第11話 ババンババンバンバン
一章
第11話 ババンババンバンバン
「というわけで」
たにしは石碑の前に立った。
「風呂を作る」
「待ってました」
れんかが即答した。
「食い気味すぎん?」
「重要」
「れんかちゃん、最近ずっと風呂の話してるもんねぇ」
ひーちゃが苦笑する。
「だって汗かくし」
「魔法撃つだけでそんな汗かく?」
「精神的に」
「知らんがな」
たにしはUIを開く。
【簡易共同浴場】
【必要ポイント:80】
【現在ポイント:286】
「いけるな」
「うおぉぉ!」
あいりが飛び跳ねた。
「おふろ!おふろ!」
こはるもつられてぴょんぴょんしている。
「こら転ぶなよ」
のんちゃんが笑う。
その横で、たくろーが真面目な顔をしていた。
「問題は場所だな」
「お、鍛冶師脳」
「いや普通に考えるだろ」
たくろーは村の地図を広げる。
「井戸近くなら水運び楽」
「でも近すぎると生活スペース湿気る」
「あー」
「あと排水」
「急に現実」
たにしは腕を組む。
「……村長宅の裏空いてたよな」
「お、いいかも」
「女子側から近いし」
「大事」
れんかが頷く。
「風呂基準で生きてる?」
「否定できない」
「もう、名前、静ちゃんに改名しろよ」
「あ、たにしが度々うっかり入ってくるのだけは絶対に無理だから」
「俺を、黄色シャツ半ズボンメガネキャラにすんな」
◇
「問題は燃料だなぁ」
建築予定地。
たくろーが木材を運びながら言う。
「薪めっちゃ使うぞこれ」
「毎日入るなら尚更ねぇ」
「れんか、魔法でちょちょいってやれないん?」
「出来なくはないだろうけど、調整難しいかな。建物ごと燃える可能性もなくはない」
「よし、やるな。絶対だ」
のんちゃんが腕まくりする。
「じゃ、木集め行ってくる」
「一人で行くなよ?」
「大丈夫大丈夫」
「お前の“大丈夫”信用値低いからな?」
「ひどっ」
その時。
「姐さん!!」
「うわ出た!つか誰が姐さんだ」
山賊若頭だった。
後ろには子分達もいる。
しかも全員、木材を担いでいた。
「風呂作るって聞きやした!」
「情報早くね?」
「村の噂は広まるっす!」
「どんな治安だよ」
若頭は胸を張る。
「木材運搬なら任せてくだせぇ!」
「便利だな元山賊」
「もう山賊じゃないっす!“元”っす!」
「その割に見た目ヒャッハーなんよ」
たにしが呟く。
だが正直、助かった。
人手は多い方がいい。
◇
夕方。
浴場の骨組みが完成していた。
「おぉ……」
ソニアが目を輝かせる。
「ほんとにお風呂です……!」
「まだ湯ないけどな」
「でも浴槽ある!」
あいりがテンション高い。
木製の簡易浴槽。
石組みの釜。
煙突。
かなり“風呂”っぽくなっていた。
「異世界来てまでDIY風呂作ると思わんかった」
たにしは遠い目をする。
「たにしくん普通に楽しそうやん」
「いやまぁ……嫌いじゃない」
「ハウジング勢だもんねぇ」
「認める」
その時。
たくろーが薪を釜へ放り込んだ。
「よし」
ゴォッ。
火が入る。
しばらくして。
浴槽から、湯気が立ち始めた。
「……」
全員、ちょっと静かになる。
なんというか。
感慨深かった。
異世界。
初期村。
ボロ家生活。
畑。
井戸。
山賊。
そして今。
風呂。
「……文明だぁ」
たにしが呟く。
「いや基準そこ?」
のんちゃんが笑った。
その瞬間。
【簡易共同浴場が完成しました】
【快適度が上昇しました】
【村人満足度:上昇】
【開拓ポイント:+30】
「風呂で満足度上がるんだ」
「そりゃ上がるっしょ」
れんかが真顔で言った。
「お風呂は全てを解決する」
「思想強ぇなぁ」
◇
数十分後。
「……はぁぁぁぁ」
たにしは湯船で溶けていた。
「生き返る……」
「おっさんくさ」
たくろーが笑う。
「うるせぇ。風呂はな、人類の英知なんだよ」
「あっくん寝るな?」
「……ん」
完全に寝かけていた。
その頃、女子側。
「はぁぁぁぁ……」
れんかも溶けていた。
「やば……」
「そこまで?」
のんちゃんが笑う。
「無理だと思ってたから……」
れんかは湯気の向こうで小さく呟く。
「……なんか、ちゃんと暮らしてる感じする」
ひーちゃが優しく笑った。
「だねぇ」
こはるとあいりは既に湯船で遊んでいる。
「おふねー!」
「しずめぇぇ!」
「こら走るな!」
騒がしい声が、浴場に響く。
その夜。
ルノア村には、初めて風呂の湯気が立っていた。




