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メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


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第94話 メイドコボルト、アンカサード国王と話す

 一人残っていた国王は、魔王に対して前世の名前をはっきりと告げていた。

 思わぬ状況に、ククルは魔王と国王との間で視線を行き来させている。


「えっ、どういうことなのよ」


 ククルはじっと魔王の顔を見ている。

 視線を向けられた魔王は、にこやかに笑っている。


「そうか、今の国王も見たというのだな、”夢”を」


 魔王の言葉に、国王はこくりと頷いている。

 どういうことなのか、ククルにはまったく理解できない。


『そういうことか』


「聖剣?」


 ククルが背中に背負った聖剣が反応している。


『我は以前、アブジール王子と話をしたことがある。なぜ、アブジール王子が我と出会えたのかということをな』


「もしかして、魔王様が聖剣を奪わせたことや、私を専属の侍女にしようとしたことも関係あるっていうの?」


「その通りだ、プリムよ」


「ひゃうっ?!」


 魔王がククルのあごに手を触れて顔を振り向かせるものだから、ククルはとんでもない声を上げてしまっていた。


「なんと、聖女プリム様まで。これはこれは失礼をしました」


 魔王たちの行動を見ていた国王が、再び跪いている。


「もう、魔王様ってば! これ以上国王様を跪かせるようなことはやめて下さい。何も知らない人が見たら、内乱の原因になりますよ!」


 あまりにも見ていられない状況になったので、ククルは思いっきり叫んでしまっている。これには魔王も素直に頷いていた。


「それもそうだな。国王よ、ひとまず椅子に座って話さぬか?」


「はい、それではすぐに部屋を移動すると致しましょう。ここは対等に話すには向かぬ部屋ゆえに」


 国王はそう答えると、すぐに近衛兵を呼び、魔王とククルを客人として丁寧に扱うように命令を出しつつ、ゆっくり話のできる場所へと移動する。

 やって来たのは、国王の執務室だった。


「ささっ、そこへとおかけください。アブジール王子、聖女プリム」


 国王が自ら席を案内している。どうやら、王族の間ではアブジールとプリムのことは正確に伝わっているということのようだ。

 言葉に甘えて、魔王とククルは椅子へと座る。


「アブジールというのは余の昔の名だ。くすぐったくて仕方がないが、ここでは魔王と呼ぶのはつらかろうからな。今回は特別に許可する」


「はっ。ありがたく存じます」


 魔王から昔の名前で呼んでもいいと言われ、国王は再び頭を下げている。これだけで、魔王の前世が、王族の中でどのような位置にいるのかがよく分かる。


「あの、私の方はプリムではなくククルと呼んでください。しがないコボルトですから」


「どこがしがないコボルトなのだ。聖剣を抱えられるようなコボルト、世界中、いや歴代を探してもいないぞ」


「むむむむ……」


 ククルの方は名前は今の方で呼んでほしいと頼んでいる。だが、余計なことを言ったばかりに、魔王から思わぬツッコミが入ってしまった。

 確かに、聖剣を扱えるコボルトなんぞいてたまるかという話だ。

 目の前では国王が笑っているので、ククルは思わず恥ずかしくなってしまった。


「お二人の関係は、相当親密なもののようですな」


「まぁな。あの頃から余とプリムは婚約をしておったからな。対外的に知るものはほとんどおらなんだがな」


「ええ、まあ。その通りです」


 国王の言葉に恥ずかしげもなく答える魔王に対し、ククルの方はとても恥ずかしそうにしている。


「と、とにかく、話を始めましょう。先程仰られていた”夢”とは何のことなのですか?」


 あまりの恥ずかしさに、ククルは話題を変えることにした。


「うむ。アンカサード王家には、代々予知夢のようなものを見る王族が出ることがあるのだ。余もそれによって、様々なことを知ったのだ」


『やはりか。そうでなければ、当時の我を見つけ出すのは難しかったからな。いくら我と主が呼び合うとはいえど、主の時のように我のところに呼び寄せることができぬ時もあるからな』


「そ、そうなんだ」


 聖剣の話を聞いたククルは、きょとんとした表情をしていた。


「余の時の聖剣は、その前に倒された魔王の部下が厳重に封印をかけておったからな。その身を焼かれることを前提として、自分が死ぬと解けぬ魔法を施してな」


「まあ、なんという執念……」


「だが、余の一族が持つ能力の前には、そんな物は無意味だった。余は聖剣を探し出し、その封印を難なく解いてみせたのだよ」


「さすが魔王様……。おそるべし」


 魔王の証言を聞いて、ククルは呆れていた。

 驚いた顔を見せているククルに満足した魔王は、改めて国王へと視線を向ける。


「そういうわけだ。聖剣は余の元にある。人間側には勝ち目のない戦いだろう」


「ぐぬ……」


 魔王から事実を突きつけられた国王は、まったくもって何も言い返せなかった。


「だが、心配するな。余とククルがいる限り、大規模な戦闘が起きることがないであろう。そこでだ、いろいろとこの場で約束事を交わしていきたい。大臣を呼んでくれぬかな」


「分かりました」


 魔王の提案を飲むしかなかった国王は、すぐに大臣を呼び出す。

 やって来た大臣は当然腰を抜かしていたが、重要な話だというと、仕事だと割り切って魔王の前で震えながらも堂々としていた。

 ただならぬ緊張感が漂う中、魔王と国王との間で様々なことが取り決められていくのだった。

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