第31話 現場の目
二章
第31話 現場の目
「ソーニアーーー!!」
村長宅を飛び出したスズが、
一直線に誰かへ突撃した。
「ふぇっ!?」
ドンッ。
「きゃっ!?」
抱きつかれたソニアが、
そのまま綺麗に転んだ。
「久しぶりです!!」
「ス、スズちゃぁん……!」
ぎゅうぎゅう。
完全に旧友だった。
「知り合いか」
たにしが少し驚く。
「小さい頃よく遊んでたんですぅ」
「ソニアすぐ転ぶので、よく助けてました!!」
お前ら、ホントその無駄設定細かいな。
「今は転ばせてたけどな」
◇
「ソニア!村、元気になってきたね!」
スズが元気よく言った。
「うん!嬉しいね!」
ソニアは転んだ事を気にする様子もなく笑う。
「村の中見たいんだってさ」
「ソニアも行こっ!」
「はいっ!」
こうして。
たにし。
ソニア。
スズ。
三人で、
ルノア村を回ることになった。
◇
「へぇぇ〜〜〜」
スズは歩きながら、
キョロキョロしていた。
「畑広くなってますね!!」
「最近開墾したからな。まだ増やしたいけどな」
「でもここ危ないです」
「え?」
スズが、
畑横の地面を指差す。
「ここ雨降ったらぬかるみます!!」
「……あ」
たにしが止まる。
「荷車通れなくなるかもです!」
「たしかに……」
今は晴れている。
だが、
地面が少し低い。
「あとソニア転びます!!」
「わ、私基準なんですかぁ!?」
「ソニアは転ぶので!!」
「こいつ段差ゼロでも転ぶじゃん…」
「否定できない……」
◇
「この井戸いいですね!!」
次。
井戸前。
「お、分かる?たくろーが金具替えてなおしたんだ」
「おお!さすがたくろーさんです!尊いです!」
「井戸に頬ずりすんな。こえーよ」
「でも夜危ないです!!」
「夜?」
「子ども落ちます!!」
空気が止まる。
「……あー」
たにしが井戸を見る。
柵がない。
「確かに危ないかもねぇ……」
ソニアも頷く。
「あと灯り欲しいです!!」
「灯り?」
「暗いと転びます!!」
「全部転倒基準なんだな」
「ソニアいるので!!」
「わ、私そんなに転びませんよぉ!」
その瞬間。
ズルッ。
「きゃっ」
「ほらぁ!!」
「説得力ぅ!」
◇
「あとここ!!」
村外れ。
資材置き場。
スズが眉をひそめた。
「木材濡れてます!!」
「え?」
「このままだと傷みます!!」
たにしが見る。
確かに、
簡易シートしかない。
「……マジだ」
「あと通路狭いです!」
「そんな分かるもん?」
「荷車通れません!!」
「……あー」
妙に納得できた。
スズは感覚で喋ってる。
でも。
言ってることは、
かなり正しい。
◇
「あと、あれ!」
いつの間にやら出来てた山賊宿舎?を指さして言う。
「建物も住人も景観を損ねてます!」
半裸で、庭?でスクワットみたいな事をしてるモヒカンとスキンヘッド。
…なんか人数増えてないか?
「あれはまぁ…うん確かに…まぁ危なくはないぞ」
なんなら、こはるとかあいりの護衛みたいな事してるし。遊び相手も。
「なんか……」
たにしが腕を組む。
「お前、大雑把キャラかと思いきや、細かいとこよく見てんな」
「師匠がうるさいので!!」
スズは胸を張った。
「“壊れる前に直せ”
って言うんです!!」
「中々の無茶振りだな」
「カンカンさんっぽいなぁ」
とソニアは笑う。
「あと!」
スズが続ける。
「この村、
まだまだ伸びます!!」
「お?」
「作りやすいです!!」
「作りやすい?」
「はい!!
変に完成してないので!!」
その言葉に。
たにしは少しだけ、
ルークを思い出した。
『未完成なのが良い』
同じことを言っていた。
職人って、
そういう生き物なのかもしれない。
◇
夕方。
「じゃあ私は帰ります!!」
スズが空になった袋を背負う。
「もう帰るの?」
「師匠を放置すると危ないので!!」
「お前が一番危なそうだけどな」
「よく言われます!!」
「また来ますね!!」
スズが笑う。
「おう」
たにしが軽く手を振る。
「次は東の橋見ます!!」
「もう仕事目線なんよ」
「気になるので!!」
そう言って。
スズは、
元気よく山の方へ走っていった。
静かになる。
「……」
「……」
たにしは、
村を見回した。
柵。
井戸。
道。
資材置き場。
今まで、
“あるだけ”だったもの。
でも。
ちゃんと見れば、
足りないものだらけだった。
「……村って、
作ること多いなぁ」
ぽつりと呟く。
その横で。
ソニアが、
少し嬉しそうに笑った。
「でも……
なんだか楽しいですねぇ」




