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メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


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第90話 メイドコボルト、格の違いを見せつける

 クリアテスは高位神官ではあるものの、思ったよりも剣術が扱えている。

 対するククルも、ククールという獣人として生活していた時に剣の鍛練を積んでいたので、クリアテスの剣術に十分対抗できている。


「くっ、コボルトのメイドのくせに、この私の剣についてくるとは」


「甘いですね。コボルトの身体機能の高さを甘く見てもらっては困るのですよ」


 お互いに思ったよりやるようで、剣戟の音が響き渡っている。

 二人が戦う周囲では、クリアテスが率いてきた兵士と、街の防衛を担う領主の私兵と冒険者たちとが戦っている。お互いにリーダー格の強化魔法を受けているとあってか、かなり激しめの先頭になっている。

 ククルは、クリアテスとの戦いを行いながら、そちらの様子をちらちらと気にしている。


「他人の心配をしている場合ですか!」


 ククルの様子に気が付いていたクリアテスが、ククルへの攻撃を強めていく。

 しかし、今のククルは魔王たちと戦っていたプリムの記憶を持っている。聖女という後衛職とはいえ、最後の決戦ではアブジールとともに二人だけで戦った実力の持ち主だ。当然ながら、クリアテスの貧相な攻撃など当たるわけもない。

 振り下ろされた剣を軽く躱したかと思うと、聖剣の腹でクリアテスの体に一撃をお見舞いしていた。


「ぐぼ……っ!」


 自身の身体強化も乗ったククルの一撃で、クリアテスはかなりのダメージを負っている。


「あなたのご先祖のせいで死線をくぐることになりましたからね。あなたのようにぬくぬく育った者が敵うわけがないのですよ」


 体をくの字に曲げて苦しむクリアテスに、ククルは言い放つ。そのまま剣を引き、小さな体で思いっきり体当たりをかましている。


「ぐはっ!!」


 最初の聖剣による一撃だけでかなり無防備と化したクリアテスは、ククルの体当たりで大きく吹き飛んでいく。思ったよりも大きく吹き飛んでいくクリアテスを見て、ククルはちょっとやりすぎたかなと思ってしまった。


『主、この程度、主が受けた苦痛を考えれば大したことはございませんぞ』


「まあ、そうよねぇ……。心臓を貫かれたことを思えば、彼には刃すら当たってもいないんですものね」


 聖剣が言葉をかけてくると、ククルは吹き飛んだクリアテスに視線を向けながら、複雑そうな表情を浮かべている。


「おのれっ! よくもクリアテス様を!」


 クリアテスへの一撃の後無防備になっているククルに対して、クリアテスの部下が襲い掛かってくる。

 黙って攻撃すればいいものを、わざわざ声を出して襲い掛かってくるものだから、コボルトであるククルには十分な反撃の余裕ができていた。


聖域結界(サークル)


「のわーっ!」


 攻撃から身を守る結界を張ると、襲い掛かってきたクリアテスの部下はあっさりと結界に跳ね返されて地面へと転がってしまった。


『やれやれ。力を取り戻して時間があまり経ってないというのに、もうあの頃くらいに力を使いこなしておるか』


「記憶が戻ったのが大きいと思うわよ。ただのコボルトだったら、魔力の大きさに自分の方が危険だったでしょうからね」


『そんなものかな』


 ククルの言い分に、微妙な反応を示す聖剣である。

 だが、そんな漫才のようなやり取りをしているわけにもいかない。


「お、おのれ……、コボルトごときがっ!」


 クリアテスが起き上がってきたからだ。

 このまま放っておけば何をしでかすか分からない。なので、徹底的に戦意を削がなければならない。ククルはぐっと聖剣を握りしめて、改めてクリアテスを睨みつける。


「なんですか、その目は! こうなっては、私の最大火力の魔法で、徹底的に焼き払ってあげましょう!」


 完全にクリアテスは激昂している。その姿を見て、ククルはじっと構えている。

 次第にクリアテスの頭上に魔力が集まり始める。普通の魔族であれば身も震えてしまうような恐ろしい神聖な魔力だ。

 ところが、ククルにはまったくそんな感情が起きなかった。


「ホーリージャッジメント!」


 神聖なる魔力が剣の形を帯び、ククルへと落下していく。


「ククル?!」


 ちらちらと見ていたジャックの目にその光景が飛び込むと、ジャックは戦いを捨てて、ククルのところへと走り始める。

 ところが、さすがに気が付くのが遅すぎた。

 ジャックの目の前で、ククルに神聖な魔力の剣が直撃する。

 さすがにあんな魔法を食らってはただでは済まないだろう。間に合わなかったジャックは、その場に崩れてしまう。


「ふふっ、さっさと観念していればこうならなかったのです。さあ、地獄で後悔するのですね」


 クリアテスは勝ち誇ったように笑っている。


「ふーん、この程度なのね。さすが私を刺し殺した男の子孫だわ」


「なんだと?!」


 地面に与えた衝撃で巻き上がっていた土埃が晴れてくると、そこには無傷で立つククルの姿があった。魔族特効の魔法で無傷という現実は、クリアテスにはとても信じられないものだった。

 驚くクリアテスを見ながら、ククルはとても嬉しそうに笑っている。


「どうかしら。聖女と聖剣という組み合わせの恐ろしさ、分かってもらえたかしら」


 背中ではパタパタとしっぽが揺れている。


「神聖魔法っていうのは、こう使うものよ」


 ククルは聖剣を両手で持ち上げると、天高く突き上げる。


「ホーリージャッジメント!」


 クリアテスにやられた魔法を、そのままお返しするククルなのであった。

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