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10話 〜花言葉〜

ついつい投稿をし忘れてしまう……

今でも13話半分ぐらいまでは書けてるんだけどね。

今、私は格納庫から出て訓練室に来ている。

流石現代というか。

実弾だけでなく、強いレーザーを発射して的に焼き付ける。

そんな訓練法もあるみたい。

私は今それをしてみている。


レーザーのが繰り返し使うならコストが低い、とのことだけど。

やっぱり、実物のが撃ち甲斐があるというか……

撃ってる!って実感があるんだよね。

反動もそうかもだけど、音とか煙とか。


「レーザーじゃ連射できないのも……」


精密機器だから、連発したら熱で壊れちゃうみたいなんだよ、レーザー。

奥に置かれた紙の的は黒く焼けこげている。

でも、一つも同じ焦げ跡はない。


「この前の外での訓練が懐かしくなってくる……」


手に握られたハンドガンの"再現"された重さが。

"本物"に慣れ始めていた私には、気持ち悪く感じられた。


「もう、戻れそうにないよ……」


そう、呟く。

わかっていたことだけど。

普通の庶民には戻れない。

そんなことが改めて理解できた気がした。


「そうだろうな。

元から。」


後ろから声がした。

それに、カラカラと回る音もした。


「……ロイさん、訓練の方参加しなくてもいいんですか?」

「ただ見てるだけなのは辛いからな。

どうせ暇なら、何か教えれる方がマシだ。」


振り返ると、そこにはロイさんがいる。

膝の上にはハンドガンが乗っかっている。

多分、声をかけてくる前に取ったんだろうな。


「それにしても、だが……」


彼は的の方を見た。

何か言われるのかな。

なんて、少し身構えてしまう。

自分でも下手だなって、わかってるから。


「上達したな。」

「……はい?」


上達した、なんて。

言われるとは思ってなかった。

いや、本当に。


「はい?って……

見ればわかるさ。」


彼は私の方を一瞬見て、すぐに的に視線を戻す。

黒が付きすぎて斑点になった的を。


「でも、頭狙ってるのに全然違うところに当たってますよ?」

「前は掠りもしていなかっただろう、大半。

少しは自分に自信を持て。」


そう…だったっけなぁ?

よく覚えてない。

あっ──でも?

あの日は午後に敵襲にあった方のインパクトが大きすぎて忘れてたけど、そうだった……気もする。


「でも、動かない的相手でこれですよ?

私の相手は空にいるんです。

こんなんじゃ、当たらないですよ……」


今まではマシンガンという連射が効く武器だったから、なんとか当てることができてた。

でも、今まで、なんだよ。

マシンガンってすぐ弾が切れるから、数が増えたら……

多分、私もあの人型と同じようになっちゃうかもしれない。


「……アイリスの花言葉を知っているか?」


花言葉……?

私──じゃなくて花のだよね?

どんな花だったっけ?


「花言葉は、"希望"だ。」

「……そう、なんですね。」


だから、なんなのだろう。

私は別に──


「お前はまだ弱いかもしれない。」

「……はい─」

「だから、これから強くなって希望となればいい。

ただ、それだけのことだ。」


ロイさんは私の方をまっすぐに見つめて言った。

それなのに、私は──


「……そう、ですね。」


顔を背けてしまった。

正直、怖かったから。

戦うのじゃなくて。

何もわからない、自分のことが。


「……それにしても、花言葉なんて。

意外とロマンチストなんですね、ロイさん。」

「あぁ、そうだろ?」


私の言葉に彼はそう返した。



訓練室での射撃訓練の後。

時刻は13時を回った頃。

私はというと──


「わァァ〜〜!!」


目の前には、ご飯に茶色のルーがかかったもの。

具材には牛肉、にんじん、玉ねぎ、イモ。


「カレーだぁ〜〜!」


この艦に乗って初めての訓練の日。

あの日ぶりのまともな食事。

そりゃ、嬉しいよね。


「いただきます。

……ちゃんと、食感がある。」


乾パンとスープじゃ、温かい、硬い、柔らかいのどれかしかなかったから……

本当に……


「生きてるって感じ。」


いつのまにか、そんなことを呟いていた。

……大袈裟だなぁ、私。

たった3日乾パンだっただけだよ?

その前に一回サンドウィッチ食べたじゃん。


「──ノア。」


突然、その名前が飛び出てきた。

私の口から。

まるで、弾丸のように。

本当に突発的に。


どこかで生きているのなら、私より豪華なものを食べてて欲しいな。

本当に──

もしかして、私の年齢を越しちゃったりしたりして。


それでも、いいかな。

ただ、生きててくれたら──


「よっ、嬢ちゃん。

元気そうだな?」

「あっ、ダグラスさん。」


ダグラスさんは私の座るテーブルにお盆を置いた。

ちょうど、私の前に。


「射撃訓練、どうだったよ?

ロイがベタ褒めしてたぞ?

"俺なんかよりよっぽど成長が早い"ってな。」

「そうなんですね……

いえ、そうですね。」


なんというか、ロイさんらしい。

私はカレーを頬張るその手を止める。

全部噛んで、飲み込む。

ダグラスさんに、聞きたいことがあるから。


「あにょ……

コホッ、コホ。」

「……あぁ?」


やばい、まだ米が喉に残ってた。

盛大にむせた。

ダグラスさん、心配そうな顔してるよ。

私は水をグビっと飲む。

そして──


「ロイさんって、なんで比較したがるんですか?」

「あぁ……そのことか。」


本当に、純粋な疑問。

自分と私を比べて、私のことを褒めようとする。

私の自信をつけるため。

……なのかなって、薄々思っているけど。


「あいつは、軍学校では落ちこぼれだった。」


ダグラスさんはそんなことを語り出した。

その表情にはいつもの笑顔はない。

真剣そのものだった。


「あいつ、座学はともかく実技の成績がダメだった、とさ。

そんなだから、周りと比べられてたのが、癖になっちまったんじゃないか?

ただの推測でしかないけどな。」

「……そうなんですね。」


……本当にそうなんだ。

冗談じゃ、なかったんだ……

でも、今は──


「でも、あいつは今、この艦で戦闘機のパイロットをしている。」

「……はい。」


それって十分、すごいことだと思う。

わがままで、ちゃんとした訓練を受けずに戦場に出た私よりも。


「何より、自分に後輩ができたのが嬉しいんだろうけどな!」


ダグラスさんは再び笑った。

……私には、後輩とかそんな概念がよくわからなかったけど。


「……ですね。」


私は静かに頷いた。

カレーのルーは、ほとんど残っていなかった。


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