第20話:地底の王様、砂抜きは終わっていますか?
あらあら、まあまあ!マンモスの肉が焼き上がった最高のタイミングで、今度は地底から新しいお客様ですね。
美味しい匂いというのは、土の層を何百メートルも突き抜けて届いてしまうようです。
「……クンクン。……なんだ、この鼻腔を突き抜ける、野生の脂が焦げる芳醇な香りは……」
王宮の広場の地面が、モコモコと盛り上がったかと思うと、ズズズ……と巨大な影が姿を現しました。
それは、黄金の爪を持ち、ベルベットのような漆黒の毛並みに包まれた、巨大な「地底の王」ゴールデン・モグラ様でした。
「ひ、ひぃぃ! 地底の支配者が現れたぞ!」
騎士たちが腰を抜かす中、私は焼き上がったマンモス肉の端っこを持って、おっとりと近寄りました。
「あら。土の中から、こんにちは。……とっても、モフモフですねぇ」
「……む? 人間の小娘か。我は地底の王……。貴様らが食っているその肉を、我にも……むぐっ!?」
ご挨拶の代わりに、私がマンモス肉(特製タレ付き)を一口放り込むと、地底の王様は「…………ッッッ!!!」と全身の毛を逆立てて硬直しました。
「う……うまい……! 地底のミミズとは比べものにならん……! 娘よ、この肉、もっと寄こせ! 我が財宝を全てくれてやっても惜しくないぞ!」
「ふふっ、お口に合いましたか。……あ、お顔に土がついていますよぉ。よしよし、いい子ですねぇ」
私が巨大なモグラ様の鼻先を撫で、ブラッシング(大剣の腹で)してあげると、地底の王様は「キュ~……」と情けない声を漏らして、私のお膝に頭を乗せてしまいました。
「おい、アオ。……見たか。あの地底の暴君が、一瞬でただの巨大なぬいぐるみになったぞ」
「黒竜、俺たちも最初はあんな感じだったよな……。ジャンヌの『よしよし』は、抗えない魔力があるんだよ……」
ロンさんとアオ君が遠い目をしている横で、地底の王様はゴソゴソと自分のお腹の袋から、キラキラと輝く謎の粉を取り出しました。
「娘よ……お礼にこれを受け取れ。地底の奥深く、マグマの結晶からしか採れない『伝説のスパイス:ジオ・ペッパー』だ」
「まぁ! 宝石みたいに綺麗ですねぇ。……くんくん。……あら、とっても深みのある、ピリッとした香りがします!」
私がさっそくそのスパイスをマンモス肉に一振りすると、肉の旨味がさらに数倍、いえ数百倍に膨れ上がりました。
「ロンさん、アオ君、女王様も! 新しい調味料ですよぉ。これでお肉を焼くと、もっと美味しくなりますよ」
「……。……ちっ、またライバルが増えたか。おい、モグラ。ジャンヌの隣は俺の場所だ、少しどけ」
「なんだと黒竜! 俺もスパイスの恩恵に預かりたいんだよ!」
最強の竜二頭、氷の女王、そして地底の王までもが、ジャンヌさんの「よしよし」と「伝説のスパイス」を求めて、仲良く(?)バーベキューコンロの周りに集まるのでした。




