第40話 噂の村
二章
第40話 噂の村
「ほぇ…」
第一声がそれだった。
昼。
ルノア村入口。
ドラちゃんは、目の前の光景を見て固まっていた。
「市場できてる……」
人。
屋台。
呼び込み。
煙。
笑い声。
少し前まで、何もなかった辺境村とは思えなかった。
「おー、ドラちゃんじゃん」
たにしが手を振る。
「久しぶり」
「だいぶ賑やかになったっすね」
ドラちゃんは市場の活気を見ながら言う。
「そうだな。なんか最近は近隣のNPC村からも人が来て露天出したりしてるみたいだな」
「なるほどー」
と、ドラちゃんは関心する。
◇
「いや、ウチに来る行商人に聞いてっすね」
ドラちゃんが言う。
「辺境で“丸くてヤバい食べ物”が流行ってるって!」
「情報の広まり方終わってるな」
「あと“市場できた”って」
「まぁまだ市場ってほどじゃないけどな。買い物は楽になったな」
「自分たちの為にっすか?」
「そらそーだろ?」
「たにしさんぽいっすね」
と、ドラちゃんが笑う。
◇
「はいたこ焼き一丁!!」
ジュゥゥゥ……
鉄板の音。
香り。
ソース。
「うわ……」
ドラちゃんが目を丸くする。
「マジ、たこ焼きだ…」
「ルノア名物」
たにしがドヤ顔した。
「この辺じゃ、タコ手に入らなくないっすか?あるにはあるけど、海は中央のさらに向こうっすし」
「入らんなぁ。あっても高いしな」
まぁ食ってみろよ。とたにしが笑う。
◇
「はい」
パックを渡される。
丸い。
湯気。
ソース。
謎に美味そうだった。
「……いただきます」
ぱく。
「熱っ!!」
そのまま。
「……っ!?」
止まる。
「え?」
「なにこれ」
「うまいだろ?」
「普通にってか、めちゃ美味いっす!」
ドラちゃんが、次々に口に放り込んでいく。
「この…はふっ…タコ…もデカい…はふっ…すね」
「あ、それ、タコじゃないぞ。ハッチャンだ」
「ぶふぉおおおおお!」
ドラちゃん、全部吐き出す。
「ハッチャンって魔獣じゃないすかっ!何食わせんすかっ!」
たにしは、大丈夫だってと笑いながら。自分も食べて見せる。
「えー…ちょと引くんすけど…食べて大丈夫なんすか…?」
「なんも問題出てないよ?」
「チャレンジャーっすねぇ…」
と、ドラちゃんは手元のたこ焼きを見つめる。
「ちゃんと商品化前に毒見はしたぞ?」
「たにしさんが?」
「んなわけない。山賊にな?」
「やっぱ、あんた怖ぇっす…」
「ちゃんと、ひーちゃ連れてったし。なんならそいつ、今、マッチョになってるわ」
まぁ美味いしいいやんか。と笑う。
その顔を見て、ドラちゃんも微妙な顔をしつつも、また口へと運んだ。
◇
「おかわり」
「はや」
「いやだって……」
ドラちゃんは真顔だった。
「なんか悔しい」
「悔しい?」
「辺境飯だと思って舐めてた」
「失礼だな」
「でも美味しい……」
完全にハマっていた。
◇
「おー、ドラフの旦那じゃないすか!いつぞや、しばかれて以来っすね!」
若頭が通る。
木材を担いでいた。
「……え?」
ドラちゃんが止まる。
「なんで山賊働いてんの?」
「労働は尊いっす」
「教育済み!?」
さらに。
「そこ危ないです!!」
スズの声。
「足場崩れます!!」
「うっす!!」
「なんで現場回ってんの!?」
「景観管理っす!!」
「意味わかんない!!」
情報量が多かった。
◇
「たにしさん」
ドラちゃんが呟く。
「この村、なんか変じゃないすか?」
「そうなん?」
たにしが真顔で返す。
「普通NPCって、こんな生活感出ないっすよ?」
「キモいくらい出てるよなぁ。こいつら中の人いるんじゃ?ってなることあるわ」
「なんで組事務所みたいの運営してんの?」
「流れ。大体のんちゃんのせい」
なんとなく理解。とドラちゃん。
「あの、スズっての、鍛冶師っすよね?やってること現場監督だけど」
「そうだな。たくろーがナンパしてきた」
「レアNPCを…たくろーさんぱねぇ…」
そこへ、ベルクが通りかかる。
「これは、ドフラさま。ルノア村へようこそ」
「ようこそってお前、ここに住んでんの?」
「ええ、しばらくお世話になろうかと」
ベルクが爽やかに笑う。
「大手商会の主まで…」
ドラちゃんが、
少し遠い目をする。
少し前まで、
辺境の寂れた村だった場所。
でも今は違う。
「なんつーか、設備とかそんなんは全然なんすけどねぇ」
と、ドラちゃんが笑う。
「中央でも、ちょっとずつ噂になってるっすよ」
「ん?」
「“辺境に変な村がある”って」
「変は余計だろ」
「来てみて思ったけど、事実っすねぇ」
ドラちゃんが笑う。
その横で。
「たこ焼き追加五人前!!」
若頭の声が響いた。
「うるせぇ食いすぎだ」
ルノア村は、
今日も騒がしかった




