第43話 橋脚
二章
第43話 橋脚
ゴォォォ……。
激流だった。
「思ったより流れ強ぇな……」
若頭が引きつった顔で川を見る。
東の橋。
本日。
ついに工事開始。
現在。
川の中。
半裸達が必死に足場を組んでいた。
「そこ固定してください!!」
「うっす!!」
「そっち材料流されないようにしてください!!」
「うっす!!」
「山賊さんは流されてもいいので!!」
「うっす!?」
スズは早速テキパキと指示を出していた。
◇
「……で?」
橋横。
図面を見ながら、たくろーが聞く。
「まず何すんの」
「橋脚の仮組みです!!」
「基礎からか」
「土台大事です!!」
珍しく真面目な顔だった。
だが。
「ぬおおおおおっ!?」
ドボン!!
「兄貴いぃぃぃぃ!!」
「流されたぁぁぁ!!」
「早いな」
工事開始十五分だった。
◇
「だから命綱付けろって言ったじゃないですか!!」
「いや思ったより流れ強くてっすね!?」
「水圧ナメすぎです!!」
「川怖ぇぇ……」
びしょ濡れ若頭。
その横。
「姐さんは余裕そうっすね……」
のんちゃんだった。
普通に川の中へ立っている。
「これくらいなら平気だよ?」
「人類側の発言じゃないっす」
◇
すったもんだありながらも、工事は進んでいく。
「……ん?」
たくろーが橋脚を見る。
「ズレてんな」
「え?」
スズが止まる。
橋脚。
わずかに傾いていた。
「うわ」
「ホントです!!」
水流。
地盤。
想定より流れが強い。
このまま組めば、橋全体が歪む。
「……」
スズの顔から、
少しだけ余裕が消える。
「一回外すか?」
「いや……」
スズは橋脚を見る。
「たぶんこれ、下の石が滑ってます」
「ほう」
「流れが斜めに当たってるんです!!」
珍しく、焦っていた。
「どうする?」
たくろーは静かだった。
スズは少し考え。
「……支え増やすしか」
「無理くないか?」
「ですよね!!」
「流される」
「ですよねぇ!!」
テンパっていた。
◇
たくろーは、
少しだけ川を見る。
流れ。
石。
ロープ。
橋脚。
「若頭」
「うっす!」
「ロープ一本追加」
「うっす!!」
「あと橋脚、左二十度引け」
「うっす!!」
「スズ」
「は、はい!!」
「下の石組み変えるぞ」
「……あ」
スズの目が少し開く。
「流れ逃がすんですか!?」
「たぶんそれで安定する」
「なるほどです!!」
その瞬間。
スズの顔がぱっと明るくなった。
◇
「そこ固定!!」
「うっす!!」
「若頭さん流されないでください!!」
「無茶言うなっす!!」
「気合いです!!」
「現場猫理論!!」
◇
ゴゴゴ……。
橋脚が動く。
ロープが張る。
石組み変更。
そして。
ピタッ。
「……止まった」
若頭が呟く。
さっきまで揺れていた橋脚が、安定していた。
「おぉ……」
スズが少し感動した顔になる。
「すごいです!!」
「まぁ経験」
たくろーは、少し照れくさそうに頭を掻いた。
◇
「たくろーさん!!」
「ん?」
「次から、水流計算もっと慎重にやります!!」
「そうしろ」
「勉強になります!!」
「お前、勢いだけじゃなかったんだな」
「失礼です!!」
でも。
ちょっと嬉しそうだった。
◇
「……なんか」
のんちゃんがニヤニヤしていた。
「息合ってきたねぇ」
「えっ」
スズ停止。
「いや別に」
たくろーも止まる。
「共同作業ですし!!」
「たくろーさんと初めての!!」
「その言い方やめろ」
若頭が真顔で頷く。
「橋って愛を育むんすねぇ……」
「お前はもう一回流れてこい」
◇
夕方。
激流の中。
一本目の橋脚が立っていた。
まだ一本。
でも。
確かに前進していた。
「……橋っぽくなってきたな」
たくろーが呟く。
その横で。
スズは、少しだけ誇らしそうに笑った。




