アーサー王子の反駁
「は?」
皆の沈黙を破り、アーサーが首を傾けて言った。
「悪魔が人間に戻って、ちゃんちゃん、だと?」
唇の片端を上げ、ははは、と渇いた笑いを浮かべる。
「話が違うじゃねーか」
据わった目で悪魔を見、アメリアを見遣った。
「王命は、『滅びの魔女を殺せ』。……悪魔を使役できるならそれもいいと思ったが、ただの人間となれば話は別だ。当初の予定通り、魔女殿には死んでもらおう」
カチャリ。
引き金を引く。
「おい!やめろ!」
待て。
叫ぶ声も虚しく、ジャラジャラと鎖を鳴らしてメフィストフェレスがつんのめる。
バン。
血飛沫が舞う。
「なぜだ……」
アーサーが愕然としてランスロットを見つめる。
「……なぜ、でしょう」
頭から血を流しながら、ランスロットは薄く笑った。
「気づいたら、こうしてました」
「……馬鹿野郎」
「はは、いいんですよ。だってアーサー様は、魔女狩りなんかしなくても、立派な王になれるじゃないですか」
「阿呆。糞。馬鹿」
はああ、と大きなため息を吐き、目を拭ってアーサーは息を吸った。
「わかったから。だから、死ぬな。お前、ゴキブリ並みの生命力だろう?」
「ははは、失礼だな……」
アメリアに覆いかぶさったまま、彼女を抱きしめた。
アメリアは、泣きながらヒュウヒュウと声にならない声を絞り出す。
「ランス……の、バカ」
「はは、もー。二人とも容赦ないな」
ランスロットは、幸せそうに笑った。
視界が血で霞む。
アメリアの頬を手で包んで、涙を拭う。
「そんな顔すんなよ」
あはは、と声を上げて笑う。
「幸せだったよ」
ふるふると首を振るアメリアの髪を梳く。
もうすぐ意識が途切れるだろう。
「じゃあ、な」
俺がもし、ただのランスロットだったなら、好きだとてらいなく言えただろうか。
ランスロット、と呼ぶ声を遠くに聞きながら、俺は意識を手放した。




