第21話:女神様、その杖でマシュマロ焼いてもいいですか?
王宮の空がにわかに黄金色に輝き、清らかな鐘の音が鳴り響きました。
光の階段を降りてきたのは、背中に透き通るような羽を持ち、手には星をちりばめた聖杖を持つ「天界の食文化司」、女神リリアーヌ様でした。
「おやおや……下界から、私の神殿まで届くような芳醇な香りがいたしましたわ。……これは、もしや伝説のマンモス肉に、ジオ・ペッパーをまぶしたものではなくて?」
女神様はふんわりと地上に降り立つと、私の前で優雅に首を傾げました。
「あら、天界からこんにちは。とっても綺麗な杖ですねぇ。……あ、女神様。その杖の先の星、少し熱を持っていませんか?」
私がニコニコと尋ねると、女神様はおっとりと微笑み返しました。
「ええ、これは恒星の核を閉じ込めた聖なる火ですの。暗い銀河を照らすためのものですわ」
「まぁ、素敵! ……それなら、この『ジャンボマシュマロ』を焼くのにぴったりですねぇ。ちょっと、炙らせていただいてもいいですか?」
私はアイテムBOX【みたすもの】から、クッションのような大きさのマシュマロを取り出し、女神様の聖杖に近づけました。
「……あら? まあ。マシュマロを焼く……。ふふっ、そんな使い道、思いつきもしませんでしたわ。……では、少し火力を強めましょうか?」
女神様が杖を振ると、聖なる光がマシュマロを包み込み、あっという間に表面がキツネ色の、とろとろな焼き上がりになりました。
「「「「…………おいっ!!!!」」」」
その光景を見ていたロンさん、アオ君、氷の女王、そして地底の王の四人が、同時にツッコミを入れました。
「ジャンヌ! 貴様、何てことを……! それは世界の理を刻む聖杖だぞ!」
「女神様も女神様だ! マシュマロ焼くために神力を使うんじゃねぇ!」
「あらあら。ロンさん、そんなに大きな声を出したら、マシュマロが萎んじゃいますよぉ」
「そうですわよ。お怒りは美肌の敵ですわ。ほら、あなた方も『あーん』してくださいな。聖なる火で焼いたお菓子は、魂を浄化しますのよ?」
ジャンヌさんと女神様。二人の「超弩級のおっとり天然」が並んだことで、王宮の広場はもはや誰も逆らえない、究極のふわふわ空間(物理的に抵抗不能な癒やしのフィールド)になってしまいました。
「……黒竜、ダメだ。俺たちの常識じゃ、あいつらには勝てねぇ……」
「……ああ。……おい、女神。……俺の分も、その杖で炙ってくれ。たっぷりだぞ」
結局、最強の面々も「おっとりコンビ」のペースに飲み込まれ、聖なる火でマシュマロを焼くという、神話にすら残らない平和な時間が流れていくのでした。




