第33話 師弟の形
二章
第33話 師弟の形
「たくろーさぁぁぁぁん!!!」
朝。
ルノア村へ、
今日も元気な声が響いた。
「また来た……」
村長宅リビング。
たくろーが、
朝から遠い目をしていた。
バァン!!
「おはようございます!!!」
「扉を壊すなよ?」
たにしが即ツッコむ。
「壊す前に直すので!」
スズだった。
今日は、
大きな木箱を背負っている。
「なんだその荷物」
「修理道具です!!」
「なんで?」
「なんか今日、
色々直したくなったので!!」
「行動原理が突発的すぎる」
「スズちゃぁん!」
水くみをしていたソニアが嬉しそうに手を振る。
「ソーニアーー!!」
「朝から元気だねぇ」
ひーちゃが苦笑する。
◇
「で?」
たにしがパンを齧る。
「今日は何しに来たん?」
「この前気になった場所、
直したいです!!」
「仕事モードだな。ポイントとか、そんなにないぞ?」
「柵とか壁とかのちょっとしたとことかの補修とか、金物の交換とかなので余裕っす!ルークさんも協力してくれるっす!」
「ああ、まぁじゃぁ頼むわ」
それから…とスズは村外れの方を指さす。
「あの廃墟寸前のやつ!」
「山賊達に恨みでもある?」
「景観が!!」
真顔だった。
その時朝採れキノコを持ってきた若頭が入ってくる。
「おはようござ――」
「特にこの半裸が!!」
「何がぁ!?」
朝から理不尽だった。
◇
「つかお前、
最近めっちゃ来るな」
たにしがふと思ったように言う。
「はい!!」
「本職の方はいいのかよ」
「ちゃんとやってます!でもこっちも楽しいので!!」
即答だった。
「……お前さぁ」
たにしが呟く。
「いや…もう住めば?」
「え?」
「え?」
スズが固まる。
たくろーも止まる。
「……住む?」
スズが復唱する。
「だってお前、
ほぼ毎日来てるじゃん」
「まぁ……」
「往復めんどくさくない?」
「それはちょっとあります!!」
「あるんかい」
その横。
「たしかにぃ」
のんちゃんが笑う。
「ソニアも嬉しそうだし」
「はいっ!」
即答だった。
「たくろーも嬉しそう」
「言うと思ったわ」
「認めた」
れんかが真顔で言う。
◇
「でも……」
スズが少しだけ視線を落とす。
「私、
師匠の弟子ですし……」
「あー」
たにしが頷く。
「勝手には決められんか」
「はい」
少しだけ。
珍しく、
元気が弱かった。
その時。
「なら聞きに行けばいいんじゃ」
あっくんが普通に言った。
沈黙。
「……たしかに」
「シンプル解決」
たくろーが苦笑する。
「行くか?」
「……行きます!!」
一瞬で復活した。
「切り替え早ぇな」
◇
数時間後。
西山麓。
カンカンの鍛冶場。
カン――ッ!!
いつもの音が響く。
「師匠!!」
「うるさい」
カンカンが即答した。
「なんじゃ」
スズは、
少しだけ緊張した顔をする。
「その……」
「ルノア村に、
住み込みたいです!!」
沈黙。
火の音だけが響く。
「……」
「……」
「……ほぅ」
カンカンは、
金槌を置いた。
「で?」
「で?」
カンカンの言葉に、スズが首をかしげて繰り返す。
「なんでワシが反対すると思った」
「え?」
今度はスズが止まる。
「いや……
だって弟子ですし……」
「弟子じゃからじゃ」
カンカンは鼻を鳴らした。
「若いのは、
山だけ見とるより外見た方がええ」
スズが目を丸くする。
「それに」
カンカンは、
ちらりとたくろーを見る。
「どうせお前ら、
しょっちゅうここ来るんじゃろ」
「まぁ……はい」
「なら変わらん」
あっさりしていた。
「ただし」
カンカンがスズを見る。
「サボるな」
「はい!!」
「浮かれるな」
「はい!!」
「あと騒ぐな」
「それは無理です!!」
「じゃろうな」
少しだけ。
カンカンが笑った。
◇
帰り道。
「やったぁぁぁぁ!!」
スズが、
山道を駆け回っていた。
「住めます!!」
「よかったな」
「毎日行けます!!」
「何が?」
「たくろーさんのとこ!!」
「語弊!!」
たくろーが即叫ぶ。
◇
その頃村では
「また増えそうだねぇ」
のんちゃんがニヤニヤする。
「騒がしいの」
「今さらじゃ?」
ひーちゃが笑う。
「確かに」
あっくんも頷く。
多めに作るか。と夕食の用意をしながら笑った。




