魔女狩り
よく晴れた冬の朝だった。
アメリアは、朝日で目を覚まし、伸びをして身体を起こした。
晴れた日の朝はむしろ寒い。
手をすり合わせながら暖炉に火をつけ、スープを温める。固くなったパンを添えて、朝食にした。
ランスロットが消えてから、半月が経とうとしていた。師匠が出かけてからは、ひと月足らずというところか。
街や森に、何度も探しに行ったが、二人は見つからなかった。
アンダーソンさんは、師匠と会ったと教えてくれたが、それは半月以上前のことだ。
それ以来音沙汰がないのは妙だった。
アンダーソンさんは大丈夫だと慰めてくれたが、心配ばかりが募る。
ついこの間まで、師匠とランスロットと三人で食卓を囲んでいたのに。
そう思い出してしまうと一人の食卓がひどく虚しくなって泣きたくなる。
アメリアは眉間にぐっと力を入れて涙を我慢し、モグモグと無理矢理パンを頬張った。
なんとか食べ終わり、調薬のために薬草をすりつぶす。
ゴリゴリと努めて無心にしていても、気がつくと二人のことを考えてしまう。
仕方なく手を止めてため息を吐いた。
師匠だけでも心配なのに、どうしてランスロットまで消えるのよ。
こんなときくらい、一緒にいてほしかった。
二人が二度と戻ってこなかったらどうしよう。
頭のどこかにある不安は、言葉にしたら現実になりそうで、顔を出す度奥へ奥へと閉じ込めていた。
ゴリゴリ。ゴリゴリ。
涙が伝っては拭き、すりこぎを動かす。
心がいっぱいいっぱいで、家を囲むようににじり寄る男たちの気配に気づけなかった。
家の外で、誰かが呟いた。
「――時よ留まれ、汝は美しい」
カランカランカラン。
呼び鈴が鳴る。
ギイイと鈍い音を立てて扉が開いた。
軍服に身を包んだ数人の男たちが、素早く家の中に侵入した。
用心深く銃を構え、アメリアを囲む。
「殺すなよ」
男たちの指揮をとるその声が、背後から近づいてくる、
何が起こっているのか理解できない。
すり鉢を抱えたまま、アメリアは呆然とし、振り返った。
「魔女の処遇はアーサーさまが判断する」
信じたくなかった。
金髪碧眼の青年から、無表情で紡がれた声。
聞きたかったその声を、こんな形で聞きたくなかった。
「……ランス、ロット」
呟く声をかき消すように、ガン、と鈍い音が響いた。
視界が暗転し、アメリアは意識を失った。




