第19話 愛人秘書爆誕
一章
第19話 愛人秘書爆誕
数日が経ち。
「……多くね?」
村長宅。
リビング。
家具は増えた。
だが今。
机の上を埋めているのは、
オシャレ家具ではなく。
紙だった。
「依頼書」
「納品書」
「交易記録」
「村ポイント使用履歴」
「薬草在庫」
「誰だよ増やしたの」
「たにしくん」
「誰だよ処理してないの」
「たにしくん」
「なんなら過去のもあるんだが?」
「それは知らん」
たくろーが即答した。
「めんどくせぇ……」
たにしは頭を抱えた。
村が発展するほど、
管理するものも増えていた。
交易。
クエスト。
村ポイント。
G。
NPC。
物資。
設備。
「うわぁ……個人社長業務だこれ……」
この人口わずかな村でこれである。
遠い目。
その横で、
のんちゃんがニヤニヤしていた。
「村長だもんねぇ?」
「うるせぇ」
「秘書雇う?」
「なんかいやらしい」
れんかが真顔で言う。
「愛人秘書とか?」
「黒メガネに網タイツは必須だな」
「きもっ!」
「振っといて、母娘でどん引くなよっ!乗って損した気分だよっ!」
その時だった。
訪れたソニアが例の如く、段差ゼロでつまずく。
「ふぇっ!?」
バサァッ!!
たにしの机の上の書類が宙を舞った。
「うわっ」
全員の視線。
「お前ほんと毎回転ぶな」
「す、すみませぇん……!」
涙目だった。
紙が散乱している。
依頼書。
帳簿。
メモ。
全部ごちゃ混ぜ。
「うわぁ……」
たにしが絶望する。
「どれがどれだこれ……」
その時。
ソニアが、
慌てて紙を集め始めた。
「あ、これは交易用で……!」
「ん?」
「こっちは薬草在庫の控えで……!」
「……」
「この印ついてるのが村ポイント関係です!」
空気が少し変わる。
たにしが目を細めた。
「お前、把握してんの?」
「へ?」
ソニアはきょとんとした。
「えっと……一応?」
「なんで?」
「おじいちゃん全然やらないので……」
「でしょうね」
全員納得した。
遠くでジージがお茶飲んで笑ってる気がした。
「ほっほっほ」
「笑ってんじゃねぇ!負の遺産!」
たにしがツッコむ。
その時。
たくろーがぽつりと言った。
「……ソニアでよくね?」
沈黙。
「え?」
「ん?」
「金庫番」
「おぉ」
のんちゃんが頷く。
「確かに」
「向いてそう」
「えっ!?えっ!?」
ソニアが混乱する。
たにしは腕を組んだ。
「いやでもお前ドジじゃん」
「うっ」
「金数えてる途中で転びそう」
「否定できません……」
ソニアがしょんぼりした。
だが。
「でも」
ひーちゃが優しく笑う。
「ちゃんと頑張る子だよねぇ」
「……」
「今も全部整理してくれてたし」
ソニアは少し黙る。
「黒縁メガネと網タイツ…」
「あんなことやこんなことを要求される…」
「昼ドラ母娘はちょっと静かに?」
そして。
「……役に、立てますか?」
小さな声だった。
その瞬間。
たにしは少しだけ、
昔を思い出した。
会社。
事務員。
経理。
現場。
全部、
一人じゃ回らなかった。
「……まぁ」
たにしは頭を掻く。
「可能であるなら、頼むわ」
「!」
ソニアの顔が、
ぱっと明るくなる。
「は、はいっ!」
そして。
次の瞬間。
ズルッ。
「うおっ」
転んだ。
「早速不安!」
「だ、大丈夫です!今のは床が!」
「段差ゼロの床のせいにすんな」
笑いが起きる。
その時。
【ソニアが村運営補助NPCになりました】
【秘書機能が解放されました】
【資金管理が効率化されます】
「秘書機能ってなんだよ」
「愛人システム?」
「れんかぁ!!」
たにしが叫ぶ。
だが。
ソニアは嬉しそうだった。
散らばった紙を抱えながら。
何度も。
「頑張ります!」
と笑っていた。




