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メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


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第83話 メイドコボルト、家族と戯れる

 長老との話を終えたククルは、ようやく自分の家に戻ってくる。


「姉ちゃんだ」


「みんな、お姉ちゃんが帰ってきたよ」


 家に近付くなり、家からわらわらと弟や妹たちが出てくる。なにせ今世のククルの兄弟は十数人もいるのだ。両親もいるために、それなんともいえないレベルの大家族である。

 それというのも、コボルトは二足歩行の犬という最下級の魔族である。それゆえに、人によってはかなりの大人数を産むことだって珍しくない。過去のコボルト族には三十人くらい産んだという記録が残っているくらいだ。

 ちなみにククルは、その兄弟たちの一番上である。帰ってくるなり、周りにわらわらと集まってきた兄弟たちから手や服の裾を引っ張られまくる始末である。


「姉ちゃん、遊んでよ」


「なあ、魔王城の暮らしってどんなのなんだ」


「食いもんちょうだい」


 一斉に声をかけられて、どう反応していいのやら、ククルは苦笑いをするばかりである。

 そんな中、ようやく両親が顔をのぞかせる。


「おお、戻ってきたか、一番上の」


「おかえりなさい。ちょっと、背が大きくなったんじゃないかしらね」


「ただいま、お父さん、お母さん」


 両親の身長はククルよりもさらに小さかった。

 それというのも、コボルト族の身長は、人間たちの腰ほどから胸あたりまでの背丈ほどにしか大きくならない。

 こういった種族事情を踏まえるのであれば、確かにククルの身長は少し大きいかもしれない。

 とはいえど、魔王のおつかいで向かった街では、獣人の少女と間違えられるほどには背は小さかった。この事実からして、ククルは母親からの言葉にちょっと複雑な気持ちになったものである。


「うおーっ、なんだこれ」


「あっ、こら。勝手に触らないの」


「おや。剣など持ってどうしたんだい?」


 弟の一人が聖剣に触れようとしたものだから、ククルはすぐに注意を入れていた。剣が見つかってしまったので、即理由を聞かれてしまっている。


「実は、魔王様の直属のメイドになったので、護身用にと剣を下賜されたの。あ、でも、必要な時は抜かないように言われているから、あんまり触らないでよ。もしかしたら、真っ二つにされるかもしれないから」


「ひゃうっ!」


「怖い!」


 両親の問い掛けに答えながら、ククルは弟や妹たちを牽制している。興味津々にしているため、触っちゃいけないところにまで手を伸ばしかねないのだ。

 コボルトはあんまり覚えることは苦手にしているけれど、身に危険が迫るようなことに対しての記憶力はまるっきり違う。それを利用して、ククルは脅しをかけたのだ。

 さすがに真っ二つと言われたら、みんな揃ってククルから距離を取っていた。ちょっと脅しが過ぎたかしらと、ククルは苦笑いを浮かべている。


 久しぶりに故郷に戻ってきたククルは、家族たちとの団らんをとても楽しんでいた。なにせ、この家族の幸せのために、魔王城まで働きに出たのだから。

 その成果を目の前にして、ククルはとても満足そうに微笑んでいる。


 日が暮れて夕食を済ませると、兄弟たちはさっさと寝静まってしまう。

 基本的にコボルトは日が昇るとともに動き出し、日が沈むと眠ってしまう。昼行性の種族というわけだ。

 だが、大人になると、それに当てはまらないコボルトも出てくる。これは群れを守るための防衛本能からであり、大人のコボルトたちがその役割を果たしている。

 なので、ククルの両親も寝ないで起きているのだ。


「おや、一番上のは眠らないのか?」


「私はまだ眠くないわ。魔王城の仕事をしていると、夜遅くまで起きていることもしばしばだもの。このくらいへっちゃらよ」


 両親に聞かれて、ククルは両腕で力こぶを作りながら答えている。


「そうかい。今の生活は楽しいと見ていいんだね」


「うん。今はククルっていう名前もあって、魔王城のみんなとは仲良くさせてもらっているわ」


「そうかいそうかい。それはよかったな」


 ククルの現状を聞いて、両親ともにちょっと泣きそうになっているようだ。やはり、家を出ていった娘が元気でやっているとなると、両親としては嬉しいのだろう。これは、種族も何も関係ないようだ。


「それにしてもその剣はとても立派だね。そういったものをいただくのは、魔王城では普通なのかい?」


「ううん。私は魔王様の専属のメイドだもの。何かあってはいけないということで、護身のためにいただいたのよ。あと、もしもの時には魔王様をお守りできるようにって」


「なるほどね」


 両親はククルの話を信じているようだった。さすがに娘は嘘は言わないだろうと信じ切っているような感じすらある。こういったところは、単純な思考回りを持つコボルトといったところだろう。

 だが、これだけあっさり信じてもらえると、ククルとしてもとても気が楽というものだ。


「本当は魔王様のお手伝いは忙しいんだけれど、たまには戻れという魔王様のお気遣いでこのように戻ってこれたのよ。魔王様に感謝しなきゃね」


「ああ、そうだな」


「こっちにいる間は、たくさん甘えるんだよ」


「うん、お父さん、お母さん」


 両親の言葉に、嬉しそうに微笑むククルである。


 久しぶりに戻ったコボルトの村は、以前のように平和のままだった。

 メイド服で剣を背負ったままという奇妙な格好ではあるが、集落のコボルトたちは誰一人としておかしいと思わなかった。

 おかげで、兄弟たちとも気兼ねなく戯れることができたので、ククルとしてはとても満足のいく帰省となったようだった。

 二日間、村での滞在を行ったククルは、再び魔王城へと戻っていったのである。

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