表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/99

第95話 メイドコボルト、脅す

 アンカサードの城でやることを終えた魔王とククルは、今度はククルの故郷である教会に向かうことになった。

 しかし、その教会はアンカサードの王都からは少し距離があるようだった。


「どうなさるおつもりですか、魔王様」


「なぁに、心配は要らぬ。今の余は魔王なのだ。不可能などほとんどない」


「きゃあっ?!」


 ククルの疑問に答えた魔王は、ククルをまた抱っこしている。唐突なお姫様抱っこに、ククルは白黒させてしまっている。

 驚いている間に、魔王は宙に浮き始める。

 そう、魔王は翼を持っており、それによって空を飛んでいこうというわけである。


「しっかりつかまっているのだぞ、プリム」


「はいぃっ!」


 空を飛んでいるということもあって、ククルは怖くてしっかりと魔王の首に手を回している。

 ある程度の高さまで浮かんだかと思うと、魔王はククルの出身である教会がある方向を見定めている。


「うむ、あっちだったな」


 そう呟いたかと思うと、一気に空中を進み始めた。


「ひやあぁぁぁぁっ?!」


 あまりのスピードに、ククルは思いっきり悲鳴を上げてしまっていた。

 なんとも愛らしい姿に、魔王はしっかりとククルを抱きかかえたのだった。



「目が、目が回るぅ……」


 目的地の近くまでやってきた魔王が着陸すると、ククルはずいぶんと参っているようだった。


「やれやれ。やはり最弱と言われる魔族であるコボルトでは、少々耐えられなかったか」


 完全に参っている感じのククルを見て、魔王は微笑ましくて笑っている。

 ちょっと立てそうにないなと思った魔王は、ククルを抱きかかえたまま、辺りの様子を見回している。なんとも懐かしい感じに、魔王は微笑みを浮かべている。


「あまり変わった感じがしないな。城での話を聞いて、いかほど時間が経過したのかを知ったが、それでもこの辺りはまったく変わらんようだ」


 ぽつりと呟いた魔王は、ククルを抱きかかえたままゆっくりと歩き出す。

 ククルが生まれた場所は定かではないが、親に捨てられて以降過ごしたという教会はすぐそこにある。

 だが、さすがに魔王のようなとんでもない魔力がだだ漏れとあっては、手荒い歓迎が待っていないわけがなかった。

 行く手を阻むように、神官戦士たちが現れる。


「魔族が、何用だ!」


「教会に近付くとは愚かなり。我々の手で成敗してくれる!」


 魔王を目の前にしても、神官戦士たちはまったく退きはしない。というよりは、目の前の魔族が魔王だと分かっていない風である。

 やれやれと思った魔王は、その挑戦をおとなしく受けることにする。


「余が何者か分かっていないようだが、面白そうだ、その挑戦を受けてやろう」


「ほざけ!」


 魔王が挑発すると、神官戦士たちが襲い掛かってくる。

 その瞬間だった。


 ガキーンッ!


 金属がぶつかり合う音が響き渡る。

 何かと思えば、ククルが聖剣を抜いて、神官戦士たちの持つ剣を弾いてしまったのだ。


「う、うう……」


「こ、コボルトのくせに……」


 剣を弾かれた神官戦士たちは、その衝撃の強さに手を押さえている。


「魔王様への攻撃は、この私が許しません。今世の聖剣の主である私ククルがね!」


「ま、魔王だと?!」


「それに聖剣だと?!」


 ククルの言い放った言葉に、神官戦士たちは戸惑いを隠せなかった。

 魔王もそうだが、魔族であるコボルトが聖剣を持っているということもだ。


「魔王も聖剣もはったりだ! 魔族どもを斬り捨てろ!」


 信じられるわけがないので、再び剣や魔法でもって二人へと襲い掛かってくる。

 やっぱりそうなるかと、今度はククルは聖女としての力を使うことにする。


聖域結界(サークル)!」


 自分と魔王を囲むように、神聖魔法の結界を展開する。


「うわぁっ!」


「ま、魔法が弾かれる?」


「バカなっ! あれは上位神官の使う広域防御魔法だぞ。なぜそれを、魔族が使えるのだ!」


 ククルの使った魔法を見て、神官戦士たちは更なる混乱に陥っている。

 だが、この状況でククルが攻撃の手を休めるわけがなかった。手荒い歓迎をしてくれたのだ。しっかりとお返しをしてあげないと気が済まないのであった。


「さぁ、その剣を収めるのです。この魔法を食らいたくなければね」


 ククルは目の前の神官戦士たちに脅しをかけている。

 そのククルの頭上には、じわじわと神聖な魔力の光が集まり出し、何かの形を作り始めていた。


「ま、待ってくれ、その魔法は……!」


 何かに気が付いた神官戦士の一人が、思わず叫んでしまっている。


「分かった。おとなしく降参するからその魔法はやめてくれ。この辺りの地形が変わってしまう!」


 集まった魔力の大きさからして、周囲への被害が甚大と判断した神官戦士が、おとなしく降参を申し出てきたのだ。

 その反応を見たククルは、にっこりと笑顔を見せて魔法の発動を中断する。


「では、教会までご案内いただけますでしょうか。私たちは穏便にお話をしに来ただけですのでね」


 右手には聖剣を持ち、左手は空に向けたまま、ククルは神官戦士たちに笑顔で話し掛けている。それは、いつでも攻撃できるぞというポーズである。

 メイド服を着たコボルトであるにもかかわらず、ただならぬ気配を感じた神官戦士たちは、ククルたちの要求をやむなくのむことにしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ