見る。


 たくろーも、

何も言わない。


 帰りたいのか。


 ここに居たいのか。


 そんな事、

もう簡単には答えられないくらい。


 ルノア村は、自分達の居場所になってしまっていたんかもしれない。

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