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メイドコボルトは聖剣の主  作者: 未羊


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第67話 メイドコボルト、心を決める

 ひとまず魔王は城へと戻っていき、領主邸の中には静けさが戻ってきていた。

 部屋の中で一人ベッドの上で転がるククールは、ようやく頭の中の整理がついてきたようだった。


「ねえ、聖剣」


『なにかな、主よ』


 ベッドで仰向けになりながら、ククールはサイドテーブルに置いた聖剣に話しかけている。


「あれって本当の話なわけ?」


『あれとは、何のことですかな、主』


 はっきり言わないものだから、聖剣も答えようがない。

 だが、その話を詳しくしようとすると、ククールはものすごく口ごもってしまっているようだ。

 しかし、さすがにあいまいにしていても話が進まないので、ククールははっきりと聖剣に聞いてみることにする。


「魔王様の前世と私が婚約者だって話よ。だって、私はただのコボルトよ? それに生まれてから十何年しか経っていないんだから、魔王様の前世とじゃ時代が合わなすぎるじゃないの」


 ククールは聖剣へといろいろと言葉をぶつけている。

 それにしても、これだけしっかりと時代のずれを認識しているあたり、やはりククールはただのコボルトというわけではなさそうである。

 ところが、ククールの質問に、聖剣はすぐに答えなかった。何か感慨深くなっているのか、黙り込んだままである。


「ちょっと、さっさと答えてよ」


 顔だけを聖剣の方向へと向けて、いらついた様子で改めて問い掛けている。

 さすがにちょっと圧が強かったのか、ようやく聖剣は答えるような素振りを見せ始める。


『うむ、その質問に答えよう。その人物と主が同一人物とはまだ限らぬのだが、それを前提として話をさせてもらおう』


「答えてくれるんなら、そこは気にしないわ。さっさと話して」


『あい分かった』


 ククールからの要望を聞いて、ようやく聖剣は魔王の前世について話し始めた。


 魔王は元々とある国の王族だったのだという。当時は王子である。

 王子には幼馴染みがいて、その幼馴染みが聖女だったのだ。王家からの要請もあり、王子と聖女は婚約者となり、それはとても仲睦まじかったそうだ。

 聖剣が当時の王子とともに活動するようになったのは、その婚約よりも後の話だが、王子との話の中でいろいろと過去のことを聞かされたのだという。だから、聖剣も知っているというわけだ。


『王子の名前はアブジールといい、婚約者である聖女はプリムといったかな。それは周囲もうらやむほどの仲の良さだったぞ』


「そ、そうなのね……」


 聖剣の話を、ククールは一応真面目に聞いていた。とはいえ、反応に困るような箇所もあって、なんともいえない気持ちになっていた。


 その後も修練を積み、聖剣の持ち主として魔王を打ち倒す旅に出ることになった王子と聖女。十数名の優秀な人員を率いて、魔王城を目指して旅をすることになった。

 魔王城までもう少しというところで築いた拠点が、今ククールたちのいる街の礎になったらしい。


「それで、この街って魔王城からあんなに近かったんだ……」


『そういうことですな。よもや、現存しているとは思いませんでしたがな。真っ先に攻められるイメージしかないものですからな』


「言われてみれば、確かにそうね……」


 聖剣とククールのいう通りである。魔王城から歩いてたった八日の距離にあるのだ。攻められない方がおかしいというものである。それでも今まで存続できたというのは、当時の勇者と聖女が何かしらを施したのかもしれない。ククールはそのように考えた。

 それでも、聖剣の話はここで終わりではなかった。

 当時の勇者であるアブジール王子と聖女プリムの顛末まで話し始めたのだ。

 アブジール王子と聖女プリムは、なんとたった二人だけで魔王城に乗り込むことになってしまった。それというのもスルランという男が裏切ったためである。

 その結果、アブジール王子は当時の魔王と刺し違えになった。

 プリムは生き残っていたのだが、その直後に悲劇が襲う。

 裏切ってついてこなかったスルランが、王子の死に嘆き悲しむところに現れたのだ。そして、聖剣を奪い、聖女プリムを貫いたのだ。

 そして、聖剣を持ったスルランだけが戻ってきたのだが、残った兵士たちはそのスルランのいうことを信じたのである。

 聖剣は意思を持つが、声を聞くことができるのは選ばれた人物だけである。真実を知りながらも、聖剣はそのことを伝えることができなかった。

 その結果、スルランは英雄として持ち上げられ、一族は繁栄したのだという。


「なによそれ……。ってことは、あのクリアテスっていうのは、魔王様にとって婚約者の仇の子孫っていうわけなのね」


『そういうことだな。とはいえ、聖女が殺された時には、すでに息絶えておったから、そのことは当人は知らぬのだがな』


「でも、最終決戦にはついてこなかったから、裏切り者という認識だけはあるのね」


『うむ、その通りだ』


 今日のやり取りについて、なんとかククールは理解ができたようである。

 その話を聞いたククールは、きゅっと表情を引き締めると、聖剣へととある決意をぶつけることにした。


「聖剣」


『どうしたのだ、主』


「私、魔王城に戻るわ。そんな話を聞いたら、逃げるわけにはいかなくなったもの」


 そう、ククールは聖剣を持った状態で、堂々と魔王城に戻ることにしたのである。

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