第36話 市場を作ろう
二章
第36話 市場を作ろう
「つーわけで」
夕食後。
村長宅リビング。
「市場を作ろう」
たにしが突然言った。
「また急だな」
たくろーがハーブティーのようなものを飲みながら応える。
「いやでも必要じゃね?」
たにしは指を折る。
「最近、人増えた」
「まぁ」
「物増えた」
「まぁ」
「荷物散らかってる」
「それはたにしの部屋だけ」
「否めない」
れんかが真顔だった。
◇
「でも実際、
交易増えてるよねぇ」
のんちゃんが頷く。
「ベルクさん来る頻度も増えてますしぃ」
ソニアが帳簿を見る。
「最近、外から来る人もチラチラ見るねぇ」
ひーちゃも言った。
東ルート解放。
交易路整備。
川素材。
他プレイヤーが来ることはないような辺境だが、山賊の危険度が減った事や、川ボスが討伐されたことで、行商人や、狩人、釣り人、採集者などの、いわゆる、一般NPCと言われる者の来訪が増えていた。
「誰かさんが拾ってくるから、組員も増えてるしなぁ。あいつら普通に消費して経済回してるよな」
姐さんは素知らぬ顔である。
「今、全部“その辺”で売ってるんだよな」
「まぁな」
たくろーが頷く。
あっくんは村長宅前。
ルークは工房前。
素材は倉庫横。
行商は空き地。
統一感ゼロ。
「村としては微妙だな」
「景観が終わってます!!」
スズが即反応した。
「お前ほんと景観好きな」
「大事です!!」
「てなわけでまぁ。物流どうこうってより、俺らの利便性のためみたいな感じかね」
「なんか街っぽくなるねぇ」
のんちゃんが笑う。
「露店いっぱい作ります!!」
スズの目が輝く。
「屋根も!!」
「灯りも!!」
「水場も!!」
「気合いすご」
「導線も必要だな」
たくろーまで乗ってきた。
「人通り考えると、
村中央寄りがいい」
「あと搬入口」
「保管庫もいる」
「いいねぇ〜」
たにしがニヤニヤする。
「文化祭前みたいになってきた」
「絶対徹夜するタイプ」
れんかが真顔で言う。
「そして寝坊する」
「否定できねぇ」
あっくんが少し考える。
「料理出しやすくなる」
「おっ」
「あと、
川魚売れるかも」
空気が少し変わる。
「……たしかに」
東の川。
あそこ、
かなり資源豊富だった。
「保存食とかもいけるか?」
たくろーが聞く。
「燻製なら」
「ポーションもちょっといいの作れるよ」
ひーちゃも頷く。
「確かに特産品みたいなの、欲しいもんね」
「……特産品」
のんちゃんの言葉に、たにしが復唱する。
「ルノア村名物」
「おぉ〜」
のんちゃんが楽しそうに笑う。
「なんか一気に村っぽい」
◇
「酒!」
たにしが元気に挙手して言う。
「酒なぁ。確かに今はベルクから買ってるからな。作れれば強いが…」
酒造法が…。とたくろーがブツブツ考えだす。
「じゃぁカジノ!」
「じゃぁじゃないわ」
「市場で何始める気?」
母娘にツッコまれるたにし。
「飯は普通に強いと思う」
あっくんが言った。
「保存食も作れる」
「家具も売れるかもしれませんね」
ルークも静かに頷く。
「農具とかも需要あると思います!!」
スズまで乗ってきた。
「おぉ……」
たにしが少し感心する。
「なんか、
ちゃんと村運営会議っぽい」
「今さら?」
のんちゃんが笑った。
◇
「場所どうする?」
たくろーが地図を広げる。
「井戸近くが無難か」
「人集まりやすいしねぇ」
「道も広げたいです!!」
「また工事増えるなぁ……」
「ルノア組の出番です!!」
スズが胸を張る。
その瞬間。
若頭が外から顔を出した。
「姐さん!!」
「んー?」
「また仕事増えたっすか!?」
「増えたねぇ」
「うおぉぉぉ!!」
「なんで嬉しそうなんだよ」
「最近、労働の喜びを知ったっす!!」
「更生施設かよ…」
◇
翌朝。
村中央。
「ここをですね!!」
スズが棒で地面を叩く。
「市場予定地にします!!」
「おぉー!」
あいりとこはるが拍手する。
まだ何もない空き地。
でも。
これから。
屋台が並び。
人が集まり。
物が流れ。
村が、
もっと広がっていく。
「なんかワクワクするな」
たにしが笑う。
その横で。
「……増築費用」
ソニアが帳簿を見ながら青ざめていた。
「現実だ」
れんかが真顔で呟いた。




