第28話 二人目の鍛冶師
二章
第28話 二人目の鍛冶師
カン――ッ!!
山へ、
今日も鉄を打つ音が響いていた。
「……なんか落ち着くなこの音」
たくろーが鉱石を降ろしながら呟く。
「わかる」
あっくんも頷いた。
西の山麓。
カンカンの鍛冶場。
最近、
二人は定期的にここへ通っていた。
鉱石採取。
武器修理。
加工。
少しずつだが、
ルノア村の装備事情は改善し始めている。
カンッ!!
「坊主」
「はい」
「そこ冷やすの早い」
「あ」
ジュワァァ……
湯気。
「鉄は焦ると死ぬ」
「料理みたい」
「料理と鍛冶は似とる」
カンカンは真顔だった。
「火とタイミングじゃ」
「……なるほど」
「スジは悪くない」
「ありがとう」
その時。
バァン!!
「師匠ぉぉぉぉぉ!!」
「うるさい」
飛び込んできた。
少女だった。
赤髪。
煤だらけ。
頭にゴーグル。
腕まくり。
そして。
元気。
「鉄炭どこですか!!」
「裏」
「ありませんでした!!」
「表じゃ!!」
「なるほど!!」
「なにがなるほどなんじゃ」
少女は、
そこでようやく二人へ気づいた。
「お客さんですか!?」
「あぁ、ルノアのモンじゃ」
「こんにちは!!」
「声デカ…そしてテンプレ元気っ子だ」
あっくんが素で言った。
「私はスズです!!」
「うっさいのぉ…」
カンカンが呆れる。
「弟子じゃ」
「へぇ」
たくろーが少し驚く。
「弟子いたんだ」
「拾った」
「拾われました!!」
「元気だなぁ……」
◇
「これ見てください!!」
スズが剣を掲げる。
「できました!!」
たくろーが受け取る。
「……おぉ?」
軽い。
バランスも悪くない。
「普通に良くない?」
「でしょ!」
「ただ」
あっくんが指差す。
「なんで鈴ついてるの?」
柄に、
小さい鈴がついていた。
チリン。
「かわいいからです!!」
「戦闘向きではないな」
「気分上がります!!」
「そんなもん不要じゃろ」
カンカンが頭を抱える。
「こやつ、すぐ装飾盛りたがるんじゃ……」
「だってカッコいい方が良くないですか!?」
「実用品を作れ!!」
「えー!!」
完全に親子だった。
◇
「たくろーさんって戦士ですよね!?」
「まぁ一応」
「かっこいいですね!!」
「そうか?」
「はい!!」
距離が近い。
グイグイ来る。
たくろーが若干引いていた。
「今度その剣使った感想ください!!」
「いやこれはちょっと音が……」
チリン。
「かわいいですよ!!」
「戦場だぞ?」
「癒し大事!!」
「発想が自由」
あっくんが呟いた。
その時。
「あと!」
スズがたくろーを見る。
「たくろーさん優しいですね!!」
「え?」
「師匠すぐ怒鳴るので!!」
「お前が原因じゃ!!」
カンカンが怒鳴る。
「えへへ!!」
「褒めとらん!!」
騒がしい。
でも。
鍛冶場の空気は、明るかった。
◇
「包丁って剣みたいですね!!」
スズが、
あっくんの包丁を見て目を輝かせる。
「切るものは違う」
「でも火使うし鉄使うし!!」
「まぁ」
「料理も鍛冶も職人ですね!!」
「……」
あっくんは少しだけ考え。
「スズちゃん」
「はい!!」
「鍛冶楽しそう」
「はい!楽しいです!師匠は怒ってばっかですけど!」
スズが屈託なく笑う。
「口動かさんで、手動かせ!」
カンカンがぶっきらぼうに言う。
だが。
少しだけ、
口元が緩んでいた。
◇
帰り道。
「……騒がしかったな」
たくろーが苦笑する。
「うん」
「ああいうタイプ苦手?」
あっくんが聞く。
「いや……苦手とかではないが」
少し考え。
「まぁウチのメンツとは合いそうだよな」
あっくんが微笑んで頷く。
「たくろーさぁぁぁぁん!!!」
山の上から声。
二人が振り返る。
スズが、
ものすごい勢いで手を振っていた。
「また来てくださいねぇぇぇ!!」
「ただ…声デカいな」
たくろーは苦笑しながら、
小さく手を振り返した。
その横で。
あっくんが静かに言った。
「懐かれてる。のんちゃん達に報告」
「本当にやめろ」
ニヤニヤして問いただしてくるのんちゃん母娘を想像しながら下る坂道は、
何故か上り坂のように足が進まなかった。




