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勇者公害  作者: 敗北者
第一章 単独行編
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第2話「一気通貫」

村の境界、石橋の上で、逃げ惑う司祭・バルザスが足を止めた。


「貴様……ただの浪人ではないな。神の慈悲を拒絶するとは!」


バルザスが絶叫し、懐から巨大な貝の形をした魔導具を取り出した。

かつて西の海辺の聖域で発掘されたというそれは、英雄の放った魔力を吸い上げ、歪な『貝魔法(シェルマジック)』へと変換する触媒だ。


「見よ、これぞ最強の防御! 【白蝶殻の盾(マザーオブパール)】!」


司祭の周囲に、光沢を放つ貝殻が幾重にも展開される。それは鋼の硬度を持ちながら、魔力を吸い取る、攻防一体の結界だ。

アルマイトは、一歩、また一歩と泥濘を踏みしめる。


「 死して償え、不信心者が! 【双殻の圧殺(ツインプレス)】!」


巨大な二枚貝が、アルマイトを左右から挟み込むように飛来する。回避不能の圧搾。だが、アルマイトは逃げない。彼は背中の黒鉛鉄を静かに引き抜いた。

魔法を否定する刃が、雨を切り裂く。


「……一翻(イーファン)


アルマイトの身体が沈み込む。

その瞬間、彼の周囲の空気が、まるで牌を掻き混ぜるような乾いた音を立てて震えた。


「第一絶技――【断么九(タンヤオチュー)】」


目にも留まらぬ速さの水平斬り。

複雑な構成を一切持たぬ、ただ純粋な、中心を貫く剛の一撃。

飛来した貝が、その一閃だけで粉々に砕け散った。


「な、なんだと!? 私の魔法を、ただの剣圧で……!?」


「貴様の魔法は、不純物が多すぎる。」


アルマイトは加速する。

泥を跳ね上げ、肉薄する彼に、司祭は狂ったように貝を乱射した。

「落ちろ! 砕けろ! 英雄の慈悲に沈め!! 【大千手観音貝(サウザンド・シェル)】!!」


数千の鋭利な貝殻が、アルマイトを襲う。回避は不能。全方位からの飽和攻撃。

だが、アルマイトは鞘を捨て、両手で大剣を正眼に構えた。

アルマイトの瞳に、輝きが宿る。

彼は、降り注ぐ貝殻の雨の中、最小限の動きで刃を走らせた。


「第二絶技――【一気通貫】!!」


直線上に放たれた九連続の刺突。

一突きごとに空気の壁が弾け、重低音が響く。

放たれた弾丸は、一つ残らず砕け散り、アルマイトは爆風を突き破って懐へと飛び込んだ。


「待て、待て! 私を殺せば、この村の聖水の供給が止まるぞ! 民が死んでもいいのか!?」


司祭が縋るように叫ぶ。

アルマイトは足を止めず、大剣を上段に振りかぶった。


「望むところだ」


「貴様……正気か――」


黒鉛鉄の剣が、究極の防壁「白蝶殻」に激突する。


「絶技――【国士無双】!!」


十三の急所。

不揃いなまでの重い一撃が、バルザスの急所を同時に撃ち抜いた。

バリィィィィィン!! と音を立てて、貝の盾が、灰へと帰した。

衝撃波が灰雨を吹き飛ばし、一瞬だけ月光が差し込む。


バルザスは地に伏し、詠唱する力も残されていなかった。

アルマイトは荒い息を吐きながら、大剣を再び背負う。


「……ふん、安勝ちだ」


彼は振り返ることなく、泥濘の道を再び歩き出す。

背後では、聖水から解放された家畜たちが、鳴き声を上げ始めていた。


世界を救うには、ま足りない。

それでも男は、次へと向かう。己の魂を、最後に賭けるその時まで。

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― 新着の感想 ―
 貝から漏れでる蜃気楼より無残に揺らぎ砕け散るバルザスさんの戦意……臨場感あるバトルでした。
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