第51話 褐色の嵐襲来
三章
第51話 褐色の嵐襲来
早朝。
村長宅。
コンコン。
「んぁーい」
たにしが玄関を開ける。
「おはようございます!」
ソニアだった。
その横。
「おードラちゃん。どした?こんな早くに」
ドラちゃん。
死んだ目。
「おはよっす……」
たにしはちょっと不思議に思う。
「どしたよ?まぁ入れば?」
「あともう二方一緒にいらしてますよ!」
ソニアが言う。
「嫌だったんですけどね……?」
ドラちゃん小声。
「いやマジで」
「“連れてけ!!”って聞かなくて」
「……ん?」
たにしは首をかしげる。
ドラちゃん、疲れ切った顔で続ける。
「……とりあえず」
「んー?」
「まず謝罪します」
「なにを?」
「お豆ちゃんにバレました」
数秒。
「……あー」
たにしは全てを把握した。
その時。
「たにしちゃぁぁぁぁぁん!!!」
遠くから声。
ドラちゃん、硬直。
「来たぁ……」
ダダダダダッ!!
お豆ちゃん、全力疾走。
そして。
「会いたかったぁぁぁぁぁ!!!」
どーん!!
「ぐぇっ」
たにしへ抱きつく。
「朝からうぜぇ!!」
「だってぇぇぇ!!」
「離れろ!」
「嫌だし!!」
玄関先。
大騒ぎ。
ドラちゃん、遠い目。
ソニア。
「仲良しですねぇ!」
「どこが!?」
「離れろってお前!!」
たにしが、お豆ちゃんを引き剥がそうとする。
が。
「やだぁ……」
めちゃくちゃしがみついていた。
「重ぇ!!」
「会いたかったんだもん……」
「気持ちごと重ぇ!!」
その時。
「朝から騒がしいな……」
奥。
リビングから、
たくろーが出てくる。
寝起きだった。
黒髪ボサボサ。
そして。
「……うわ」
露骨に嫌そうな顔。
「おはよーたくろちゃん!」
お豆ちゃん、たにしに抱きついたまま手を振る。
「来ちゃった」
「来ちゃったじゃねぇ……」
たくろー、頭を押さえる。
「面倒事の匂いしかしねぇ……」
「ひどくない!?」
「過去を振り返れ」
「ぐっ」
反論できない。
ドラちゃん、ずっと死んだ目。
「俺は止めたんですよ……?」
「止まる訳ねぇだろこの勢い」
「ですよねぇ……」
たくろー、深いため息。
「……で?」
「カエデも来てるよー」
「だろうな」
「失礼します」
後ろから、カエデが入ってくる。
緑髪。
小柄。
だが、
雰囲気は落ち着いていた。
「お久しぶりです」
「おー。カエデも相変わらず苦労してんだろうな」
たにし、まだお豆ちゃんを引き剥がしながら返事。
「……とりあえず入れ」
「玄関で騒ぐな」
「はーい」
リビング。
ソファ。
テーブル。
ドラちゃん、座った瞬間ぐったりした。
「疲れた……」
「お疲れ様です」
ソニアがお茶を運んでくる。
カエデは、静かに周囲を見回していた。
「……なるほど」
「ん?」
「想像以上ですね」
「なにが?」
「“生活してる感”です」
カエデ、淡々としていた。
「ドフラさんからは聞いてましたが……確かにこれは意外ですね」
「いい家だろ?」
「それは、ええ…」
机。
地図。
書類。
生活用品。
全部が自然に混ざっている。
「……本当に、ここで普通に村を運営してるんですね」
「してるが?」
「いえ」
カエデ、少し笑う。
「正直、半信半疑だったので」
たにし、椅子へ座る。
お豆ちゃんも、当然のように隣へ座った。
「近ぇ」
「いいじゃん別に」
「よくねぇ」
たくろー、お茶を飲みながら呟く。
「面倒なの来たなぁ……」
「まだ言う!?」
「で?」
と、たにしが改めて聞く。
「ほんとになんなんだよ」
「会いたかったのも本当だよ?」
「それは分かった」
「うざかった?」
「うん」
「ひど」
お豆ちゃん、むくれる。
その横。
カエデが静かに口を開いた。
「もちろん、本題も別にあります」
お茶を一口飲んで、お豆ちゃんがたにしを見る。
そして。
「中央を!堕とそう!!」
この上なく爽やかな笑顔で言う。
「よし解った。帰れ」
たにしは真顔で玄関を指さした。
村長宅。
朝。
面倒事は、だいたいここから始まる。




