第44話 足りないもの
二章
第44話 足りないもの
「木材足りません!!」
朝。
その一言から始まった。
◇
「また?」
たにしが死んだ目で聞く。
最近ずっとこれだった。
足りない。
何かが足りない。
主に金と人と素材。
「橋工事で大量消費してます!!」
スズが図面を広げながら言う。
「あとロープ!!」
「釘!!」
「石材!!」
「あと人手!!」
「なんもかもだな」
たにしが頭を抱える。
◇
「いや実際キツいぞ」
たくろーも珍しく真顔だった。
「橋、思ったより規模デカい」
「まぁ川広かったもんな」
「このままだと、村の資材ほぼ持ってかれてる」
その瞬間。
「えっ」
ルークが止まる。
「家具作れなくなっちゃいますね」
「資金面はやりくりはがんばりますけど…」
ソニアも困った顔をした。
「お風呂拡張……」
れんかが静かに沈む。
「お前が一番深刻そうだな」
◇
「でも橋必要だよねぇ」
のんちゃんが言う。
「必要です!」
ソニアが即答。
「交易増えるし」
「市場も広がる」
「人も来る」
ベルクも頷く。
「東側との流通量が変わります」
「物流は命です!!」
「最近、完全にベルク思想だなお前」
「最近わかってきました!!」
◇
「ただまぁ」
ベルクが静かに言う。
「大規模工事とは、村全体を巻き込むものです」
たにしも黙って聞く。
「橋だけ作って終わりではありません」
市場。
住宅。
運搬。
交易。
「全部繋がるんですよ」
たにしは少し考える。
たしかに。
今までのルノア村は、
その場その場で広がってきた。
でも。
橋は違う。
村そのものを変える工事だった。
◇
「山賊達はフル稼働なんだよな?」
たにしがのんちゃんに聞く。
「村周りの警備の分もあっちに回してるみたいよ」
たくろーも頷く。
「だろうなぁ」
「ちょっと、南区行ってくるか」
たにしは頭をかきながら立ち上がった。
◇
その日の午後。
東の森。
「差し入れっすー!!」
村民達が来ていた。
水。
干し肉。
スープ。
おにぎりっぽい何か。
「おぉぉぉ!!」
半裸達が歓喜する。
◇
「いやぁ」
若頭が飯を頬張りながら言う。
「なんか普通に村の工事って感じしてきたっすねぇ」
「今まで普通じゃなかったん?」
「山賊が橋作ってる時点で普通じゃないっす」
「それはそう」
たくろーが頷いた。
◇
「たくろーさん!!」
スズが走ってくる。
「木材追加届きました!!」
「早いな」
「村の人達が切ってくれてます!!」
その向こうでは。
普通の村民達が、木材を運んでいた。
「橋できたら便利になるからねぇ」
「頑張ってくださいな」
そんな声まで飛ぶ。
たくろーは少しだけ驚いた顔をする。
「……なんか」
「ん?」
「思ったより、期待されてんな」
その言葉に。
スズは少し笑った。
「みんな、楽しみにしてるんです!!」
◇
夕方。
工事現場。
橋脚は二本目へ入っていた。
まだ全然足りない。
資材も。
人も。
時間も。
でも。
前より現場は賑やかだった。
「おーい若頭ぁ!!」
「うっす!!」
「また流されるなよー?」
「今日はまだ一回しか流されてないっす!!」
「流されてんじゃねぇか」
笑い声が響く。
橋完成はまだ遠い。
でも。
ルノア村は、少しずつ繋がり始めていた。




