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第2話

「え、えええええー!?」


 ま、まさか、こんな簡単に倒せるなんて……

 あれだけのステータスだ。

 攻撃を続けていればその内、倒せるだろうと思っていたけど、まさか一撃で倒せるとは思いもしなかった。


 邪神の頭があった所に視線を向けると、黒いローブと邪神の触手、大量の金貨が落ちていることに気付く。


「……そうか。これクリア報酬か……こんな風に現れるんだ?」


 モンクエ4で装備を入手する時は、基本的に文章で『○○を手に入れた』としか、書かれていなかったからどうやって入手すればいいんだろうと思えばなんでもない。

 倒せば手に入る。ただ、それだけのようだ。


 司は金貨をアイテムボックスに格納し、黒いローブを羽織る。

 そして、ステータスを確認すると、ホッとした表情を浮かべた。


「……良かった。ちゃんと、『邪神の漆黒衣』が手に入った」


 正直、防御力には自信がなかったのだ。

 何せ、この世界はゲームをモチーフにした世界……つまりそれは、国の外に出れば、普通に魔物が存在しているということに他ならない。

 その点、モンクエ4史上最高の防御力を誇る『邪神の漆黒衣』があれば安心だ。


 邪神の漆黒衣は背中に蝙蝠の羽根と黒い触手の付いた漆黒の衣。

 見た目こそアレだが、これには飛行能力とは別に吸収効果がある。


 ――――――――――――――――――◆

【武 器】邪神の漆黒衣

【レア度】SSS

【防 御】+9999

【魔 力】+99999

【効 果】飛行

     吸収

     触手

     魔法の心得

 ◆――――――――――――――――――◆


 ステータスを確認すると、そこには人並外れたステータスが表示されていた。


 ◆――――――――――――――――――◆

【名 前】井上司 【年 齢】15

【レベル】61  【ジョブ】反転の魔王

【STR】攻撃:1509(+999)

     防御:11508(+10998)

     魔力:100509(+99999)

     体力:510

     知力:510  運命:510

【称 号】異世界転生者

【装 備】勇者の剣

     勇者の盾

     アイテムボックス

     邪神の漆黒衣

【称 号】真の勇者

 ◆――――――――――――――――――◆


「さて、装備もお金も手に入ったし、そろそろ城から脱出するか……」


 あれから結構な時間が経った。

 牢屋がもぬけの殻であることに、そろそろ兵士も気付く頃合いだろう。


 司はアミュレットを回収すると、邪神を封じ込めていた部屋の中に入る。

 そして、部屋の最奥に設置されていた転移石に触ると、転移石に転移できる場所が表示された。


 表示されたのは、エスタール城から北に100キロ程度の場所にあるウッドフォレスト。

 モンクエ4の主人公ソラが最初に立ち寄る町で色々問題を抱えた町なんだけど、選択肢がこれしかないなら仕方がない……

 当面の目標は、物語終盤、主人公が魔王を倒した後、神様が移住してくる移民の町への移住……移民の町は『ウッドフォレストが滅んだ後にできる町』にして、『忘れられた神々』を祀る祭壇がある場所。

 神様がいれば、きっと、元の世界に戻る手がかりもつかめるはずだ。

 少なくとも、この国の王に元の世界への帰還を望むより可能性があるだろう。


「転移『ウッドフォレスト』」


 希望を胸にそう告げると、司はエスタール城地下にある邪神封印の祠からウッドフォレストへ転移した。


 ◆◆◆


 その頃、司が邪神を討伐し、ウッドフォレストに移動したことを知らないレブレサック王は、司を生贄とした次の勇者召喚を画策していた。


「……それで? あの者を生贄に勇者召喚することは可能なのか?」


 あの者とは、当然、司のことだ。

 そう尋ねられた大臣は、難しい顔をする。


「あの者一人を召喚するのに百人の優秀な魔法使いと千人の罪人が犠牲になりました。召喚した勇者といえど、生贄がたった一人では……」


 大臣の言葉に納得できない王は、声を荒げる。


「――なぜだ! 次の勇者を召喚するのに、なぜ勇者一人の生贄では駄目なのだ!?」


 優秀な魔法使い百人と千人の罪人を対価に勇者を召喚することに成功した。ならば、それだけの対価を払い召喚した勇者には、それと同等の価値があるはず……


 しかし、大臣は首を横に振る。


「……残念ながらこちら側の世界とあちら側の世界とではレートが違うのです。異世界より召喚した勇者もこちら側に来た時点でこちら側の人間として換算されてしまいます。あの者がどんなに気に食わぬ存在だとしても、新たな勇者を召喚するよりかはマシというもの。私は召喚された勇者の有効活用を愚考致します」

「ぬぅ……魔王と同じスキルを持つあの者の有効活用か……確かに、新たな犠牲を払うくらいならあの者の有効活用を考えた方がまだマシか……」


 考えて見れば、あの勇者は魔王と同等のスキルを持っている。

 眼には目を、歯には歯を……使い様によっては、勇者より使い勝手がいいかも知れない。


「……大義名分もあるし、次の勇者召喚は時期尚早か」


 魔王と同じスキルを持つ時点で処分の大義名分が立つ。為政者である王にとって勇者など使い捨ての駒に過ぎない。


「……良かろう。だが、魔王と同じスキルを持つ彼奴を我が国の勇者として認定するにはまだ不安が残る。『隷属の首輪』を付け、我が国への絶対的な忠誠と服従を刻み込め。その後、魔王討伐の任に付かせることとする」

「……はい。わかりました」


 隷属の首輪は、魂に誓約を刻み込み強制する装備。

 魔王と同じ力を持つ勇者に隷属の首輪を嵌めることができるだろうか。


 一抹の不安を覚えながらも、王の勅命を受けた大臣は、兵士を連れ司を捕らえた牢屋へと向かう。

 魔王のスキル『反転』は、昼を夜に、祝福を呪いに、人を魔物に変える災厄のスキル……故に、見張りは牢屋から出るために必ず通る一本道に配置し、決して勇者に近付けないようにした。


 しかし、『隷属の首輪』は大臣が対象に直接嵌めなければ効果を発揮しない。


「……私が先導します」

「うむ」


 兵士の後ろに付いていく形で一本道を進むと、勇者が閉じ込められている牢屋が見えてくる。そして、大臣は牢屋の前まで来て目を剥いた。


「ゆ、勇者がいない。そんな馬鹿な……!?」


 勇者が城と牢屋を繋ぐ一本道を通った形跡はない。

 もし勇者が脱獄し、一本道を通れば警報が鳴るはずだ。

 なのにどうやって……どうやって脱獄したというのだ。

 魔王のスキルを持った勇者の脱獄に放心していると、城内が途端に騒がしくなる。


「――大臣! ゲムニドット大臣!!」

「なんだ。どうした……」


 ゲムニドットは、走ってきた兵士にそう尋ねる。

 すると、兵士は息を切らしながら衝撃的な一言を言った。


「――た、たたた、大変です! この辺り一帯の魔力が消失しました!」

「……な、なにっ! それは本当か!?」

「は、はい! エスタールの地から溢れる魔力を動力にしていた装置が次々と停止! 城を照らす魔力灯も……!」


 その瞬間、城の照明がすべて落ちる。


「そ、そんな……そんな馬鹿なことが……」


 レブレサック王の治めるエスタール国は、大地から漏れ出る膨大な魔力によって繁栄してきた国家だ。

 しかし、その発生源が封印されていた邪神であることを知る者は存在しない。


 ゲムニドットは頭を抱えた。


 もし兵士の言うことが本当ならば、エスタールは唯一の資源である魔力を失ったことになる。

 当然、膨大な魔力を源泉に他国から借り入れていた金を返すことも、エスタールに利がある貿易交渉も出来なくなってしまう。


 地下牢から場所を変え、兵士より魔力消失の報告を受けたレブレサック王もゲムニドットと同じく狼狽する。


「……なぜだ? おかしいではないか! なぜ、エスタールの魔力が消失する!?」


 レブレサック王は邪神の膨大な魔力を精霊達が濾過し、エスタールの大地に流していたことを知らない。

 あることが当然だと思っていた資源の消失。

 その影響は多岐に渡る。


「……照明も機械も食料品の生産に至るまで、すべての動力を魔力に頼っていたのだぞ!? 魔力なくして明日からどうする!」


 魔力が豊富だったからこそ、エスタールはこの世界の覇権国家であり続けることができた。

 しかし、肝心要の魔力が無くなれば、その影響力は地に落ちる。


「……そ、そうだ」


 しばらくの間であれば、魔力を結晶化した魔石を動力源に国家運営をすることができる。

 そのことを思い出したレブレサック王は報告に来た兵士に唾を飛ばしながら命じる。


「今だ……今すぐ原因を特定しろ! 全軍上げてでも、魔力枯渇の原因を特定するのだ!」


 そう叫ぶレブレサック王の頭からは完全に司の存在が消えていた。


 ◆


 一方、エスタール国を未曾有の危機に叩き落とした張本人は……


「――うゎああああっ!? いなずま! いなずま! いなずまぁぁぁぁ!!」


 転移して早々、ゴブリンの群れに囲まれた司は、とち狂ったように『反転の魔王』ジョブに就いたことで取得した雷魔法『いなずま』を放ちまくっていた。


 ――ゴロゴロゴロッ……ズドォォォォン!!

 ――ギャアアアアッ!!!!!!!!!!!


 ウッドフォレストの森の中に轟く稲妻の数々とゴブリンの悲鳴。

 絶え間なく降り注ぐ稲妻によりゴブリンの集落は壊滅。その余波を受け木々が燃え盛り、ウッドフォレストの森が大惨事に見舞われている。

 稲妻が轟くたび、どこかで聞いたことのあるファンファーレが流れる。


『テテテ、テッテテー♪ ゴブリンA、ゴブリンB、ゴブリンC……ゴブリンZを倒した!』

『井上司のレベルが1上がった。攻撃が10増えた。防御が10増えた。体力が10増えた。魔力が10増えた。知力が10増えた。運命が10増えた』

『称号【真の魔王】を獲得した』


「あ、あわわわっ……! な、なんでこんなことにっ!?」


 さっきからレベルアップのファンファーレが鳴りやまない。


 司は消火の代わりに、魔王ジョブに就いたことにより取得した氷魔法『ブリザガ』を放つ。


 その瞬間、目の前の景色すべてが凍りつき、ビシッと音が鳴り響くと共に、氷の粒となって霧散した。


「えっ……」


 ただ火災を止めるため放っただけに、こんな大惨事を引き起こすと思っておらず、司は唖然とした表情を浮かべる。


『テテテ、テッテテー♪ ゴブリンキング、ゴブリンクイーン、ゴブリンナイト……ゴブリンアサシンを倒した!』

『井上司のレベルが1上がった。攻撃が10増えた。防御が10増えた。体力が10増えた。魔力が10増えた。知力が10増えた。運命が10増えた』

『称号【殺戮者】を獲得した』


 そして、レベルアップのファンファーレを聞き、絶句した。

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