第89話 第一試合 一戦目 あっくん
第四章
第89話 第一試合 一戦目 あっくん
午後。
白虎闘技場。
団体戦第一回戦。
ルノアチーム。
対。
傭兵混成チーム。
観客席は既に満席だった。
歓声。
拍手。
屋台の呼び込み。
祭りの熱気。
その全てが闘技場へ集まっている。
◇
ルールは単純。
各チーム八名。
東西に分かれたベンチへ座る。
試合を行う者だけが中央の舞台へ上がる。
勝敗条件も明快だった。
相手の戦闘続行不能。
レフリーストップ。
リングアウト。
降参。
時間制限は無し。
一本勝負。
純粋な実力勝負だった。
◇
東側ベンチ。
ルノアチーム。
あいりとこはるは足をぶらぶらさせていた。
「おぉー」
「ひろーい」
完全に観光気分だった。
その横。
たにし達は向かいのベンチを見る。
西側。
傭兵混成チーム。
改めて見る。
濃い。
とても濃い。
白髪目隠し。
麦わら帽子。
オレンジ色の道着トゲトゲの髪。
ツルツル頭マント。
他も表現しにくい面々。
「大丈夫かあいつら」
たにしが呟く。
「たぶん大丈夫じゃない」
たくろーが即答した。
◇
鐘の音が響く。
ゴォォォォン!!
司会が立ち上がる。
「それでは!」
歓声。
「団体戦第一回戦!」
歓声。
「第一試合!」
さらに歓声。
「一対一!!」
会場が沸く。
「ルノアチーム代表!!」
司会が叫ぶ。
「あっくん!!」
歓声。
あっくんが立ち上がる。
そして。
舞台へ向かう。
「頑張れー!」
あいり。
「がんばれー!」
こはる。
あっくんは手を振った。
◇
「対するは!」
司会が続ける。
「傭兵混成チーム代表!!」
巨大な男が立ち上がる。
観客席から歓声。
人気者らしい。
大きい。
とても大きい。
二メートルは超えてる。
龍のたてがみのような長い青髪。
筋肉。
筋肉。
さらに筋肉。
巨大な肉の塊みたいな男だった。
太い眉に頬に傷。
「トルコ料理をこよなく愛する美食傭兵!」
「トルコ!!」
歓声。
歓声。
歓声。
「トルコってお前…ギリギリアウトだろ」
たにしがつぶやく。
「描写の時点でだいぶアウトだろ。諦めろ」
たくろーが答える。
◇
レフェリーが中央へ立つ。
あっくん。
トルコ。
向かい合う。
観客席が静まる。
「それでは!」
レフェリーが手を上げた。
「始め!!」
団体戦。
最初の戦いが。
幕を開けた。
◇
静かになる会場。
トルコは目を閉じた。
そして。
両手を合わせる。
「この世の全てのトルコ料理に感謝をこめて」
静かに言う。
観客席も静かになる。
妙に厳かな空気だった。
「いただきます」
会場がざわつく。
「何が始まった?」
たにしが呟く。
「知らん」
たくろーが即答した。
舞台の上。
あっくんも首を傾げていた。
「?」
トルコはゆっくり目を開く。
そして。
あっくんを見る。
「皿に出たトルコ料理は絶対に残さねぇ」
力強く言った。
「あっくん」
名指しだった。
「お前がこしらえた料理なら尚更な」
静かになる。
「あっくん?」
あいりが聞く。
「知り合い?」
「知らない」
あっくんは即答した。
知らなかった。
本当に。
あっくんは少し考える。
そして。
聞いた。
「お腹空いてるの?」
「……ああ」
トルコが頷く。
「腹は減ってる」
「そっか」
あっくんも頷く。
そして。
何かを思い出した。
「あー」
突然だった。
くるりと振り返る。
そのまま。
舞台を降りる。
スタスタ歩く。
レフェリー。
固まる。
観客。
固まる。
ルノア組。
慣れていた。
「何してんの?」
たにしが聞く。
聞こえてない様子で、あっくんは自分の荷物を漁る。
ごそごそ。
ごそごそ。
そして。
何かを取り出した。
再び舞台へ上がる。
手には包み。
「あげる」
トルコへ差し出した。
トルコが受け取る。
開く。
肉。
野菜。
香辛料。
香ばしい匂い。
「ケバブ」
あっくんが言う。
「屋台で買ったやつ」
頷く。
「ちょっとアレンジした」
さらに頷く。
「食べてみて」
静かになる。
会場全体が。
レフェリーも。
司会も。
観客も。
誰一人状況についていけない。
トルコだけが。
真剣だった。
一口。
食べる。
もぐ。
もぐもぐ。
そして。
目を見開いた。
「う、うまい!!」
大声だった。
歓声より大きかった。
「だよね」
あっくんも頷く。
満足そうだった。
トルコがケバブを噛み締めながら言う。
「この勝負俺の負け…だ…」
黙って成り行きを見ていたレフリーが手をあげる。
「勝者!」
「トルコ!!」
「あっくん!リングアウト!!」
ですよね。
静かになる。
数秒。
固まっていた観客が我にかえる。
「何やってんだぁぁぁぁ!!」
「試合しろよ!!」
「おもしれえええええ!!」
笑いも巻き起こる。
たにしとたくろーはスンっとした顔で虚空を見つめている。
のんちゃんは息出来ないくらい笑ってる。
よくわからず、つられて笑う幼女二人。
「あらあらまぁまぁ」
ひーちゃも笑う。
「あっくん、いつハンマー使うんだろう」
れんかがつぶやく。
「あ」
あっくん。
今気付いた。
「負けた」
遅い。
トルコはケバブを食べながら頷く。
「いい勝負だった」
「よくねぇよ!!」
会場全体が突っ込んだ。
いつも読んでいただきありがとうございます!
記念すべき100ep目がこれでいいのか?って話になったけどw
どっかしらに怒られたらやめますww
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引き続き、生暖かい目で楽しんで頂ければと!




