第50話 ルノア温泉
二章
第50話 ルノア温泉
湯気が立ち上っていた。
南区。
新設された温泉旅館。
その名も。
『ルノア温泉』
そのままだった。
◇
「完成です!!」
スズが胸を張る。
露天風呂。
木造の休憩所。
食事処。
畳スペース。
湯上がり用の椅子。
そして。
景観。
「おぉ……」
たにしが普通に感心していた。
「なんかもう普通に温泉宿だな」
「頑張りました!!」
スズは満足そうだった。
◇
「では」
たくろーが木札を掛ける。
『本日開湯』
その瞬間。
「うおぉぉぉぉ!!」
待機していた村民達が歓声を上げた。
「押すな押すな!!」
「走るな!!」
「若頭さん飛び込まないでください!!」
「温泉だぁぁぁ!!」
若頭がダイブした。
◇
男湯。
「……はぁぁぁ」
たにしが、
ゆっくり湯へ沈む。
夜風。
湯気。
木の香り。
遠くの灯り。
「これは生き返る」
「俺ら生きてるのかは疑問だけどな」
たしかに。と、たにしが苦笑する。
「でもまぁ」
岩へ寄りかかる。
「疲れは取れるな」
「橋からずっと工事だったもんなぁ」
「休ませろ……」
たくろーは完全に溶けていた。
◇
女湯。
「……生き返る」
れんかが寝湯へ沈んでいた。
「完全にダメ人間の顔してるねぇ」
のんちゃんが笑う。
「ぬる湯最高」
「こだわってたもんねぇ」
「寝湯もある」
幸せそうだった。
その横。
「露天気持ちいいでねぇ〜」
ひーちゃが、ぽやっと笑う。
「夜風いい感じぃ」
「だらだらできる」
「それを目指した」
れんかが真顔で言った。
◇
「できたよー」
湯上がり後。
休憩所。
あっくんが料理を運んでいた。
「おぉ!蕎麦じゃん!」
のんちゃんが目を輝かせる。
「十割そば」
「こだわりすげぇ。つかそば粉とか、器具…まぁ色々聞くまい」
たにしが苦笑する。
団子。
冷やし果物。
そして。
「……なんであるの」
れんかが真顔になる。
『ルノアフラペチーノ』
普通に置かれていた。
「人気商品だから」
「やめて」
「でも売れてる」
「やめて」
◇
夜。
露天風呂から、
ぼんやり湯気が立ち上っていた。
休憩所では、
村民達が蕎麦を啜っている。
笑い声。
食器の音。
遠くで聞こえる虫の声。
「……はぁ」
たにしが、湯上がりの椅子へ座る。
夜風が気持ちよかった。
「みんなで温泉いこうって話よくしたけどこういう形になるとはなぁ」
「確かになぁ」
たくろーも何かを思うように笑う。
「寝湯最高」
その会話を、聞いてか聞かずか、れんかが満足そうに呟く。
「完全に住む気だねぇ」
のんちゃんが笑った。
「まぁこれはこれでいいか」
たにしは、キンキンに冷えたビールのようなものを飲み干して笑った。
ルノア村の夜は、
今日もゆっくり更けていった。




