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勇者公害  作者: 敗北者
第一章 単独行編
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第3話「魔雀(マージャン)」

司祭バルザスが倒れた後の石橋には、砕け散った貝殻の欠片と、不気味なほど静かな雨音だけが残された。

アルマイトは、血の混じった雨水を拭いもせず、ただ暗闇の先を見つめる。

少し歩いた先、街道沿いに宿場町が見えてきた。

かつては交易の中継地として栄えたであろうその場所は、今や末期症状を呈していた。

軒先に吊るされたランタンは、魔力オイルのせいで、禍々しい紫色の炎を上げている。

アルマイトが暖簾をくぐると、中の喧騒が一瞬で止まった。

隅の席で、一人の男が牌を弄んでいる。男の指先は石のように固く変色し、瞳には濁った光が宿っていた。


「……見慣れねえ得物だな、旅人。その黒い鉄の塊、魔法を吸うんだろう?」


男は卓上の牌をパシャリと倒した。

それはこの汚染地帯で流行している、自らの余命と魔力を賭ける命懸けの遊戯――「魔雀」。


「賭けて一局打たねえか?」


「興味ない。俺が探しているのは、この先の『死の谷』を管理する聖教会の支部だ」


アルマイトの言葉に、宿の客たちが一斉に冷笑を浮かべる。

男は笑い、自らの胸元にある手形を見せびらかした。


「あそこに行きてえなら、教会の『通行手形』が必要だ。そして、手形はこの町で行われる魔雀の勝者にしか与えられねえ……どうする?」


その時、宿の外で轟音が響いた。

村の地下を走る魔力の脈が飽和し、地表に突き出したのだ。


「ギギギ……ア、アアア!」


叫び声を上げたのは、さっきまでメイドをしていた少女だった。

彼女の背中から、翼のような腫瘍が突き出し、周囲の建物を焼き払い始める。


「助けて……熱い、熱いの……!」


「ひっ、魔力暴走だ! 逃げろ!」


アルマイトだけが少女へと歩み寄る。

右手に宿る魔法。これを使えば、彼女の暴走は止まる。

だが、それは彼女を生き殺すことと同義だった。


「……くっ、これしか、ないのか」


彼は黒鉛鉄の大剣を抜き放ち、その平を少女の胸元に当てた。吸引。

大剣が魔力を、吸い上げていく。アルマイトの腕に、呪印が浮き上がった。


「……ぐ、あああぁぁ!!」


喉を焼くような苦痛。

剣を通じて自身の肉体を侵食する。

少女の腫瘍が消えた時、アルマイトの膝もまた、震えていた。


「……フン。自分の身を削ってまで人助けか。甘いな」


先ほどの男が、呆れたように、しかしどこか感心したように鼻を鳴らした。

彼は懐から、血に汚れた一枚の「白」の牌をアルマイトに投げつける。


「それは手形の『半券』だ。残りが欲しけりゃ、明日の晩、教会の賭場に来な。」

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― 新着の感想 ―
 余命も魔力も訪問も魔雀とやらに左右される世界……けど、暴走で無理矢理に未来を削られるくらいなら、と賭ける人は少なくないかもしれませんね。
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