第49話 湧け、温泉
二章
第49話 湧け、温泉
カンカン。
ゴンッ。
ガガガガガ……。
「そこ運んでください!!」
「うっす!!」
「岩そっちです!!」
「うっす!!」
「若頭さん埋まってます!!」
「うっす!!」
「返事してないで出てください!!」
南区。
今日もいつもの工事現場だった。
◇
「いやぁ……」
たにしが腕を組む。
「また村が騒がしくなってきたなぁ」
温泉旅館予定地。
現在。
半裸達が岩を運びまくっていた。
「なんで山賊って岩似合うんだろうな」
「原始人感あるよねぇ」
のんちゃんが笑う。
「姐さん、聞こえてるっす」
「働け働け」
◇
「こっち寝湯です!!」
スズが図面を広げながら叫ぶ。
「ここぬる湯!!」
「ここ露天!!」
「ここ休憩所!!」
◇
「食事処は和風寄りにしたい」
あっくんが呟く。
「蕎麦」
「まだ言ってる」
「あと湯上がり甘味」
「やりたいこと増えてんなぁ」
「フルーツ牛乳寒天とかどう?」
「やめて」
れんか即拒否。
「もう氷見たくない」
完全に魔力疲労だった。
◇
「おぉ〜」
ひーちゃが感心した声を出す。
「なんか温泉っぽくなってきたねぇ」
岩。
木組み。
湯舟。
まだ未完成。
でも形は見えてきていた。
「景観完璧です!!」
スズがドヤ顔する。
「今回はマジで合ってる」
たにしも頷いた。
◇
「で?」
たくろーが聞く。
「肝心の温泉は?」
「最後です!!」
スズが胸を張る。
「村ポイントで温泉源を解放します!!」
「毎回思うけど便利だなそれ」
「万能ではないですよ!!」
「でも大概便利だよな」
◇
「じゃあいきます」
ソニアがたにしに確認するように言う。
「たのむ」
その瞬間。
ゴゴゴゴゴ……。
地面が揺れる。
「おぉ?」
「来た来た!!」
みんな少し下がる。
沈黙。
「……」
「……出なくない?」
たにしが言った。
「え?」
スズが固まる。
「ポイント足りなかった?」
「そんなこと――」
ソニアが少し焦る。
その時…。
ポコ。
地面から、小さな泡。
「……しょぼくない?」
「待ってください!!」
次の瞬間。
ブシャァァァァァ!!
「ぎゃあああああ!!」
若頭へ直撃した。
◇
「熱っ!!熱っ!!」
「うわめっちゃ出てる」
湯。
湯気。
勢いよく溢れ出す温泉。
「成功です!!」
スズが歓声を上げる。
「おぉぉぉ!!」
半裸達も盛り上がる。
「若頭が茹でられてるっす!!」
「縁起いいねぇ」
「よくないっす!!」
◇
湯気が立ち上る。
あたたかい空気。
ほんのり硫黄っぽい香り。
「……あったか」
れんかが、小さく呟く。
まだ入っていない。
でも。
ちゃんと温泉だった。
◇
「完成までもうちょいですね!!」
スズが笑う。
「食堂も仕上げないと」
あっくんも頷く。
「畳欲しいねぇ」
のんちゃんも楽しそうだった。
「なんか普通に温泉街作ってない?」
たにしが笑う。
少し前まで、何もなかった辺境村。
ついに温泉まで湧いた。
「早く疲れをとりてぇ……」
たくろーだけ、少し遠い目をしていた




