11話 〜環境不安定〜
投稿忘れてた!!
「今日は平和だったな……」
そんなことを言いながら、私は目覚ましをセットする。
そして、私の荷物を入れた棚の上に。
"AILIS"と書かれたタグの隣に置いた。
……前にというか、療養してるとき。
気づいたんだけどね。
タグの裏に、書いてあったんだ。
妹の字で、少しくしゃっとした、殴り書きで。
"───ゃんへ
───らもずっと
お姉ちゃんでいてね
Noa"
左上の言葉は掠れて見えない。
でも、多分私の妹のもの。
記憶をなくす前の、私のタグであってたんだ。
私はベッドに横になる。
私以外に誰もいない部屋の中で。
天井を見つめても、灯りで灯された白が広がっているだけ。
私はライトを消す。
瞬間、あたりは暗闇に包まれた。
「……おやすみ、ノア。」
私は、タグを人差し指で撫でてから目を瞑った。
思考にも霧がかかっていく。
今日は、久しぶりにいい夢を見れそ──
「敵襲、敵襲。
各員、持ち場についてこれに対処せよ。
繰り返す──」
静寂を、サイレンと共に放送が切り裂いた。
その大きな音に、私は目を覚ます。
時計の針は──
目を瞑ってから、何時間も動いていない。
「……何?
ふぁ……」
あくびをかいた。
ベッドから降りて、ドアに向かう。
ドアノブを開けると──
「嬢ちゃん、起きてるか!?」
「起きてま〜す……
これ、なんですか……?」
眠い。
分かってるよ、敵襲だよね。
とりあえず、格納庫──
「敵襲だ、だから──」
「敵について分かってることとか、ないんですか?」
ダグラスさんは面を食らった顔をする。
そりゃ、そうなるよね。
目の前のやつが寝ぼけてたのに、途中で真面目になったら。
「……何も分かってない。
とりあえず──」
「急ぎますね。」
私は走り出す。
足音がトントンと響いている。
まだ眠さが尾を引いてる。
けど、この艦に乗って戦ってるうちは、そんな贅沢なんて言えないんだろうなって。
分かってる。
「……ナミネさん!!」
「おっ、来たかい。」
ナミネさんはもう、スーツとインナーの用意をして待っていた。
私は急いで駆け寄る。
「とりあえず、インナーを更衣室で着替えてきてね。」
「わかりました!」
私は更衣室に向かって。
着ていたシャツとジーパンを脱いでインナースーツを着た。
多分、2、3分ぐらい。
「着てきました。」
「じゃあ、上半身のスーツ着ててくれない?
とりあえず、下半身からつけていくから。」
私は言われた通りに、腕のアーマから取り付けていく。
以前と比べたら軽くなったな、なんてほんの少し思いつつ。
……ん?
「リアクターの場所、腰に移動しました?」
ルミネさんが、ちょうど下半身の装備をつけ終わったので聞いてみる。
午前中に見た時はそんな場所にこんな丸いユニットはなかったはず。
腰だから、リアクターか燃料かなと。
「あぁ……そうだよ。
今回、試しに少し大型のものを積んでみたんだ。
だから移動した。
よし、ヘルメットだけだね、あとは。」
そんなやりとりをしているうちに、装備はほとんど終わっていた。
私は手渡されたヘルメットを被る。
こればかりは、初めて着た時と変わらない印象を受けた。
「カラー暗視機能がついてるから、それを起動してから行くといい。
幾分マシなはずだよ。」
ルミネさんがヘルメットを指でトントンと叩く。
私がその場所を触ると凹んでいる。
そこを押した瞬間、視界が緑に染まった。
「じゃあ、行ってきま──」
「待って。
装備はマシンガンじゃなくてこれを!」
私は引き止められた。
彼女の手には、黒い銃があった。
紅い文字が彫られた、アサルトライフルが。
「"狐火"、ですか。」
「そう、前のマシンガンより圧倒的に取り回しは良くなるはず。
それに──」
"マシンガンの弾薬の残りがもう少ないんだ。
普段は使わないから。"
小声で、そう付け足された。
「装備の使い方は──」
「ある程度ならわかります。
今日の整備の時見てたので。」
私は予備の弾倉を受け取って、スーツのサイドウエストに引っ掛けた。
本体を受け取って、カラビナに取り付ける。
そしてカタパルトに向かう。
溝に、足を引っ掛けて。
「出撃します。」
宣言した瞬間、カタパルトが展開する。
「射出します。」
オペレーターさんの声と共に。
カタパルトのレールが、私の身体と共に加速していった。
終点、私は足を外し、スーツを起動する。
空を飛ぶ。
私の身体が空に投げ出されてすぐ、黒い鳥たちが姿を現す。
それは、私に向けて突っ込んでくる。
「どいて!」
私はアサルトライフルを構える。
ヘルメット越しにスコープを覗いて狙いを定める。
十字が鳥と重なった瞬間、トリガーを引いた。
黒い鳥たちは金属音だけを残して墜ちていく。
一羽だけを残して。
生き残ったそれは、私にまっすぐ向かってくる。
鉄砲玉も撃たず。
「しつこい!?」
避けても避けても追いかけてくるそれを。
私は──
「りゃぁ!!」
蹴り飛ばした。
敵の動きが少し鈍る。
その瞬間に弾丸を撃ち込んだ。
「……早く合流しないと。」
こんな鳥に時間を割いてる暇なんてないんだ。
夜襲って、それだけこっちが不利になれるはず。
AIなら人間の何倍も夜目が効くは──
「……!?」
私が息を整えていると、目の前を弾丸が通り抜けていった。
右を向くと、黒い人型が。
人の顔もない、ただ真っ黒なそれがあった。
その姿は、形容するなら──
「ただのロボットじゃん、もう。」
装甲に囲まれたそれは、ライフルをこちらに構えている。
なんとなく、前のより硬そう。
「とりあえず、邪魔しないで!」
ライフルを向け、弾丸を放つ。
多分、そのほとんどは敵の芯を捉えていた。
なのに──
「嘘でしょ!?」
一部を除いて弾かれてしまった。
唯一まともに当たったのは肩部装甲にのみ。
黒が捲れて銀が露出するだけだった。
「もうい──っちどはないよね!?」
弾丸が飛び出してくる。
数発じゃなくて、連射で。
私のなんかより、発射感覚が短い。
あと──
「弾数なんか多くない!?」
敵機をよく見てみると、ライフルから腰に向けてベルトが伸びている。
えっと……
「ライフルじゃないってこと─ねっ!」
片手でライフルを向けて飛びながら撃つ。
その殆どは当たらない。
多分、まだリロードの必要はないから大丈夫、私は。
あれ、多分マシンガンだよね。
前まで私が使ってた──と言っても形も何もかも違うけど。
あんなベルトはなかったし。
「だったら卑怯かもだけど!!」
私は敵の周りをグルグルと回る。
少しづつ、その半径を小さくしながら。
「マシンガンってすぐ弾を消費するからさ。」
カチッカチとトリガーを引く音がうるさい夜の中で聞こえてきた。
私はそれを合図に突撃する。
「難儀だよね!」
私はマシンガンを蹴り落としてやる。
予備のベルトみたいなのに繋ぎ直そうとしてるのを。
てかこれ、前回もそうだけど。
「ナイ─フだよね!?」
私はそれを間一髪で避ける。
前もそうだけど、AIってナイフ標準装備にしてるの?
こっちは持ってっても意味ないのに。
機械のずるいところじゃん。
私が姿勢を立て直す間に、敵はナイフを構え直す。
それが、大きく振りかぶられる。
でも──
「鈍い!」
私は足を振り上げた。
そして、足の装甲で受け止めた。
刃を、鎧で。
私はライフルを向けて。
違う、隙間にねじ込んで。
弾丸を、プレゼントした。
目の前の黒い影から力が抜けていく。
私がライフルを離してすぐ、空から墜ちていく。
そして、姿が見えなくなる。
見えるのは、ライフルの先端が赤く赤熱しているのだけだった。
「これ、銃身大丈夫かな?」
「裏切り者は、ハイジョする。」
突然、後ろから声がした。
流暢なのに、機械音混じりの──
後ろを振り向く。
その瞬間、強い打撃が飛んでくる。
「うぁっ!?」
「チッ、外したか。」
私は大きくのけぞる。
そのまま、ブースターを吹かして距離をとった。
紫の人型が空の上で踊っている。
その紫の上には、少し黒い赤が乗っかっていた。
「照合、完了しました。」
ヘルメットから、そんな声がした。
オペレーターさんの声で──
「ENγ-31、"毒鵙"。
ネームドです!」
その機体の右腕の、銀色の刃が一瞬、きらりと光った。




