第56話 帰る場所
第三章
第56話 帰る場所
「お前かぁ……」
たにしが天井を仰ぐ。
お豆ちゃんは、えへへーと笑っていた。
「だってさぁ」
「白虎のみんな、たにしちゃん好きだし?」
「お前も十分人気あんだろが」
「それは当然です」
カエデが真顔で言う。
「姉様は渡しません」
「何の話だよ。シスコンこえーよ」
ドラちゃんが苦笑する。
「まぁでも、実際そんな空気あるんすよ」
「白虎の古参勢、結構ソワソワしてるというか」
「“またあの頃みたいになるんじゃね?”みたいな」
「ならねぇよ……」
たにしが深いため息を吐く。
「俺はもう村長で十分だ」
「えー」
「えーじゃねぇ」
お豆ちゃんが、ぶーぶー文句を言う。
その様子を見ながら、のんちゃんが笑った。
「まぁでも、お豆ちゃん的にはちゃんと伝えられて満足なんじゃない?」
「うん!」
即答だった。
全員少し驚く。
「え、即答」
れんかが呟く。
「そりゃそうだよー」
お豆ちゃんは、けろっと笑った。
「今日は元々、無理やり引っ張るつもりじゃなかったし」
「顔見に来たかったのも本当だし」
「あと」
たにしを見る。
「ちゃんと伝えたかった」
少しだけ。
空気が静かになる。
「私はまだ諦めてないよって」
「……」
「たにしちゃんにも、ちゃんと知っといて欲しかった」
その声は。
珍しく少しだけ真面目だった。
たにしは頭を掻く。
「まぁ……気持ちは分かった」
「おっ」
「でもやらん」
「知ってた!!」
お豆ちゃんがニカッっと笑う。
どっと笑いが起きた。
「まぁでも」
ドラちゃんが立ち上がる。
「今日はこのくらいにしとくっす」
「まだ来る気かよ」
「来るんじゃないすかねぇ」
ドラちゃんが苦笑する。
「この人、一回言い出したら止まんないんで」
「止まんないよ!」
お豆ちゃんが胸を張る。
「あと、ルノア温泉入りたいし!」
「本音出たな」
「ご飯も食べたい」
「さらに本音出た」
あっくんが、静かに皿を並べていた。
「……食べてく?」
「食べる!!」
お豆ちゃん即答。
「帰るんじゃなかったのかよ」
「ご飯は別!」
「自由人しかいねぇなここ……」
たくろーが疲れた顔で呟く。
ひーちゃが、ふふっと笑った。
「なんだかんだ、楽しそうだねぇ」
「まぁねぇ」
のんちゃんも笑う。
「昔のネトゲ仲間が遊び来た感じ」
「ママみたいなのが増えた」
れんかが真顔で言った。
その時。
あいりと、こはるが、ぱたぱた走ってくる。
「おなかすいたー!」
「おにくー?」
「肉」
あっくんが頷く。
「やったぁ」
ぴょんぴょん跳ね始める。
空気が、一気に緩んだ。
お豆ちゃんは。
そんなルノア村を、静かに見ていた。
暖かくて。
騒がしくて。
平和で。
だからこそ。
「……やっぱ欲しいなぁ」
ぽつりと呟く。
「肉か?」
たにしが聞く。
お豆ちゃんは笑った。
「こういう場所守れる王様」
「ルノア村はやらんし、王様もやらん」
「やらん。やらん。わがままだねぇ。」
お豆ちゃんは愛おしそうにたにしを見て微笑んだ。




