8話 〜うばわれたあなたへ〜
私はマシンガンをぶっ放した。
黒い鳥たちが音も立てずに海へ落ちていく。
そして、終点で"ポチャッ"と音を立てて、姿を消した。
「……4羽。」
最初見た時、私を追っていた数はもっと多かった。
ということは──
「とりま、上かな。」
私は推進器を下に向ける。
そして、それを吹かして、急上昇して。
あたりを見回した。
ちょっと後ろ、艦の裏に。
黒と緑の点が交差しているのが見える。
「あれだよね。」
その点に向けてトリガーを引く。
その弾丸の一発も、当たる気はしないけど。
そのまま急降下して、近づいて──
「やめてっ!」
鳥の1匹を、蹴り飛ばした。
蹴り飛ばした鳥は、すぐにこちらの方に方向を変える。
私は、そいつに向けて銃を乱れ撃つ。
……鳥は、また落ちていく。
途中で煙を吹き出し、火花が飛び出す。
そして、海面に着く前に爆発した。
「まだ、やる──っ!?」
目の前に、またあの人型が飛び出してくる。
私は少し、後退してしまう。
その瞬間、人型が何かを振りかぶって──
「危なっ!?」
それを銃身で受け止める。
両手で押さえて。
擦れる音は軽い。
刀身も長くないし、多分ナイフとかそんなものだと思う。
「ナ……ノデ……」
どこからか声がする。
声だと、認識できるものが。
どこ──
「ナゼ……コバム………」
今、わかった。
目の前の機体から。
私より少し大きい、黒い機体。
顔がついていて、一部に肌色がある。
人の顔を持っていただろう、その機体から──
「何故って、そりゃ貴方達が仕掛けてくるからでしょ!?」
私は目の前の機体の腹に、蹴りを決める。
それは大きくのけぞり、しばらくの間後ろに進み続けた。
どうやら、空を飛べてる割にその出力は私のよりも低いみたい。
もしくは、基本動作は直線しか難しいとか?
細かい調整はできないとか──
「ワタ……ア…タヲ……
オマモ……ノガ…ンム……」
そんなことを考えていると、目の前の人型は語りかけてくる。
こちらに、銃身を向けながら。
「オトナ……ツカ……
ワタ…ノモト……ナ……!」
「喋るなら、はっきり喋ってよ──ね!?」
銃撃の音が響く。
私はそれを間一髪で避ける。
同じ場所に留まるのは危険かもしれない。
さっきの鳥たちよりも、何倍も射撃が上手い。
「ワタシ…ニンゲ………
アマリハナサ……ノデ……」
少しずつ、声が鮮明になってくる。
さっきまでのノイズ混じりの音が、少しづつ綺麗になって、私でも理解できるようになってくる。
「アナタハ……タチニトッテ……
カケガエノナイ……ザイ
ダカラ……」
「うるさいなぁ!?」
聞こえるようになったらなったで、戦闘に集中できないじゃん。
いや、それが狙いなのか……?
「オネガイ………
モドッテキテ……」
「もう……
うるさい!
撃つ!!」
よくわからないけど、この個体はまだ私をAIたちのところに連れ戻すってのを目的に戦ってるのはわかったよ。
私が敵になったって言ってた本人なのに。
でも、そうだな……
「私は妹を迎えに行かなきゃなの!
だから……邪魔しないで!!」
私は宣言通り、銃を向けて撃つ。
その弾丸は一つも、目の前の機体には当たらない。
「ソウデ……
ワカリアエ……デスネ……
ナラ……ハイジョ……ス!」
敵がライフルを構え直す。
その瞬間、弾丸が飛んでくる。
"間一髪"が続く。
今までのが本気じゃないかのように──
いや、多分そうなんだろうな。
さっきから、私のいた場所を通っている。
動き続けなかったら、多分、死んでる。
私は、何もない空を加速する。
少しでも弾丸から離れるように。
私を、捉えさせないように──
「……リロード……」
敵が、呟いた。
その意味を理解するまでに、そこまで時間はかからなかった。
そこまで、だけど。
私は加速しなおす。
敵がライフルに予備の弾倉を入れ、レバーを引き直した瞬間。
「今!」
私は敵のライフルを蹴り上げた。
手元から離れたそれは、足元の碧の中に落ちていった。
そしてライフルを構えた、その瞬間。
「痛っ!?」
ライフルを支える腕の方から、ナイフが飛び出してくる。
それは私の左腕を確かに捉え、装甲の覆われていない関節部を──
肩を切り裂いていった。
「……カクゴ……!」
「うりゃあぁぁぁぁ!!」
そうして、再びナイフを構える腕を弾いて。
私はその敵を──
──蜂の巣にした。
銃口から、煙が吹き出している。
空薬莢は光りながら、海に落ちていく。
敵と、一緒に。
私は勝った。
勝って、生き残った。
「……早く、援護しに行かなきゃ。」
まだ、味方が戦ってるかもしれない。
だったら、少しでも早く戻らないと。
だったら──
「…アイ…ス……
私はアナタを……」
突然、私の名前が呼ばれた気がした。
声の主は、今落ちているあの機体。
私の名前も知らないはずの、その機体だった。
「なんて──」
そう言った頃にはもう、姿が見えなくなっていた。
海面には、金色だけが浮かんでいた。




