第26話 守るために食べるために
二章
第26話 守るために食べるために
「装備が弱い」
朝。
開口一番、
たくろーが真顔で言った。
「急だな」
たにしはパンを齧る。
村長宅リビング。
朝食中だった。
「いやでも実際そうだろ」
たくろーは腕を組む。
「前回の熊、かなり危なかったぞ」
「あー……」
のんちゃんも頷く。
「ひーちゃ結構削られてたし」
「びっくりしたねぇ」
ひーちゃが苦笑する。
「今の装備、初期装備ちょい上くらいだしな」
たくろーは剣を見る。
刃こぼれ。
歪み。
中ボス戦のダメージが残っていた。
「防具も薄い」
「たしかに」
「あと、たにしくん弱い」
「最後急に個人攻撃!」
「事実だろ」
「反論できねぇ!」
その時。
あっくんが静かに言った。
「鍋も大きいの欲しい」
全員そっちを見る。
「鍋?」
「包丁も」
「あー……」
たにしが納得する。
「最近料理増えてきたもんな」
「今の包丁、骨切りづらい」
「料理人ガチ勢だ」
あっくんは淡々としていた。
「あとレベル上げたい」
「生産職って感じだなぁ」
たくろーが少し笑う。
そして。
「ってわけで、西行ってくる」
「西?」
「山」
西の山脈。
西の森のさらに向こう。
低レア鉱石の採取ポイント。
「鍛冶素材掘ってくる」
「おぉ」
たにしが頷く。
「ちょっとでもいい鉱石欲しいしな」
「ついに鍛冶屋たくろー爆誕」
「NPC来るまでの繋ぎだけどな」
「いや普通に助かる」
その横で。
「僕も行く」
あっくんが言った。
「ん?」
「鉱石加工覚えたい」
「鍋欲しいし」
「動機が生活」
「生きるのに必要」
その通りだった。
◇
西側。
山脈麓。
「うわー……」
あっくんが見上げる。
「デカい」
灰色の岩肌。
切り立った崖。
空気が冷たい。
東の森とは、
また違う雰囲気だった。
「この辺は低級鉱石しか出ないらしいけどな」
たくろーがツルハシを担ぐ。
「初心者区域って感じ」
「でも人いない」
「危険だからだろ」
実際。
西側は魔獣こそ少ないが、
地形が厄介だった。
足場。
落石。
崖。
普通に危ない。
「気をつけろよ」
「ん」
カンッ!!
ツルハシが岩へ当たる。
火花。
「おぉ」
あっくんが少し目を丸くする。
【鉄鉱石を獲得しました】
「出た」
「ほんとにゲームだな」
◇
「……たくろーさん」
「ん?」
「鍛冶できるの?」
「サブ職は鍛冶師だからな。もちろんゲームの中でしかやったことないが」
「だよね。料理とは違うよね」
「そうだな。料理は現実でもするからな」
「難しそう」
「やってみるさ」
たくろーが苦笑する。
「まぁ、武器の耐久管理くらいはいるだろ」
「まぁ」
「ドラちゃんの装備見ただろ?」
「あー……」
黒い剣。
高級装備。
明らかに格が違った。
「中央勢とまともにぶつかったら、今のままだとキツい」
たくろーは真面目だった。
「俺達、生産弱いしな」
「ルークくらい?」
「家具で殴るわけにもいかんし」
「それはそう」
カンッ。
カンッ。
静かな山へ、
採掘音が響く。
その時。
ガラッ。
「っ」
小さな落石。
「うおっ」
あっくんがよろける。
「大丈夫か!?」
「……平気」
だが。
その奥。
岩陰。
誰かいた。
「……」
無骨な男。
大柄。
髭。
腕が太い。
そして。
片手で、
真っ赤な鉄を叩いていた。
カン――ッ!!
重い音。
熱。
火花。
「……人?」
あっくんが呟く。
男は、
ちらりと二人を見た。
そして。
「その掘り方じゃ、
鉱石割れるぞ坊主」
低い声だった。
空気が少し変わる。
たくろーとあっくんは、
顔を見合わせた。
「テンプレドワーフ鍛冶NPC発見」
あっくんが小さく笑った。




