3話 〜機械の鎧に心〜
書いてると意外と文字数少ないんだなぁとなる。
けど、電車の中でちょこちょこ書く分にはこんなもんかと誤魔化してる。
「N106-3、反応ロスト!」
私は動けなくなった。
だって、私をここまで連れてきた人たちのうちの1人が、死んじゃったかもしれない。
そんなの、認められない。
認めたくない。
「ねぇ、艦長さん。」
気づいたら、艦の真ん中で指揮をとっているその人に近付いていた。
いや、私の意思。
聞かなくちゃいけない。
「私に、何かできることはないですか?」
多分ないだろう。
ただの非戦闘員。
なんの武器もない私に何かができるはずがない。
「はぁ……
これは戦争なんだ。
子供の戯れなら自分の部屋に──」
「私が"切り札"だって言ってきたのはあなた達です。
私のせいで、人が死んでるってのに……
なんで私だけじっと見るしかできないのですか!?」
……泣いていた。
ただ、感情に任せて。
これは私の我儘。
ここは人の生死が関わる戦場。
私なんかが邪魔をしちゃダメな場面。
でも──
「もう、人が死ぬのは嫌なんです!」
私の中から出てきた言葉。
私の中でも、意味がわかんない言葉。
まるで、前に人が死ぬ場面を見たみたいな。
でも、それは本心だった。
「これは、お前を守るための戦いでもある。
その切り札は来るべき場面まで温存するべきだと、私はそう思うのだ。」
艦長は冷たく、私の言葉をあしらった。
その目は冷たい……だけじゃない、どこか憂いのあるような目だった。
「……でも、私を守ったせいでまた人が死ぬんですよね?」
「──あぁ、そうかもしれな──」
「それなら、私はこの身を投げます。」
「お前、何を言ってるんだ!?」
私にもわかんない。
自己評価が低かったのかな。
私自身の記憶ないけど。
でも、そうじゃない?
だって──
「切り札は使うべき場面で使うから切り札じゃないんですか!?
それが使えないなら、存在する価値がないじゃないですか。
この場面で──」
自分でも何言ってるかわかんない。
言葉が詰まってきてる。
本当に、民間人の立場で何言ってるの。
それでも──
「分かった。
ここは私たちが引き下がろう。
整備班、"新型"の用意を!」
「艦長!?」
近くの軍人さんがそんな声をあげた。
私も、何かを言いかけてそれを飲み込んだ。
まさか、許されるとは思ってなかったから。
「残念なことに、君は私達だけじゃなく、敵さんにとっても貴重なサンプルだ。
50年間、起こすこともできなかった、な。」
サンプルってどういうこと?
そう思った時、艦長さんは私の肩に手を置いて言った。
「大丈夫、撃ち落とされることはないだろう。
"切り札"になってきなさい。」
そう言って、彼は自分の席へと戻っていった。
「お前を格納庫に連れて行く。
説明はその後だ。」
さっき入室許可をとってくれた軍人さんについて行く。
その足並みは早いのに重かった。
「これを着てきてね。」
女性の整備士さんにそう言われたので、それを着てみる。
んだけど……
「……なんか、ちょっとエ◯チじゃない?
これ。」
だって、このインナースーツ、めっちゃ身体のライン出てるっていうか……
ほぼ、コンプレッションスーツっていうか……
私、なんでそんな言葉知ってるの?
「着替え終わりました……」
「じゃあ、こっち来て!」
私は言われた通りに動く。
ちょっと走って。
「じゃあ、今からこれ装着してもらうから、我慢してね。」
「……え?」
めっちゃ失礼なのはわかる。
わかるんだけど……
そこにあったのは鉄の鎧。
そう、鎧としか呼べない代物。
ヘルメットだけプラスチックだかのカバーでいい感じに保護してる感あるけど……
「……これでどうやって戦うんですか?」
無意識にそんなことを言ってしまった。
それこそ、本当に失礼なことだよ。
「あはは、そう思うよね。
私もそう思ったよ、搬入された時〜。」
整備士さんは笑いながらそういった。
ついでに、私にその鎧を着せながら。
「これ、試作段階の代物なんだけどね。
本当は、この戦闘がなかったら明日とか、明後日とかに君にテストしてもらう予定……だったらしいよ?」
「……私に?」
彼女はそう言いながら、もう私の腰の付近まで装着している。
自分で着てる部分もあるとはいえ、細かい調整は彼女が1人で行っている。
試作とかなら慣れてないものじゃないかなと思うけど、それはやっぱり腕が立つとかなのだろうか。
ふと、周りの様子を見てしまう。
他の整備士さん達はいきなりの仕事で忙殺されている。
私にはその内容はわかんないけど、本当に、申し訳ないことをしてるなって、思う。
本当、我儘だな、私。
「よし、終わった。
カタパルトに乗って!
操作説明は乗ってからするから!」
「えっ、カタパルトって、飛べるんですかこれ!?」
「そう、だから早く!」
私は言われる通りにカタパルトやらに乗る。
SFの軍艦みたいに甲板の上だけでなく、内側から射出するタイプ。
……なんか、整備性とか色々大変そうじゃない?って思うのはおかしいかな。
そもそもとして、なんで私が心配してるんだろ。
「まず、左手にさっき渡したコントローラーがあるから、そのボタンをいい感じに調整して飛んで、以上!」
「……え、そんな雑なんですか!?」
コントローラーってボタンひとつしかないんですけど!?
って、しれっと右手にも武器持たされてる。
……重い──マシンガンか何かかな?
よく耳にする……しない?
「3、2、1、リフトオフ!」
「えっ、ちょっいきなり!?」
私は空気抵抗を感じる。
気がついたら射出されている。
頭から、落ちている。
目の前には海が広がっている。
なのに、急に時間がゆっくりになる。
ゆっくり流れるように感じる。
これってつまり──
……走馬灯ってこと!?
待って、待ってこのまま死ぬの!?
私がなんとかしなきゃって息巻いてたのに!?
いや、でも──
私がいなくなったら敵が艦を狙う理由は……別にあるね?
じゃないでしょ、落ちてるよ私!
あっ、そうだボタン。
私はボタンを押した。
その瞬間、時間は元通り流れるようになった。
多分、そう。
そして私は宙を──
「空を飛んでる!」
背中から、肘から、足の裏から。
私が着ているこの"スーツ"はジェットを噴射して、私の身体を浮かしている。
海に落ちることなく、私は姿勢を取り戻し──
「えっと……
こっからどうやって操作するの?」
ほっとする間もなく次の問題に直接面する。
スピードの出し方、そもそもの姿勢制御とかの話。
だって──
「……ちょ!?」
私は今、空中で回転してるから。
本当に戦場で何やってるの、私!
てか、よく撃たれてないな、こんなの着て!
「落ち着いて!
ちゃんと"飛んでる姿"を思い浮かべて!」
あっ、さっきのお姉さんの声だ〜。
無線かな〜。
じゃなくて、思い浮かべるって?
もういいや、なるようになって!
急に、回転が止まった。
私は姿勢を本当に取り戻した。
「そのスーツはなんかこう、思考を読み取って制御するとかなんとかで──」
「それなら早くいってくださいよ!
私、死んだかと……」
"そんな簡単に死ぬはずないじゃない"
そんな声が聞こえてきた。
私は何か言うべきじゃないなって、そう思わせる声色だった。
「まぁ、そんな感じなんだけど、私たちには感覚わからないから、なんとなく頑張ってね〜!」
「あっ、ちょっと!」
……切られてしまった。
なんとなく、私が何かやらかしてしまったから、怒らせちゃったのかなって思う。
でも、そんなの考えてる場合じゃないか。
私は今度こそ、空に飛び立つ。
碧い海の上の、青へ。




