閑話 閃光一閃
閑話
閃光一閃
東の森。
「これぇ?」
こはるが葉っぱを持ち上げる。
「それは違うかなぁ」
ひーちゃが、
ふわっと笑った。
「ちがうかー」
「むずかしー」
こはるはむぅっとする。
今日は、薬草採集だった。
◇
「いやぁ、平和だねぇ」
のんちゃんが伸びをする。
木漏れ日。
川音。
風。
「のんちゃん、付き合ってもらってごめんねぇ」
ひーちゃが少し申し訳なさそうに言う。
「全然だよ。安全になったと言っても危険がないわけじゃなしね」
と、こはるを抱き上げてすりすりするのんちゃん。
「みんな働きすぎなんだよねぇ。私は癒し補充」
「たくろーさん、死んだ顔してたぁ」
「それは、いつもじゃん」
と、のんちゃんが笑う。
◇
「おはな!」
こはるが小さな黄色い花を見つける。
「こはる、遠く行っちゃだめだよぉ?」
「はーい」
返事だけは元気だった。
ぴょこぴょこ歩いていく。
「絶対わかってないねぇ」
のんちゃんが苦笑する。
「おぉ〜」
ひーちゃがしゃがむ。
「虹砂草いっぱい生えてるぅ」
少し珍しい薬草だった。
「ほんとだ」
のんちゃんも覗き込む。
「これ高いやつ?」
「そこそこかなぁ?高級回復薬に使うの」
「へぇ。じゃぁいっぱい採っておかないと」
「うんうん」
ほんの少し。
本当に少しだけ。
目を離した。
◇
カササッ。
「?」
こはるが振り返る。
茂み。
赤紫色のヘビがこはるへと這ってくる。
「きゃぁ!」
驚いたこはるが、思わず声をあげる。
「――こはる!!」
のんちゃんが反応する。
速かった。
地面を蹴る。
だが。
それより先に。
ひーちゃが動いていた。
◇
一瞬だった。
ふわっとした空気が消える。
ひーちゃが、こはるを抱き寄せ左手を突き出す。
「こはるに…」
静かな声。
でも。
全然優しくなかった。
ぱきっ。
空気が鳴る。
ひーちゃの周囲へ、白い光が集まっていく。
眩しい。
森が昼みたいに白く染まる。
「なにすんじゃぼけえええええええええ!」
ゴォッ!!
白光。
音すら飲み込む閃光が、一直線に森を走った。
木々が揺れる。
風が吹き抜ける。
そして。
何も残っていなかった。
「ひっ!」
のんちゃんでさえ、怯んで止まる。
もろもろ。
消滅。
跡形もない。
地面だけが、一直線に抉れていた。
「……ひーちゃ?」
「……ぼけぇぇって言った…?」
のんちゃんの脊髄反射でも処理出来てない。
◇
「こはる」
対して。
ひーちゃは、すぐしゃがみ込む。
「だいじょうぶぅ?」
いつもの声だった。
こはるは、涙目でこくこく頷く。
「ヘビ…こわかったぁ……」
「ごめんねぇ」
ひーちゃが、ぎゅっと抱きしめる。
「ママがこわいのやっつけたからねぇ。大丈夫だよ。」
よしよしと頭を撫でる。
「……いや」
のんちゃんが、抉れた森を見る。
「怖いの…ひーちゃじゃ?」
「んぇ?」
ひーちゃは、きょとんとしていた。
「あ、いや、なんでもないです…」
目をそらすのんちゃん。
◇
帰り道。
こはるは、ずっと抱っこだった。
そして。
「……ひーちゃだけは怒らせないようにしよ」
固く心に誓うのんちゃんだった。




