第12話 アップグレード
第一章
第12話 アップグレード
数日後。
「お?」
朝。
いつものように石碑を開いたたにしが、声を漏らした。
【デイリー開拓ポイント:+14】
「増えてる」
「ほんとだ」
たくろーが覗き込む。
「前10じゃなかった?」
「人口増加による補正っぽいねぇ」
のんちゃんがUIをスクロールする。
【現在人口:18】
「18!?」
たにしが二度見した。
「いや待て誰増えた」
「山賊」
れんかが即答する。
「あいつらカウントされてんの!?」
その瞬間。
「おはようございやす姐さん!!」
「うわタイミング」
若頭達だった。
しかも普通に村へ入ってきている。
荷車付きで。
「朝採れキノコ持ってきやした!」
「なんでお前らもう村に馴染んでんの?」
「通い村民っす!」
「そんな制度知らん」
たにしは頭を抱えた。
だが石碑には、しっかり表示されていた。
【友好NPC定住補正:+4】
「定住判定なんだ……」
「まぁ毎日来てるしねぇ」
のんちゃんは割と納得していた。
若頭は胸を張る。
「姐さんの村っすから!」
「姐さん言うな」
「村長俺だからな?」
「えっ」
「なんで今知ったみたいな顔した?」
◇
「でだ」
たにしは木板を机へ広げた。
「そろそろ村長宅アプデをする」
「待ってました」
ひーちゃが嬉しそうに言う。
「床で寝なくて済む……」
「こはる寝相すごいもんねぇ」
「横回転する」
「どっち回り?」
どうでもいい会話やめろ。
その横で、あいりが手を挙げた。
「わたしもベッドほしい!」
「欲しいよなぁ」
たにしは頷く。
「まぁ、個人的な家具やらなんやらは各々で調達してもらうとして…」
スッ――。
図面を広げた。
「まずここが共有リビング」
「おぉ」
「キッチンは広め。理由はあっくん」
「あー」
全員納得した。
「あと収納」
「収納?」
「生活舐めんな。物は増える」
「急に早口」
のんちゃんが笑う。
だが、たにしは止まらない。
「で、導線な」
「出た」
「風呂帰りとキッチン動線を分ける」
「なんで?」
「床濡れるだろうが!」
「こだわり強っ」
「あと作業部屋兼用」
たにしはさらに指差す。
「たくろーは事務兼鍛冶管理」
「うむ」
「あっくんは調理兼加工」
「……便利」
「絶対占領するだろお前」
「する」
「だろうな!」
さらに二階。
「母娘部屋2つ」
「助かるぅ……こはるが迷惑かけないでいい」
ひーちゃが本気で安心した顔をする。
「全然だけどね。毎日お泊り会みたいだし」
のんちゃんは気にした様子もなく言う。
「あと女子専用共有スペース」
「おぉ」
「女子会用」
「何それ」
れんかが真顔になる。
「いやいるだろ」
「なんで?」
「知らんけど女子そういうの好きだろ!」
「偏見」
「でもちょっと分かる」
のんちゃんが笑った。
その時。
「たにしくん」
たくろーが真面目な顔になる。
「ん?」
「ポイント足りる?」
空気が少し静まる。
たにしはUIを開いた。
【現在ポイント:356】
【村長宅アップグレード:300】
【実行可能】
「いけるな」
「おぉー!」
あいりが拍手する。
こはるも真似していた。
「ぱちぱちー」
その横で、若頭が感動していた。
「すげぇ……俺達の村が発展していくっす……」
「俺達の。言うな。通い」
「えへへ」
「照れるな」
たにしは石碑へ手を置いた。
「じゃ、やるぞ」
【村長宅アップグレードを実行します】
次の瞬間。
ゴゴゴゴゴ……。
「うおっ!?」
地面が揺れる。
村長宅が、光に包まれた。
「毎回思うけど無駄なとこ演出派手だなこのゲーム!」
木材が浮く。
壁が伸びる。
部屋が増える。
まるで建築タイムラプスだった。
そして数秒後。
光が消える。
「……おぉ」
誰かが声を漏らした。
そこにあったのは、以前とは別物の建物だった。
二階建て大型木造家屋。
広い窓。
煙突。
テラス。
ちゃんと“家”だった。
「うわぁ……」
ソニアが目を輝かせる。
「村長のおうち、すごいです!」
「いや俺ん家ではあるけど俺ん家ではない」
「何言ってんの?」
「責任だけ増えてる気がする」
たにしは遠い目をした。
その瞬間。
【快適度が大幅に上昇しました】
【村人満足度:上昇】
【新規NPC流入率が上昇しました】
「最後やめろ」
たにしが真顔になる。
「これ以上増えるの?」
その横で。
のんちゃんがニヤリと笑った。
「にぎやかになりそうだねぇ」
嫌な予感しかしなかった。




