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メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


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第98話 メイドコボルト、結ばれる

 魔王城に戻った魔王は、早速部下に命じている。

 魔王とククルの結婚式と聞いて、それは全員が驚いていた。なにせ魔族最強の魔王と、最弱のコボルトとの間で行われるのだから。

 だが、さすがに魔王の命令とあれば、誰も逆らえなかった。

 ザスカスを含めた側近の中には苦言を呈す者もいたが、魔王は全部を突っぱねていた。

 あれよあれよという間に、魔王とククルの結婚式の準備が整っていく。


 結婚式当日、ククルはメイドたちの手によって着付けられていた。


「よくお似合いですよ、ククル様」


「あ、ありがとうございます」


 声をかけられたククルは、ものすごく照れくさそうに反応している。

 なにせ自分を着飾らせてくれたメイドたちは、自分の先輩にあたる魔族ばかりだからだ。

 自分たちだって魔王の隣というのは狙っていただろうに、メイドたちはおとなしくククルに対して尽くしてくれている。


「ああ、でも、うらやましいわ」


「本当にね。でも、魔王様とククル様の間って、とてもは入れる気がしないから仕方ないわよね」


「あははは……。今からでも、断れるなら断りたいなぁ……」


 メイドたちの反応を見ていて、ククルはついそんな言葉をこぼしてしまう。

 ところが、メイドたちはククルにすぐにすごい剣幕で迫ってきた。


「何を仰られるのですか」


「魔王様からの寵愛を受けていらっしゃるのに、断るとは不届きですよ。おとなしく受け入れなさるとよろしいのです」


「は、はい」


 ものすごい剣幕で叱られてしまったので、ククルはこくりと頷くしかなかった。

 それにしても、メイド時代から仲のよかった先輩魔族とはいえど、ここまで自分のことを推してくれるのとは、ククルも終始困惑しっぱなしだった。


 準備が整い、ククルは魔王の待つ部屋へと向かう。

 このような結婚式を行うことは、魔族の間では珍しいことだ。

 ただ、魔王だけは必ず行うことになっている。なにせ魔族の頂点たる魔王は、その力をすべての魔族に知らしめる必要があるのだから。

 なので、今日の魔王城にはいつもよりも多くの魔族が集まっていた。


(こんな日に聖剣を持って大暴れしたら、戦いは終わるんでしょうねぇ……)


 ついそんなことを思ってしまうククルである。


『それはお勧めしませんな。我は魔族に対する特効を持ってはおりますが、万能ではありません。いくら主の聖女としての力があるとはいえ、相手にするには数が多すぎるというものです。おとなしく、殿下との結婚を済ませることですな』


(思ってみただけよ。やるわけないでしょう。魔王様に恥をかかせるわけにはいかないわ)


 聖剣からのツッコミが飛んできたので、ククルは冗談だと、聖剣に対して不満をぶちまけたのだった。

 部屋の前までやってきたククルは、メイドに付き添われながらドキドキとしていた。

 魔王とコボルトメイドとはいっても、前世で結婚を誓い合った仲だ。思っていた形とは違うとはいえど、その願いが今叶えられようとしている。緊張しない方がおかしいというものだ。

 背中には見えないようにしてあるとはいえ、聖剣が背負われている。この場には似つかわしくないとはいえど、呪いにも似た力で外せないのだからしょうがない。


(平常心、平常心……)


 いろんな感情を向けられていて、コボルトであるゆえに敏感となっていたククルは、ついつい反応してしまいそうになる。

 付き添いのメイド付き添われて、ククルは部屋の一番奥まで真っすぐと進む。


「うむ、きれいだぞ、ククル」


「魔王様」


 そこで待ち構えていた魔王が声をかけてくる。ククルは反射的に反応してしまう。

 いつもとは違った服装に身を包んだ魔王を見たククルは、その姿にハッとしてしまう。

 それは、アブジール王子と初めて会った時に着ていた服装に似せてあったからだ。魔王はずいぶんと気を利かせた服装をしているのだった。


「皆の者。本日は余とククルの婚姻を祝いに集まってくれて礼を言うぞ。これを機に、余はますますの魔族の繁栄のために尽力することを誓おうではないか」


「おおーっ!」


「魔王様!」


「魔王様、万歳!」


 魔王の言葉を聞いた魔族たちが、興奮のあまりに声を上げている。

 コボルトの嫁を迎えるとはいっても、魔王の人望がそれだけ厚いということなのだ。


「では、ククル。ちょっと失礼するぞ」


 魔王はそういうと、ククルにかけられたヴェールをめくりあげ、ククルへと顔を近付ける。

 次の瞬間、ククルと魔王の唇が重なり合う。

 あまりにも衝撃的なことに、ククルは顔を真っ赤にして、目をしっかりと見開いてしまっていた。


「これで、ククルは余の正式な妻となった。皆の者、余とともにククルのこともしっかりと支えてやってくれ」


「ははっ!」


 魔王の言葉に、魔族たちは一斉に跪いて誓いを立てていた。

 あまりにもそろった動きに、ククルも聖剣も驚きを隠せなかった。


 思っていた形とは違うものの、アブジール王子と聖女プリムの恋物語は、数百年の時を経て一つの区切りを迎えることとなった。

 ここからは、夫婦としての物語が始まる。

 多くの祝福の声に包まれながら、ククルは魔王とともに、部屋を退出していったのだった。

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