第21話 誤射から始まる再会
二章
第21話 誤射から始まる再会
昼過ぎ。
「じゃ、ちょっと森見てくるねぇ」
のんちゃんが弓を背負った。
「また単独か」
たにしが呆れる。
「近場近場」
「お前の“近場”信用ならんのよ」
「大丈夫だって」
「毎回そのセリフ聞いてる」
のんちゃんは笑いながら手を振った。
その横で。
「姐さん!護衛つけやす!」
若頭が名乗り出る。
「いらん」
「即答ぅ!」
「だって遅くなるし」
「山賊より自由人だなこの人」
たくろーが苦笑する。
◇
森。
ルノア村から少し離れた街道沿い。
のんちゃんは草をかき分けながら歩いていた。
「んー……」
薬草。
キノコ。
あと食えそうな木の実。
最近、
だいぶ見分けられるようになってきた。
「採集者便利だなぁ」
その時だった。
ガサッ。
「ん?」
茂みが揺れた。
瞬間。
のんちゃんの身体が反応する。
弓を引く。
狙う。
撃つ。
ヒュン!!
「うおっ!?」
男が飛び退いた。
「は!?」
「え!?」
お互い止まる。
現れたのは、
黒髪の青年だった。
二十代くらい。
見慣れない装備。
高級そうな剣
そして、テンプレ山賊とは違う顔。
「いや危なっ!?」
「ごめん反射で撃った!」
「反射で撃つな!?」
「最近山賊多かったから!」
「俺そんなヒャッハー感あった!?」
「てか、人!?誰!?」
「いやこっちのセリフ!普通それが先!」
青年は本気で引いていた。
だが。
「……ん?」
のんちゃんが眉をひそめる。
戦闘状態になったため現れた頭上のHPバーを見る。
【ドフラ】
「……あれ?」
「ん?」
青年も止まる。
そして、
のんちゃんの頭上を見る。
【NON】
「…………」
「…………」
「……え?」
「……は?」
次の瞬間。
「NONさん!?」
「ドラちゃん!?」
◇
「――って事があって」
「お前また脊髄反射射撃したの!?」
村長宅リビング。
たにしのツッコミが響く。
「そういう体になってしまって…」
「いや、謝って!おしっこ手にかかったんすよ!」
ドフラ――ドラちゃんがキレる。
「きたな…」
素知らぬ顔である。
「……うわ」
話を聞いたたくろーが入ってきて驚く。
「マジでドラちゃんだ」
「たくろーさん久しぶりっす」
「つか、なんでお前まで“こっち”に居んの?」
たにしが話を戻す。
「いや、そっちこそ」
「装備、金賭けすぎじゃね?」
「最新モデルっす!」
「ちょーだい?」
「たにしさんには似合わないっす!どんまいっす!」
その横で。
「結局、誰?話進めて。お風呂行きたいし」
れんかが真顔で聞く。
「あー……」
たにしがドラちゃんを見る。
「昔このゲーム…というか、この元のやつ?やってた時の知り合い」
「ギルド仲間みたいなもんっす」
「へぇ」
れんかはじーっとドラちゃんを見る。
「モテなそう」
「初対面キツくない!?こっちは言葉の脊髄反射で殴るタイプ!?」
「口の悪い娘でごめんねぇ」
「娘…ああなるほど…理解」
色々察したドラフに笑いが起きる。
その時。
「ところでさ」
たくろーが真顔になる。
「ドラちゃん、“こっち”来てどれくらい?」
「んー……」
ドラちゃんは少し考え。
「二ヶ月ちょい?」
「先輩じゃん」
「うわマウント取れねぇ」
たにしが悔しそうに言う。
ドラちゃんはニヤッと笑った。
「まぁ?俺、そこそこ発展してる村の村長なんで?」
「……村長?ドラちゃん、もっと中央部の方の中都市じゃなかったっけ?」
「あー。たにしさん達と出会った頃はそうだったっすね!」
「どゆこと?」
「元々はここらの出身なんすよ俺!あそこは奪ったっす!」
「…ああ、ドラちゃんそのタイプだったな…」
「ねだって勝ち取るっす!」
全員苦笑。
「で、なんかイベントやろうとログインしたら初期村に飛ばされたんで、人集めて勢力拡大中すね!」
「その、平穏とかまるっきり無視したスタンスぶれねぇなぁ」
たにしもさすがに少し呆れて笑う。
「てことは…」
ひーちゃがおずおずと喋りだす。
「私たち以外にも、プレイヤーさん居るんですねぇ」
空気が少し変わる。
ドラちゃんは、
さっきまでの軽い空気を少しだけ落ち着かせた。
「居ますよ!数は分からないですけど、ゲーム時のプレイヤー人口と同等と考えていいんじゃないですかね」
「後…」
とドラちゃんが続ける。
「お豆ちゃんも居ますよ」
名前を聞いて、たにしとたくろーの顔が引きつる。
「えーあの脳筋アマゾネスも来てんのか…」
「ここからは離れてますけどね!まっすぐ中央に爆進してますね」
「後、一回殺られましたね!」
「物騒で重要な発言をじゃんけんに負けた!くらいのノリで言うなよ…」
たにしは天井を向いて呆れる。
「とりあえず…」
と、たくろーが喋りだす。
「ドラちゃん今日泊まってけば?まだ聞きたい事とかあるし、そろそろたにしくんキャパオーバーだし」
「うっす!風呂もらいまっす!」
「付き合うわ」
ドラちゃんとたくろーが部屋を出ていく。
他のメンバーもそれぞれに出ていく。
外の世界。
他のプレイヤー。
自分たち以外。
おぼろげに考えていた事。
なんとなく考えないようにしていた事。
たにしはふーっと大きく息を吐くと
「俺も風呂いくか」
と席を立った。




