第32話 増築会議
二章
第32話 増築会議
「……なんかモノ増えたなぁ」
夕方。
村長宅リビング。
たにしは、
ソファへ座りながら呟いた。
最初。
この家、
本当に何もなかった。
木の机。
椅子。
以上。
みたいな状態だったのに。
今は違う。
ラグ。
棚。
カーテン。
照明。
観葉植物。
クッション。
妙にオシャレな壁飾り。
額装されたあいりの絵。
完全に生活空間だった。
「主に女子勢が勝手に増やしてるからねぇ」
のんちゃんが笑う。
「快適大事」
れんかも頷く。
「女子部屋もっとすごいよぉ?」
ひーちゃが微笑む。
「男子禁制だけどねぇ」
「なんで?」
「夢が壊れるから」
「どういう理論?」
たにしが首を傾げる。
その横。
「キッチンいい感じ」
あっくんが真顔で言った。
「あっくんはもう開店しそうよな」
「なくはない」
「まぁ美味いしなぁ」
最近。
キッチン周りだけ、
妙に機能的だった。
除菌と研ぎを一瞬で行う包丁置き。
陳列自動魔法乾燥棚。
自動補給調味料ラック。
象でも収納可能な不思議吊り収納。
そして。
新しい鍋。
「でも、お高いんでしょう?は!?まさか!あっくんも借金して!?」
「たにぃとは違う。ルークさんが安く作ってくれるし、お金使わないで貯めてる」
「ぐはっ!」
さらに。
「作業部屋も勝手に改造した」
たくろーが言う。
「お前もか」
「効率重視」
事務所兼作業部屋。
そこはもう、
完全に工房だった。
棚。
図面。
工具。
資材整理。
帳簿。
無駄がない。
「逆に怖いわ」
「散らかす村長が悪い」
「反論できねぇ」
その時。
のんちゃんが、
ふと思い出したように言った。
「そういや、
たにしくんの部屋ってどうなってんの?」
空気が止まる。
「……」
「……」
「……見た」
れんかが静かに言った。
「なんで入った」
「掃除」
「勝手に!?」
「クエ報酬の魅力に勝てなかった。苦渋の決断」
「個人の部屋の掃除とかデイリークエに出さないで欲しいだけどっ!運営にお叱りメールだなっ!」
「んで?」
のんちゃんが聞く。
れんかは真顔だった。
「何もなかった」
「やめろ」
「刑務所みたいだった」
「そこまで!?」
「村長なのに?」
たにしの胸へ、
静かに現実が刺さる。
「借金があるので……」
「釣り竿だっけぇ?」
ひーちゃが苦笑する。
「ええ、まだ残ってまして…」
その時。
あいりが元気よく言った。
「でもお花いたよ!」
「お花?」
「動いてた!」
「……あ」
沈黙。
数秒後。
「まさか」
のんちゃんが笑いを堪え始める。
「お前……
アレ買ったの?」
「……勢いで」
「あるんだ」
たにしの私室。
唯一増えた家具。
それは。
【生きてるフラワーロック 300G】
声や音楽に反応して揺れる。
だけ。
「なんでそれ買った!?」
「いやなんか……
目が合って……」
「寂しがり?」
れんかが真顔で言う。
「家具買う金ないのに?」
「なんで無駄インテリアだけ買ったの?」
「無駄言うな!水だけあげれば電池いらないんだぞ!声真似もするんだぞ!」
「病んでるの?」
のんちゃんが苦笑する。
「お前らだって無駄家具いっぱいあるんだろ!!」
「必要」
「生活の質」
「癒し」
「くっ……!」
数の暴力だった。
◇
「でもさぁ」
のんちゃんが箸を止める。
「スズちゃんの言ってたこと、
普通に正しいかもねぇ」
「あー……」
たにしも頷く。
「現場目線っていうか」
「ここで長く生活してる者の目線ではあるかもな」
たくろーが言う。
「外敵はともかく、生活面での安全性とか、俺らあんま考えてなかったしなぁ」
「資材置き場も危なかったねぇ」
ひーちゃも頷く。
「生活できるようにはなってきたけど、
まだ“村”としてはまだ全然未完成なんだろうな」
たにしが呟く。
柵。
道。
灯り。
水。
収納。
人が増えるほど、
必要なものも増えていく。
「まぁでも」
ソニアが帳簿を開いた。
「前よりは余裕ありますよぉ」
「お?」
「村ポイント、
結構増えてます」
空気が少し変わる。
「おぉー」
「やっと余裕出てきたか」
たくろーが頷く。
交易。
依頼。
素材。
畑。
全部少しずつ回り始めていた。
「つまり?」
のんちゃんが笑う。
「増築タイムだな」
その瞬間。
空気が変わった。
「作業場拡張」
たくろー。
「新鮮市場」
あっくん。
「浴場拡張とマック」
れんか。
「なんかあった時の為に回復系の施設も欲しいねぇ」
ひーちゃ。
「服とかアクセサリーとかの店も欲しいね」
のんちゃん。
「ケーキ屋さん!」
あいり。
「動物園!」
こはる。
「なんか無茶なのもあるが大体想定通りの要望だな」
うんうんと頷くたにし。
「だがしかし!今の俺達に必要なのは!娯楽だ!不安な日々を忘れさせるような興奮だ!」
拳を突き上げるたにし。さながら選挙演説のように。
「いい予感しないな」
たくろーが苦笑する。
「ダメな大人の顔」
れんかもため息。
「そう!それは!大人達のパラダイス!カジ…」
「「「「却下」」」」
「のぉ…」
食い気味で却下される村長であった。




