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6-デカい!

「はぁ」

 一通り片付けを終えて、着替えるために更衣室へ入った。綾香のサボり癖には困ったものだ。一部、次郎のようなユーザーから狂信的な人気を得ているので安易にクビにできないのも質が悪い。

 上下一体型のドレスを脱いで下着姿になった。

「……にしてもデケえなあ」

 ブラジャーに吊られた胸を持ち上げてみた。生でここまでデカい乳を見るのは初めてかもしれない。というか、液晶越しでもここまではそういないだろう。その癖腰回りはスッキリと締まっており、いわゆるボンキュッボンだ。魅力的だが自分の体となると話は違う。

 と、一人思案しているとガチャリとドアの開く音が。

「ん?」

 振り返ると、そこには表情の固まった雄二が。

「あー、そういえば更衣室こっち使うの言ってなかったっけか。すまん雄二、少し待っててくれるか」

 俺の声に雄二は固まった体をようやく動かし、

「あ、ああ、もちろん待つ! それよりすまん、覗きみたいになっちまって!」

 慌てた様子で扉を閉める雄二。あんなに悪がらずともいいのにな。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「お疲れ様でござる、葵氏!」

「ああ。サンキュ、次郎」

 暗い夕方の道路。手を振ってくれる次郎に手を振り返して答えた。

「それにしても中華メイド服も良かったでござるが、私服もセクシーですな!」

「お前が決めたんだろうが!」

 俺は次郎のケツを蹴った。

「ふぅん! 助かるでござる! 時に葵氏、今晩の宿は決まっているのでござるか?」

 俺は更になにやら盛られるのを警戒している。

 それを察したのだろう。次郎はこんな質問をしてきた。

「あー……無策だ」

 家へは帰りたくないが、どこかに泊まる金もない。

「そのー……悪いんだが、泊めてもらえないか?」

 言って、気付いた。今の体で男の家に泊まっていいものだろうか?

「無論、構わないでござるよ!」

「俺の体は今女なわけだが……その辺大丈夫か?」

「心配ご無用! 拙者がドMなのは葵氏もご存じでござろう? 蹴られたりしなければ発情しないでござるよ!」

「発情ってお前……」

 どうやら杞憂だったようだ。

 二人で次郎の家への道を歩く。

 この時だけは、元の自分でいられる気がした。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「着いたでござるよ。まあ、知っていると思うでござるが」

 手を広げてまるでバスガイドのように言う次郎。

「そりゃあな。朝も来たわけだし」

 一人でも来れる場所だ。わざわざ改めて紹介される場所じゃない。

「それもそうでござるな。ささ。姫、こちらが我が城でございます」

 膝をついて主人に仕える騎士のような仕草で次郎は扉を開ける。

「だーれが姫だ。ぶっ飛ばすぞ。第一城って程立派なもんじゃねーだろ」

 次郎の顎を足で軽めに蹴った。

「んはっ! いい蹴りでござる!」

「まあ泊めてもらう身分だ。このくらいにしといてやる」

「もっと蹴ってくれていいのですぞ!」

「ヤだね」

 俺は殴り合いは好きだがサディストじゃない。戦っている時特有の高揚感が好きなんだ。

「はぁ。ともかく、夕飯にするでござる。先にシャワー浴びてていいでござるぞ」

 肩を落とし次郎は言った。そんなに蹴られたかったのか、お前は。

「夕飯作るなら手伝うぞ。それなりに料理の心得はある」

「心配ご無用。というか手伝わないで欲しいでござる。キッチンは拙者の領域故」

 次郎はキッパリと手の平を前に押し出し俺の侵入を拒絶した。確かにコイツは菓子作り以外に料理も得意だ。プロ顔負けとまではいかないものの、ファミレス以上のものくらいは普通に出てくる。

「そ、そうか……じゃあ悪いけど先にシャワーいただくぜ。……覗くなよ?」

「誰がそんな変態染みたこと」

「お前が変態だから言ってんだよ!」

 コイツなら殴られるために覗きくらいやりかねない。

「安心しろ。料理中は真剣モードだ」

 口調も声色も変えて次郎は言った。

「いつもこれならなあ……」

 コイツがこうなるのは食材を扱う時と喧嘩の時だけだ。

 真剣モードが終わる前にシャワーを早く済ませたい。急いで服を脱いで浴室に入った。

「やっぱ……デカいな」

 裸になって鏡を見ると、爆乳具合がよく分かる。そして息子がどこかに行ってしまった寂しさも。

 まあ、自分の裸ばかり見ていても仕方ない。

 さっさとシャワーを浴びて出た。


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