6話 〜N106-6〜
私が撃ち落とされてから7日。
私が目を覚ましてからなら、2日。
地獄の、訓練が始まることとなった。
「……全然、当たらないよ!?」
最初は、射撃訓練。
本当は基礎体力からって話だけど、私の場合は必要ないとか言われた。
話によると、まずあのマシンガンを片手で持ててたのがおかしいって話らしいけど……
私運動とかあんまりしてこなかったんだけど、なんで?
「そりゃ、嬢ちゃんは軍人でもなんでもなかったんだ。
いきなり照準が定まるわけないな。」
ダグラスさんが、そう言った。
言い忘れてたけど、私は平時にはN106小隊の元で訓練させてもらえることになった。
一応、この前の戦闘でロイさんが戦えなくなったから、その補欠の意味もあるらしい。
そう、戦えなくなった──
「そう落ち込むなよ。
俺だって、軍学校時代は射撃の成績が悪かった。
だけど、ここにいる。」
「そうなんですね……
正直、軍学校がどんなものなのか想像できませんけど。」
「あぁ、すまない。
そりゃそうだよな。」
ロイさんは生き残った。
機体が破壊されたらしいけど、その前に脱出していた、ということらしい。
でも、その代わりに──
「脚の方はどうなんですか?」
「脚?
あぁ、これぐらい治るさ。
しばらくしたらな。」
そう、脚。
あの戦闘でロイさんは脚に怪我を負った。
機体の破片が刺さっていた、とか。
怪我と機体が失われたことから、しばらくは休養が言い渡されたらしい。
なのに──
「その銃なら、こうやって構えるんだ。」
「こう……ですか?」
「そうだ、それで──」
私の訓練に付き合ってくれている。
それも、車椅子に乗ってまでして。
本当なら、自室のベットで休む方がいいだろうに。
「じゃあ、撃ってみろ。」
「はい!」
私はハンドガンを構える。
腕を伸ばし、銃を高い位置で捉える。
ラインを意識して、ドットサイトで的の真ん中を捉えて──
弾薬の炸裂する音が響く。
銃口からは煙が吹き出している。
不思議と銃が吹き飛ぶような衝撃は、あまり感じられなかった。
でも……
「……うん。」
下手だ。
本当に下手。
弾丸は的のかなり端を掠めている。
黒い焦げ跡だけがそれを示している。
「まぁ、嬢ちゃん。
初回にしてはよくやった方だ。」
「そうだぞ。
俺なんか軍学校時代──」
「お前それさっきも言ってただろ。」
ダグラスさんもロイさんも、なんとかしてフォローしようとしてくれてる。
なんというか、ありがたいね。
そうして、午前中は射撃訓練を続けた。
……さっきの含めて、十発打って三発しか当たらなかったってのは、内緒にしたかった。
ふっつうに、艦長の方にまで伝わることになった。
で、今はというと……
「……眠ってるうちに沢山あったんですね。」
「あぁ……まぁな。」
ガルヴィスさんに座学を見てもらっている。
私も軍に仮でも入るのなら、座学は必要になってくる。
って、ことらしい。
それにしても──
「えっと……
RE1895年に複数の国家の合併があったみたいですけど、これって?」
私が眠る前は確か1879年。
その当時、隣国と戦争になりつつあったって話があった……はず。
1984年にAIが反乱を起こした後、私の国とその隣国が合併しているってこと。
……なんで?
「戦争なんてやってる暇ないんじゃないんですか?」
「……やってる暇なかったからだ。」
……ドユコト!?
「合併された国々は小さかった。
だから、弱い国々を少しでも団結させるために合併した。」
"結局、その大半はすぐにAIに侵食されることになったが……"
そう、付け足された。
私が知らないこの50年の間に、世界情勢は思っていたより動いていたみたい。
そして、面白いと言ってもいいのかわからないけど……
「1915年、AI側のバックアップの技術の存在が確認された。
そのために、AIの個体数を減らすことは困難だと……
これ、どうやって攻略するつもりなんですか?」
「バックアップのある拠点を叩く。
それしかないな。」
なんて脳筋……。
じゃなくて。
私が魅力に感じてしまったのはその技術の方。
AIみたいな複雑なもの、どうやってバックアップを取ってるんだろう。
「……そんなに目をキラキラさせるな。
なんというか、不謹慎だ。」
「あっ、すみません!?」
私は慌ててページを捲る。
さっきのを掻き消すように……
本当、こういう歴史的なやつ読む時、兵器というか技術を見てしまう私がいる。
なんでかは、よくわからないけど。
「…そろそろ、時間だな。
とりあえず、格納庫のほうに行くぞ。」
「はい、わかりまし…た。」
私はさっきまで読んでた本を閉じる。
閉じて、元の場所に戻す。
そして急いでガルヴィスと合流する。
「格納庫はこっちだ。
前にも行っただろうが、念のため迷うなよ。」
そう言われたのでついていく。
そうして、私は資料室を後にした。
また、あのスーツを着ている。
スーツってか、その前のアンダースーツかな。
まだ鎧はつけてない。
格納庫に着いて早々に着替えるように催促された。
ガルヴィスさんは隊員の元に戻って行った、らしい。
まぁ、忙しいだろうし違うかもだけど。
「じゃあ、これ着てみてもらえる?」
「……これ?」
この前と同じ女性の整備士さんに鎧を渡される。
けど、何かが違う。
軽いような気がする。
てか、前より薄い気がする。
「前の時、装甲のおかげで君は色々と耐えれたわけじゃん?」
「……はい。」
それは、そう。
多分、なかったらもうここにいないと思う。
でも、なんで薄くするんだろう。
「なんで薄くなったのかって思ってるかもだけど、こっちにも理由があってね〜。」
"コストの兼ね合いとか"
そう言って、整備士さんは後ろを向いてしまう。
私はそれをただ見つめていた。
そう見つめて──
……早く着なくちゃ。
「まぁ、簡単にいうなら、少しなら薄くしても耐えれるかもしれないってデータが得られたからね、前回。
だから急所になる部分以外、特に関節部分を数ミリ減らしてみたんだけど……」
整備士さんが語り出してしまった。
言ってることは……なんとなくわかる。
軽くなったってことは──
「最終的に加速しやすくなるってこと!」
「……ですね。」
私の内心を代弁されてしまった。
てか、前の時この人こんなに興奮してたっけ?
……もしかして?
「これ、お姉さんが調整したんですか?」
「えぇ……?
あぁ、そうだよ。」
やっぱり、そうだったのか。
なんというか、そんなイメージができちゃったというか。
親近感湧いちゃった。
……なんで?
まぁ、とりあえず下半身までは着終わった。
「君に、謝りたかったからね。」
「……はい?」
本当に、予想外の言葉が飛んできた。
私何か謝られることしたかな……
スーツボロボロにしちゃったぐらいしか思いつかないよ?
「私、君にやつ当たっちゃっててさぁ。
君がこっちにきた時、"子供の遊びに構ってられるか!!"ってね。」
「……はい。」
あ、確かに適当だった気がする!
操作説明とか!
って、言ったら傷つけそうだから口には出さないけど。
「でも、君は大人よりも大きな戦果をあげてみせた。
私は少し後悔したよ。」
“それ以外の理由ももちろん、あるけどね。"
そう言ったのを私の耳は逃さなかった。
ついでに、"大人が私の整備した機体に乗ってるくせに1機も落とせず子供が3機って一体なんだよ"って言ってるのも。
これは……忘れてもいいかな?
いいよね?
「すまなかった。」
そう言って、頭を下げられる。
私は思わず──
「やめてくださいよ!?
私がわがまま言ってたのは本当ですし、貴方たちが作ったスーツのおかげで生き延びれたのも本当ですから!」
整備士さんは頭を上げる。
って思ったら、ヘルメットを持ち上げて、私に手渡す。
「私の名前はルミネ・アマルガー。
これから君の担当をすることになった整備士だよ。」
「……よろしくお願いします!」
私はヘルメットを受け取る。
それを頭に被ってる間に、ルミネさんはあっという間に調整して──
「よし、じゃあ。
いってらっしゃい。」
「いってきます。」
なんか、この一瞬で親しくなれた気がする。
私はカタパルトに乗る。
そういえば、これもこのスーツのために増設されたとかなのかな。
なんて、考えながら。
「そういえば。
私たちオペレーターでもないし。
細かい指示はオペレーターとか艦長に聞いてね〜。」
「えぇ──!」
返事をする前に、射出されることになった。




