第41話 村を歩こう
二章
第41話 村を歩こう
「釣り飽きたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
朝。
村長宅。
たにしの絶叫から始まった。
「急になに」
れんかが真顔で聞く。
「毎日毎日!!
ハッチャン!!
ハッチャン!!
ハッチャン!!」
バンッ!!
「もう顔見たくねぇ!!」
「借金返済のためですっ!」
と、ソニアが厳しい顔を作って言う。
「ブラック秘書がよぉ…」
「NPCに働かされる村長とかさすがに引く」
真顔のれんか。
市場。
現在。
たこ焼き大盛況。
つまり。
材料不足。
「東の川往復しすぎて、魚より俺の方が釣られてる気分なんだが?」
「末期だねぇ」
のんちゃんが笑う。
◇
「じゃあ今日はお休みにしましょう」
とソニアが言った。
「休み!?」
たにし歓喜。
「どっちが雇用主よ」
と、のんちゃん爆笑中。
「というわけで、釣りはお休みして、村見て回りましょう!」
「視察業務に変わっただけじゃねぇか!…俺の自由はよぉ…」
「村長、最近ずっと川じゃないですかぁ」
「おう、ハッチャンとしか喋ってないわ」
「花とかタコと会話…友達居ないの?」
れんかが憐れむ目でたにしを見る。
「朝から刺しまくりだな!」
今日も無事にのんちゃん呼吸困難で死亡。
◇
確かにここ最近は
早朝から釣り。
仕込み。
風呂。
飲む。
寝る。
それしかしていない。
「釣りが視察業務に変わっただけだと言いたいとこだが」
たにしが立ち上がる。
「たまには村長っぽいことするか」
「今までしてなかったんだ」
れんかが真顔で言った。
◇
まず。
中央市場。
「おぉ……」
たにしが少し止まる。
賑わっていた。
屋台。
荷車。
人。
笑い声。
焼ける音。
香り。
以前より、
明らかに人が多い。
「……増えてね?」
「増えてますよぉ」
ソニアが頷く。
「行商人さんも増えましたし、近隣村の人も来てます。ドラフさんとこからも来てますね」
「へぇ」
その時。
「いらっしゃーい!!」
知らないNPCだった。
串焼きを売っている。
「……誰?」
「住み始めた人です」
「増えてんなぁ……」
しかも。
普通のおっさんだった。
山賊じゃない。
モヒカンじゃない。
普通のおっさんだった。
「感覚狂ってる」
れんかが居たら絶対言ってた。
◇
北側。
ベルク商館ルノア支店。
既に、
普通に営業していた。
「これはこれは」
ベルクが笑う。
「珍しいですね。たにし様が昼間に村にいるとは」
「俺をハッチャン漁師扱いするな」
「違うんです?」
とベルクが少しからかうように笑う。
「違わなくなってきてるのが怖い」
その横。
「おや、村長さん。」
見本の家具を並べていたルークが気づく。
「ハッチャン漁は今日は?」
「再放送やめろ」
たにしは苦笑い。
「売れてる?」
「ええ。最近は椅子より棚が人気ですね」
「生活感出てきたなぁ」
「皆、長く住む気になってきたのでしょう」
その言葉に。
たにしは少しだけ周囲を見る。
たしかに。
“仮住まい感”が減っていた。
◇
西側。
「うわ」
たにしが止まる。
「デカくなってる」
ルノア組。
以前より、明らかに広がっていた。
さらに増築中だった。
カンカン。
ゴンゴン。
工事音。
「そこ!あっちに運んどけ!!」
「うっす!!」
「そこ!半裸で溶接すんな!景観を損ねる!!」
「うっす!!」
「あほ!下も脱ぐんじゃねぇ!!全裸になるな!!」
若頭が仕切ってた。服を着て。心なしかモヒカンが伸びていた。
「お前が仕切ってんの?」
大声をあげてた若頭が振り返る。
「あ、おやっさん!朝のお勤めご苦労さまっす!」
「言い回しがなんかこう…まぁいいわ」
山賊も増えていた。
モヒカン。
スキンヘッド。
アフロ。
パンチ。
知らない半裸。まぁ元々見分けつかないが。
「人数どれくらい居んの?」
「村の外に居る構成員も含めると…200人くらいっす!」
若頭が元気に答える。
「構成員言うな。そして多いわ」
「姐さんの愛の広さっす!」
若頭は誇らしげに言った。
◇
南。
居住区。
「……おぉ」
たにしが少し驚く。
家。
家。
家。
以前より、
明らかに増えていた。
洗濯物。
子供。
煙。
生活音。
ちゃんと“暮らし”がある。
「ほっほっほ」
ジージだった。
「どうじゃ現村長。村らしくなったじゃろ」
「ここ、空き家ばっかだったよな?なんか普通に住んでんなぁ……」
「戻ってきた者もおるしの」
「戻ってきた?」
「元の村民じゃ」
ジージが頷く。
「戻りたい。言うから許可しといたぞい」
「元村長の許可でいいのか?」
その横。
「ここも広げましたぁ」
ソニアが言う。
畑などが目に見えて増えていた。
田んぼまである。
「村ポイント使って?」
「はいっ」
「許可したっけ?」
「伺いましたよ!なんか、ブツブツ、ハッチャン…ハッチャン…って虚ろな目で言ってましたけど」
「それ、許可になってる?」
そこへ、スズが走ってくる。
「村長!!大体完成です!!」
東の川から、細い水路が引かれていた。
水が流れている。
「これ、引いてきたん?いつのまにだよ」
「はい!山賊さん達が突貫工事で!!」
「ああ、それであいつら、ちょいちょい、恍惚とした顔で東の森にいたのか。恐怖だったわ」
「許可とか、経費は…まぁもういいわ」
たにしが苦笑する。
「洗濯!!生活水!!あと景観!!」
「最後はともかく、まぁ必要だわな。ご苦労さん」
「いやいや!まだまだっす!!」
と、スズは屈託なく笑う。
「後は、たくろーさんと東の橋を見に行って、れんかさんからの、お風呂の改築の相談もありますし、のんちゃんさんは、燻製肉製造工場作ろ?って言ってましたし…それからそれから」
「わかったわかった」
たにしは苦笑して止める。
「村長の許可とは?と思う一日だったが、まぁ各所で相談して上手くやってくれ」
「了解です!!」
と、スズはまた元気に走って言った。
「なぁ」
水路に流れる水を見ながら、たにしがジージに問いかける。
「なんじゃ?」
「お前もこうやって仕事することなくなったん?」
少し驚いた顔のジージ。
「ふぉふぉっふぉ」
と、ただ嬉しそうに笑った。




