第16話 センスがうるさい
一章
第16話 センスがうるさい
「まず捨てましょう」
「帰れ」
翌朝。
村長宅リビング。
ルークは真顔だった。
「この木箱」
「机代わりだが?」
「ダサい」
「便利だが?」
「生活感と雑さを履き違えてます」
「朝から語気強ぇなこいつ!?」
その横で、
たくろーが木箱へ座っていた。
「いやでもちょっと分かる」
「裏切り者!」
「尻痛いし」
「昨日から全員そこ言うな!」
ルークは家の中を歩き回る。
「導線は良いです」
「だろ?」
たにしがちょっと得意げになる。
「ただ」
「ただ?」
「色気がない」
「家に色気求めんな」
「求めます」
即答だった。
その時。
「これかわいー!」
あいりが、
ルークの持ってきた布を広げる。
花柄だった。
「カーテン用です」
「カーテンってそんな大事?」
のんちゃんが聞く。
ルークは静かに窓を見た。
「朝日が柔らかくなる」
「……」
「……」
「……なんか分かるの腹立つ」
たにしが悔しそうに言った。
◇
「で、何から作るん?」
たくろーが聞く。
ルークは即答した。
「ラグ」
「ラグ推し強いな」
「床生活ですよね?」
「まぁ日本人だしな。畳もいいが。伝わるか疑問だな」
「畳も用意できますが、今はまだ無理ですね」
「あるのはあるのか。世界観的にどうなんだ」
「世界観は自分で作るものです」
「お前ちょいちょい反論の余地ないな」
そんな中
女子組はちょっと乗り気だった。
「ふわふわ?」
「昼寝できる?」
「できると思います」
「いる」
れんか即決。
「お前風呂以外にも興味あったんだな」
「寝れる場所は大事」
「現代人だなぁ……」
その時。
ルークが、
突然ハナを見た。
「……」
「ん?」
「この子の毛並み、素晴らしいですね」
空気が止まる。
「おい」
たにしが低い声を出す。
「まさかとは思うが」
ルークは慌てて首を振った。
「違います!?」
「完全に乱獲時代の目だったぞ今!」
「職人の本能です!」
「怖ぇよ!」
その時。
ハナが、
ぽてっとルークの膝へ乗った。
「……」
「……」
「かわいいのでヨシ」
「ちょろ」
れんかが即答した。
◇
昼過ぎ。
村長宅のリビングには、
少しずつ家具が増えていた。
長机。
椅子。
棚。
そして。
「おぉ……」
中央には、
大きなラグが敷かれていた。
「なんか急に家っぽい」
ひーちゃが感心する。
こはるとあいりは、
即座に転がっていた。
「ふわー!」
「きもちー!」
ハナまで丸くなっている。
たにしは腕を組んだ。
「……まぁ」
「ん?」
「ちょっといいなこれ」
ルークが静かに頷く。
「でしょう?」
「認めたくねぇ……」
「ただ、この村そんなにポイント潤沢じゃないぞ」
「このくらいは、名刺代わりにプレゼントさせていただきますよ」
「職人ってより商人だな」
◇
その日の夕方。
村の空き家。
元々は誰かが住んでいたらしい、小さな木造家屋。
そこから、
ギィン、ギィン、と音が響いていた。
「……何してんの?」
たにしが覗き込む。
中では、
ルークが既に作業を始めていた。
木材。
布。
工具。
あと何故か観葉植物。
「工房作りです」
「早ぇよ」
「良い村でしたので」
「引っ越し決定の理由軽くない?」
ルークは真顔だった。
「職人は“空気”で住処を決めます」
「ふわっとしてんなぁ……」
だが、
部屋の中は妙に様になっていた。
作業机。
布見本。
木材棚。
窓から入る西日。
生活感。
「……うわ」
たにしが思わず漏らす。
「なんかオシャレだな」
「でしょう?」
ルークが少しだけ笑う。
その瞬間。
【家具職人ルークがルノア村へ定住しました】
【家具工房が解放されました】
【インテリア機能が拡張されました】
「増えたぁ……」
たにしは頭を抱える。
その横で。
ハナは、
工房のラグの上で、
すでに丸くなっていた。




