12-しおらしくなられると弱い
撫子が嗜虐的な笑みで言った。コイツ、こんな性格だったか……?
「……くすぐったかっただけだよ」
俺が不機嫌そうに言うと、
「そういうことにしといたげるー」
撫子は不敵に笑い俺の下半身へ手を伸ばした。
「そこは自分でやる。これは譲らんぞ」
撫子の腕を掴み制止した。
「なんだー、つまんないのー。じゃあ今度はお姉ちゃんの番ね!」
あかすりを俺に手渡し撫子は背中を向けた。
……綺麗な背中だ。
丁寧に背中をあかすりで擦る。
「ぁんっ……」
撫子は色っぽい吐息を出す。
理性が保たないぞ、これは……
背中が終わり、次は前を残すだけとなったが……
「すまん撫子、俺はもう出る!」
俺は逃げ出すように洗面所へ出た。
「えー! お姉ちゃんの意気地なしー!」
撫子の文句が聞こえるが無視して今日買った下着と部屋着を爆速で着て俺はリビングへ向かった。
「葵、妹とのバスタイムはどうだった?」
こちらもまた嗜虐的な笑みでお袋が言った。
「……自分を律するのが大変だったよ」
まさか撫子があんなに積極的になるとは。
「二重の意味で禁断の恋に発展しなかったの? 残念ねえ」
本当に残念そうにお袋は言った。自らの子供同士がそんな関係になっていいのか……?
「とにかく俺はもう寝る。今日は疲れた」
本当はただきょうだいというだけの一重の禁断の恋だが否定する気にもならず俺は自室へ向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ん……?」
誰かがベッドの中に潜り込んできた感触がして、目が覚めた。
「お姉ちゃん、一緒に寝よ?」
ベッドに侵入してきたのは撫子だった。
「お前……男の布団に潜り込むなんてはしたないぞ」
「今は女の子! 何回も言ったでしょ?」
俺に抱き着きながら撫子は言う。
「撫子、その、胸が……」
胸が当たっている。俺も男だ。妹とはいえこうも密着されると少々ドキドキしてしまう。
「当ててるの! お姉ちゃんがもっと私を好きになってくれるように」
「……疲れた。おやすみ撫子」
俺は全てを放棄して睡眠の暗闇に身を投じた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「んんー」
俺はまだ寝ている撫子を起こさないようそうっとベッドを抜け出し伸びをした。早くに寝たからか、随分と早くに目覚めてしまった。
特にやることもないので家族の朝食を作ることにした。撫子はパン派なのでトースターに食パンをセット。お袋はご飯派なのでレンジでご飯を温めて目玉焼きを焼く。これは俺の分も用意する。
と、フライパンを火にかけていると二人が起きてきた。
「いい匂いー。お姉ちゃん朝ごはん作ってくれたのー? ありがとー」
朝に弱い撫子は間延びした声で目を擦りながらリビングに入ってきた。
「私の分も作ってくれたの? ありがとう、葵」
お袋は既にキッチリと着替えを済ませていた。
「暇だったからな。あ、お袋。俺今日から次郎ん家泊まるわ」
「えー、なんでお姉ちゃん⁉」
撫子が抗議の声をあげた。
「お前のスキンシップが異常だからだよ。あそこまでくっつかれるとその……理性が保たん」
「そんなの要らないのに!」
未だに怒った様子の撫子。
「ともかく、これはもう決めたことだから。何言われても変えんぞ」
「むー!」
撫子は怒った様子で俺の胸に顔をうずめた。
「まあまあ。そろそろ食べないと遅刻するぞ」
「……たまには帰ってきてよね」
寂しそうな目で撫子は言った。
……覚悟が揺らぎそうになるな。
「ああ。でも、スキンシップは程々にな?」
「うん……昨日は、ごめんね。お姉ちゃんの気持ち、考えてなかった」
俺が苦笑するのを見て、撫子は謝った。
「反省しているならよし。そろそろ本当に遅刻するぞ」
時刻は七時半。そろそろ出ないとまずいだろう。
「そうだね。じゃ、行ってきます!」
トーストを咥えて撫子は家を出て行った。
「はぁ、撫子があんなに俺の事を好きだったとは……嬉しいけどなんだか複雑だ」
「姉妹仲良しで母親としては嬉しいわよ?」
「度が過ぎてるって話だよ!」
俺は呑気なお袋の言葉に突っ込んだ。




