閑話 個人クエと小銭稼ぎ
閑話
個人クエと小銭稼ぎ
「んじゃ俺、一旦戻るっす!」
朝。
ドラちゃんは荷物を背負いながら笑った。
「早いな」
「村ほったらかしにも出来ないんで!」
「ちゃんと村長してんだな」
「失礼っすね!?」
ドラちゃんは胸を張る。
「俺、民から“若”って呼ばれて慕われてるんすよ!」
「村長では?」
「雰囲気っす!」
「絶対勢力型だろお前」
たにしが呆れる。
その時。
ハナがぽてぽて近寄った。
「おっ」
ドラちゃんがしゃがむ。
ハナは、
そのまま頭へ乗った。
「軽っ」
「気に入られてるねぇ」
のんちゃんが笑う。
「連れて帰るなよ?」
「流石に恨まれる未来しか見えないんでやめとくっす」
ドラちゃんは苦笑した。
そして。
「まぁまた来るっす!」
「定期的に来る前提やめろ」
「交易路できてるし余裕っす!」
最後まで騒がしかった。
◇
「で」
たにしは掲示板を見上げる。
「日常が戻ったなぁ。日常に語弊ありそうだが」
ドラちゃんが帰った翌日。
ルノア村は、
いつもの空気へ戻っていた。
掲示板には、
大量の個人クエが並んでいる。
【畑の石拾い 30G】
【風呂用薪割り 50G】
【ハナのブラッシング補助 20G】
「誰だよ最後」
「私」
ルークだった。
「金出すの!?」
「労働には対価が必要です」
「職人思想つよ」
その横で。
「みてー!」
あいりがバッグを掲げる。
【所持金:410G】
「増えてんじゃん」
「看板描いた!」
「また絵か」
最近、
あいりの絵は妙に人気だった。
特にNPC達。
何故か、
ゆるい絵が刺さるらしい。
「若頭さんが100Gくれた!」
「なんで?」
「真実の俺の似顔絵っす!!って」
「絶対盛られてんな」
◇
「ふんふーん」
こはるは、
村の端をハナと歩いていた。
すると。
ガサガサ。
「ん?」
茂みから、
小さな魔獣が顔を出す。
鳥っぽい。
でも丸い。
「ぴぃ」
「こんにちはー」
数分後。
【迷子魔獣の保護 80G】
「なんで?」
たにしが真顔になる。
「なんかいた!」
「雑ぅ!」
「こはる、また魔獣連れてる……」
ひーちゃが苦笑する。
完全に移動動物園だった。
◇
「うおぉぉぉぉ」
村外れ。
のんちゃんが、
ものすごい勢いで弓を撃っていた。
ヒュン!!
ドガッ!!
【害獣討伐達成 120G】
「効率厨だ……」
れんかが呟く。
「だって楽しいし」
「ママ、最近狩りでストレス発散してるよね」
「否定できない」
そのれんかといえば。
【浴場清掃 40G】
【浴場快適度 微増】
「よし」
「風呂は守られた」
「使命感こわ」
◇
夕方。
村長宅。
「……なんで俺だけ地味なん?」
たにしは項目を見る。
【雑草除去 5G】
【荷物整理 15G】
【掲示板修繕 20G】
「村長なのに」
「むしろ村長っぽい」
たくろーが笑う。
その本人は。
【資材整理 120G】
【柵修理 150G】
安定して稼いでいた。
「業者かよ…」
「職人って言って」
さらに。
あっくん。
【新メニュー開発 180G】
「なんで料理が一番稼ぐん?」
「需要」
「現実だなぁ……」
たにしは遠い目をした。
その時。
ベルクの荷車が村へ入ってくる。
「おや、皆さん働いてますね」
「小銭稼ぎ中だ」
「健全で良いことです」
ベルクは笑った。
そして。
たにしの視線が、
荷車の隅へ止まる。
【初心者用釣りセット 2500G】
「……」
「まだ諦めてなかったんですか」
「夢があるだろ」
「ギャンブラーってそういうとこありますよね」
「偏見だぞ」
その横で、れんかが真顔で言った。
「またダメな顔してる」
「俺そんな分かりやすいん?」




