閑話 24時間愛せますか
閑話
24時間愛せますか
カリカリカリ……。
夜。
村長宅。
事務所。
「……」
たくろーは死んでいた。
机。
書類。
帳簿。
請求書。
温泉旅館完成後。
何故か仕事が増えた。
「なんでだよ……」
本人にも分からない。
◇
「たくろーさん〜」
ひーちゃが、
部屋へ入ってくる。
「ん?」
「はいこれぇ」
小瓶だった。
淡く光る液体。
「疲労回復薬?」
「試作中のやつぅ」
ひーちゃが、
ふわっと笑う。
「疲れ取れると思うからぁ」
「助かる……」
たくろーは本気で感謝した。
「無理しすぎだめだよぉ?」
「善処する」
「それ絶対しないやつぅ」
◇
「じゃぁ、おやすみぃ」
ひーちゃは、
そのまま退室する。
静かな部屋。
「……」
たくろーは、
小瓶を見る。
「俺で臨床実験するなって話だが。まぁ、ひーちゃのだし大丈夫だろ」
ぐいっと飲んだ。
◇
「……うま。ピーチフレイバーか。」
そして。
「……お?」
身体が軽い。
頭も冴える。
「めちゃくちゃ効くじゃん」
仕事が進む。
神薬だった。
◇
ガチャ。
「たっだいま〜」
たにしだった。
酔っていた。
酒臭い。
「お前まだ仕事してんの?」
「村長らしきやつが仕事しなくてな」
「いやぁ村長忙しいらしいぜぇ?」
「お前今日温泉で飲んでただろ」
「付き合い付き合い」
へらへらしていた。
◇
その時。
「……」
たくろーが止まる。
「ん?」
たにしが首を傾げる。
「どうした?」
「……いや」
なんか。
こいつ、こんないい男だったっけか。
(えっ待て、俺は今何を考えた。)
たくろーの脳内が混乱する。
(なんで今ちょっとドキッとした?)
おかしい。
疲れてる?
でも。
たにしが笑う。
「なんだよ気持ち悪ぃな」
「……っ」
心臓がうるさい。
(待て待て待て待て)
「お前顔赤くね?」
たにしが近づいてくる。
「熱あんの?」
額へ手が伸びる。
「触んな!!」
「うおっ!?」
たにしがびっくりした。
「なんだよ急に!?」
「近い!!」
「お前今日どうした!?」
たくろー本人が一番どうしただった。
◇
(なんだこれなんだこれなんだこれ)
たにしを見ると、なんか胸がざわつく。
顔が良い。
距離近い。
笑うな。
やめろ。
(無理だろこれ!!)
◇
「なぁ」
たにしが真剣に心配する。
「たくろー。マジで体調大丈夫か?無理ばっかさせて悪い…」
「邪魔してすまん。無理すんなよ。お先」
たにしは、事務所を出ようとする。
たくろーの体が反射的に動く。
「ちょっ!待てよ!」
その瞬間。
ガンッ!!
「うぉっ!?」
たにしの背後の壁へ、たくろーが手を叩きつけた。
いわゆる壁ドンである。
「……」
「……」
近い。
たにしの顔が近い。
(何してんだ俺ぇぇぇぇ!?)
「た、たくろー?き、きむたくろー!?」
珍しく。
たにしが焦っていた。
「お前ちょっと待て、近い近い」
「うるさい」
「いやおかしいだろ!?」
さらに。
くいっ。
「……は?」
顎を持ち上げた。
完全に無意識だった。
たにし停止。
「お前ほんとどうした!?」
◇
「……顔いいな」
「やめろ怖ぇよ!!」
たにしが焦っていた。
いつもの余裕がない。
たくろー本人も死にそうだった。
(誰か殺してくれ!!)
◇
ガチャ。
「たくろーさん〜」
ひーちゃだった。
「そう言えば副作用がねぇ――」
止まる。
壁ドン。
顎クイ。
真っ赤なたくろー。
焦るたにし。
「……」
「……」
「……あっ」
察した。
◇
「ひーちゃ」
たくろーが真顔で聞く。
「何飲ませた?」
「えとえと…」
「ただの疲労回復薬じゃないだろ!あれ!」
「惚れ薬的な何か?と…媚薬的な何か?…を少々?」
「?多いな!」
壁際のたにしもつっこむ。
「ちなみに効果と対象教えてもらえたり!?」
たにしが聞く。
「疲労はすごく回復するはず!!ただ…副作用が…飲んで最初に見た人?を好きに?なっちゃう?なのかな?見たところ?」
「「?多いわ!!」」
二人の声が揃う。
そして見つめ合う二人。
空気が死んだ。
◇
「ということらしいな」
平静を取り戻そうとするたにしが、たくろーの手を払い、部屋を出ようとする。
その瞬間。
「行かないでくれ…」
たくろーがたにしを背後から抱き止める。そうですいわゆるバックハグです。
「ひゃっ」
変な声を出して固まるたにし。
「あらあらまぁまぁ」
と、ほんのり頬を赤らめるひーちゃ。
「ちょっとのんちゃん呼んでくるね!」
と、部屋掛け出ていく。
「ひぃちゃああああ!それだけはやめろおおおおお!」
絶叫するたにしにたくろーが耳元で囁く。
「なぁ…たにしくん…俺を…殺してくれ…」
虚ろな目のたくろーがそこに居た。




