第18話 はじめてのお給料
一章
第18話 はじめてのお給料
「……入ってる」
朝。
たにしはアイテムバッグを覗き込みながら呟いた。
【所持金:480G】
「うお、ほんとだ」
昨日の草むしりクエスト報酬だった。
「なんか急にゲームっぽくなったな」
たくろーもバッグを確認する。
【所持金:1320G】
「お前なんでそんな持ってんの?」
「鍛冶補助クエと資材整理」
「働き者め……」
その横で。
「見てー!」
あいりがバッグを掲げていた。
【所持金:70G】
「何したん?」
「ハナ描いた!」
「金発生したの!?」
たにしが驚く。
すると。
「私が買いました」
ルークだった。
「早ぇな」
ルークは真顔で頷く。
「芸術には対価が必要です」
「言ってることは正しい」
「なんか腹立つけど」
その時。
あいりが嬉しそうに言った。
「これでおかし買える!」
「現実的ぃ」
◇
村の掲示板。
「おぉー」
のんちゃんが感心する。
「ほんとに増えてる」
以前まで、
空だった掲示板。
だが今は。
【薬草採取補助 50G】
【畑の石拾い 30G】
【荷運び手伝い 80G】
【街道見回り 120G】
「完全に仕事掲示板だ」
たにしが腕を組む。
「村っぽくなってきたねぇ」
「つか、この依頼と賃金の出どころどこなの?村のお金?」
ひーちゃが不思議そうに聞く。
「わからん。朝になると勝手に増えてる。謎依頼だ。村のお金は減ってないな。」
「依頼の紙はがしてバックに入れといて、依頼完了したら報酬に変わってるもんねーファンタジー」
「あれじゃないか?デイリークエストみたいな」
たくろーの言葉に、全員なるほど。と納得する。
全員、ゲーム脳すぎである。
その時。
「たにしくん」
「ん?」
たくろーが掲示板を指差した。
【村長宅前の雑草が気になる 5G】
「誰だよこれ」
沈黙。
そして。
スッ――。
たにしの視線が、
のんちゃんとれんかへ向く。
「お前らかぁ!!」
「いや気になるし。個人的な依頼も出せるっぽかったし、テスト」
のんちゃんが笑う。
「村長宅の前だけ雑草あるの微妙。景観大事」
れんかが頷いた。
「ルークの影響受け始めてんじゃねぇ!」
◇
「うーん……」
その日の昼。
たにしは財布……ではなく、
アイテムバッグを見ながら悩んでいた。
「どうしたん?」
のんちゃんが聞く。
「いや、村ポイントとGの使い分け難しいなって」
「あー」
今のルノアは、
まだ発展途中。
つまり。
全部が足りない。
「ポイントは村設備」
「Gは個人生活」
たくろーが整理する。
「でも曖昧なとこあるよな」
「そうなんだよ」
例えば。
家具。
共有なら村。
個人なら自腹。
「線引きむず」
「リアルだねぇ」
ひーちゃが苦笑した。
「そもそも、ギャンブラーに公共資金あつかわせてるのが不穏でしかない」
「見損なうな!」
本気でキレそうなたにしに、たくろーが笑う。
「まぁたにしくんで不満とは思わないけど、このまま経済発展するなら金庫番は必要かもな」
「だよなぁ。ソニアにでも頼んでみるかぁ。ドジっ子だけど」
◇
夕方。
ベルクの荷車前。
「ほぉー」
たにしは商品を見回す。
「前より増えてんな」
「交易契約効果ですね」
ベルクが笑う。
以前は最低限だった。
だが今は。
菓子。
布。
食器。
装飾品。
生活用品。
かなり増えている。
「うわこれ欲しい」
のんちゃんが布を手に取る。
「子ども服作れそう」
「良い生地ですよ」
「いくら?」
「1800Gですね」
「高っ」
即戻した。
その横で。
こはるが、
小さなガラス玉を見ていた。
「きらきら……」
「欲しい?」
ひーちゃが聞く。
「……うん」
値段。
【120G】
ひーちゃは少し悩み。
バッグを開いた。
【所持金:940G】
「……買えるねぇ」
ぽつり。
その言葉が、
少したにしの胸へ残った。
この世界。
ちゃんと、
“お金で生活している”。
ゲームみたいなのに。
妙に現実だった。
その時。
「たにしー!」
「ん?」
「あれ!」
あいりが指差す。
荷車の隅。
そこには。
【初心者用釣りセット 2500G】
「……釣りかぁ…本まぐろとか釣れっかなぁ」
たにしの目が、
ちょっと危なかった。
「ダメな顔してる」
れんかが即答した。




