第38話 村の味を作ろう
二章
第38話 村の味を作ろう
「やはり特産品が欲しいですね」
帳簿を見ながら、ベルクが静かに言った。
昼。
ベルク商館(仮)。
ベルクに呼び出されたたにし達。
「また急だな」
たにしが椅子へ座る。
「商売とはタイミングです」
「なるほど」
NPCの言に納得するたにし。
◇
「市場は良い流れです」
ベルクは続ける。
「人も来始めた」
「ほむ」
「ですが、“わざわざ来る理由”がまだ弱い」
空気が少し変わる。
「理由?」
「名物ですよ」
ベルクは市場予定地を見る。
「この村ならではの物」
「やっぱり特産品かぁ」
のんちゃんが頷く。
「ルノア村来たらこれ食え、みたいなやつよねぇ」
「食は強いと思う」
あっくんが言った。
「保存食にもできるし」
「川魚もあるしな」
たくろーも腕を組む。
「最近釣り人増えてるし」
「食べ物なら、継続して売れますしねぇ」
ソニアも頷く。
その時。
「なら」
たにしが立ち上がる。
「料理大会だ」
沈黙。
「……また始まった」
れんかが真顔で呟いた。
◇
「ですが、悪くないですね」
ベルクが少し笑う。
「優勝料理を、ルノア村とベルク商会で正式に推しましょう」
「おぉ」
「それはデカいな」
たくろーが頷く。
「交易品になるってことか」
「継続収入になります」
ベルクは営業スマイルだった。
そして。
「優勝賞金は5000Gほどで。当方で負担します」
静止。
「……出る」
たにしがゆっくり座り直した。
「目の色変わった」
のんちゃんが笑う。
「借金返済チャンス」
れんかが真顔で言う。
「時は今!」
◇
【第一回 ルノア料理大会 開催決定】
その貼り紙が出た瞬間。
村の空気が変わった。
◇
「負けない」
あっくんが静かに言った。
「お?」
たくろーがそのオーラにちょっと後ずさる。
「今回は本気出す」
「いつも美味いけどな」
「今回はもっと本気」
怖かった。
既にメモを書き始めている。
「川魚」
「香草」
「保存性」
「あと酒に合う」
「ガチだ…」
◇
「料理かぁ〜」
のんちゃんが笑う。
「燻製とか強そうじゃない?」
「ママ、携帯食に味求めるもんね」
「れんか、何出すの?」
「風呂上がりに合うもの」
れんかが真顔で言った。
「そこ基準?」
「重要」
すごく真剣だった。
「辛いものか」
「甘いもの」
「冷たいもの」
「あと牛乳」
「健康ランド発想なんよ」
◇
「スイーツもアリですよねぇ!」
ソニアが目を輝かせる。
「果物ありますしぃ」
「甘いのは人気出そう」
ひーちゃも頷く。
「ケーキ!」
「けーき!」
「生八つ橋一択じゃろ!」
クセ強いもので、ちびっこと張り合うなよジージ。
◇
スズは、たにしの元に居た。
「料理大会楽しみですね!!」
「お前料理できんの?」
「できません!!」
「なんで参加側なんだよ」
「屋台建築です!!」
「そっちか」
たにしは、少し考え。
「ならちょっと作って欲しいものがあるんだが」
「なんですか!!マヨネーズは作れないですよ!!」
「NPCが異世界マヨネーズ無双ほのめかすなよ」
たにしは苦笑いしながら、スズに協力を求める。
◇
翌日から。
ルノア村の空気は、
少しおかしくなった。
「試作です!!」
「味見してぇ!」
「これ辛っ!!」
「塩足りん!」
「燻製時間長いか……?」
「ソースに美しさがないかも」
村中から、料理の匂いと共に鬼気迫る何かが漂う。
市場予定地は、
既に半分屋台村だった。
その様子を、モヒカンとスキンヘッドとアフロが眺める。
「兄貴…俺等、審査委員なんすよね…?」
「ああ…」
「味…しそうにないっす…」
若頭達は、忖度すんなよ!ちゃんと選びなよ!
と言ったのんちゃんの顔を思い出し、食欲ではない生唾を呑んだ。




