第39話 第一回ルノア料理大会
二章
第39話 第一回ルノア料理大会
当日。
市場予定地。
人。
屋台。
煙。
香り。
熱気。
完全に祭りだった。
「なんか普通にイベント会場だな……」
たにしが呟く。
「村おこし大成功ですね」
ベルクが満足そうに頷いた。
◇
「それでは!!」
市場中央。
ベルクが前へ出る。
「第一回!!
ルノア料理大会を開催します!!」
拍手。
歓声。
何故か山賊の野太い声援。
「審査委員長は私!」
ベルクが胸を張る。
「副審査委員長に、
ジージさん、ルークさん!」
「ふぉっふぉ」
「よろしくお願いします」
「そして審査委員は!」
バッ!!
「若頭さん!
スキンヘッドさん!
アフロさんです!!」
「「「うっす!!」」」
完全に圧が強かった。
「人選終わってる」
れんかが真顔で言う。
◇
「では最初の料理!」
ベルクが声を張る。
「エントリーナンバー1!」
静かに。
あっくんが前へ出た。
運ばれる皿。
その瞬間。
「おぉ……」
空気が変わった。
美しい。
焼かれた肉。
香草。
彩り。
ソース。
全部が綺麗だった。
「料理名は」
あっくんが静かに言う。
「イベリコ羊のソテー。
ルノアの木漏れ日ソース仕立て。
シェフの無口なサラダを添えて」
「いきなり高級店始まった」
たにしが引いた。
◇
「……うまっ」
若頭が止まる。
「肉やわらけぇ……」
「ソース深っ……」
スキンヘッドも固まる。
アフロに至っては泣いていた。
「草が……うめぇ……」
「シェフの無口なサラダが刺さってる」
れんかが真顔で言う。
◇
「次!!」
たくろーだった。
「俺カレー」
「雑!!」
「いやまだ未完成なんよ」
たくろーが頭を掻く。
「スパイス足りん」
「でも出すんだ」
「追求はやめないけどな」
だが。
「……うめぇ」
「力強いっす」
「何かしらの汗が出る」
評判は良かった。
ただ。
「あと一歩感ありますねぇ」
ベルクが言う。
「うむ、それが確認したかった」
たくろーの心に何かしらの火が灯った。
◇
「次ぃ〜」
のんちゃんが出したのは。
「干し肉」
「シンプル!」
「でも効能付きだよ?」
【お肌にいい】
【便秘解消】
「携帯食にその機能いる?」
たにしが苦笑する。
そして。
「普通に美味いっす!」
「姐さんの愛を感じるっす!」
若頭が危険発言した。
◇
「次」
れんか。
出てきたのは。
「フルーツ牛乳フラペチーノ」
キラキラしていた。
冷たい。
「氷魔法製」
「ズルくない?」
「技量」
れんかは真顔だった。
そして。
「……ん?」
若頭が止まる。
「中のモチモチ何すか?」
「タピオカみたいなもの。材料は秘密」
「怖」
なお、
めちゃくちゃ美味かった。
◇
「次は私たちですぅ!」
ひーちゃ、ソニア、あいり、こはる。
女子チーム。
「フルーツ入りクレープです!」
かわいかった。
甘い。
華やか。
だが。
「見た目、生八つ橋っぽいな」
「寄せましたぁ」
「なんで?」
さらに。
【毒消し】
【麻痺回復】
【HP小回復】
「地味に性能高い」
「女子力」
れんかが頷いた。
◇
「さて」
ベルクが言う。
「最後の料理です」
空気が少し変わる。
ジュゥゥゥ……
鉄板の音。
香り。
ソース。
「……なんだこれ」
若頭が呟く。
丸い。
香ばしい。
未知の料理だった。
鉄板前。
たにしが立つ。
「料理名」
ドヤ顔。
「たこ焼き」
沈黙。
「たこ?」
「まぁ厳密には違う」
「違うんかい」
「川のハッチャンって魔獣」
「食って大丈夫なの?」
「今まで誰も食わなかっただけだ」
「怖ぇよ」
◇
「あとこの鉄板!」
スズが胸を張る。
「私作です!!」
「そっち参加なんだ」
「専用設計です!!」
謎に誇らしげだった。
◇
「……いただきます」
若頭が、恐る恐る食べる。
そして。
「……っ!?」
止まる。
「え?」
「なにこれ」
「中トロトロっす……」
「熱っ……うまっ……」
「ソース強ぇ……」
スキンヘッドが固まる。
アフロはもう食っていた。
「止まらねぇっす……」
さらに。
「外カリッとしてる……」
「香りヤバい」
「あとなんか楽しい」
ベルクまで真顔だった。
◇
「この黒い液体は?」
ルークが聞く。
「東の森のオタフクの実を煮詰めた」
たにしが答える。
「……天才では?」
ベルクが普通に感心した。
「あと、これにはまだ進化の余地がある」
「ほう?」
たにしは静かに笑う。
「たこ焼きには、マヨネーズがいる」
「また知らん単語出た」
◇
結果発表。
「優勝は――」
ベルクが紙を見る。
「たこ焼き!!」
歓声。
「いえあぁぁぁぁ!!」
たにしが拳を突き上げる。
「借金返済だぁぁぁ!!」
「動機が終わってる」
れんかが真顔で言う。
その横。
「追加三十人前!!」
「こっちも!!」
「持ち帰りしたいっす!!」
既に大行列だった。
市場に響く鉄板の音。
笑い声。
ソースの香り。
その日。
ルノア村に、
初めて“名物”が生まれた
たにしは、いい笑顔でたこ焼きを焼いた。
スズに鉄板代を請求されるまでは。




