悪魔、少女を拾う。
真っ白な雪の中に、女の子が落ちていた。
血と泥にまみれた彼女の上に、さらに雪が積もっていく。
「ああ、このまま時が止まればいいのに。あなたはとても、美しいわ」
彼女が言った。
ギイ、と扉が開いた。
僕は、彼女を抱いて、家に入った。
花瓶の中のすみれの花が、僕を笑っているような気がした。
常に流れていく時間の中で、僕とこの場所だけが、まるで水たまりのように流れが淀んでいる。
僕は死にかけの少女を、淀みの中に巻き込んだ。
***
死にかけの少女は、すくすくと、愛らしく育った。
大した世話もしていないのに、僕を師匠と呼んで懐いた。
「ししょう!一緒に寝よう?」
「うん?眠れないのかい?」
アメリアのために寝台も毛布も用意した。
だがアメリアは毎日のように枕を持って僕の部屋にやって来る。
「……一緒がいい」
僕の質問には答えず、もぞもぞと布団の中に潜る。
頭を撫でると安心したように目を閉じ、すうすうと寝息を立て始める。
「全く、寝付きがいいな」
思わず声に出してくすくすと笑った。
寝付いたなら彼女の寝台まで運ぼうかと思ったが、諦めた。
アメリアが僕の寝間着の裾をぎゅっと握って離さなかったから。
親が子にするように、アメリアを抱きしめた。
「愛しているよ、アメリア」
可愛かった。
僕を慕う無邪気な彼女は、僕の渇いた心を満たした。
彼女には、僕しかいない。
僕は自分をせせら笑った。
おいおい、人の親の真似事がうまくなったもんだな。
お前は人の子を飼っているだけだろう?
愛玩動物のように。
無力で、無条件に愛してくれる存在を。




