12話 ブルーウルフ
零が剥ぎ取りを終えると、ブルーウルフの遠吠えが聞こえてきた。
(さっきのブルーウルフな気がするな)
何となくだが嫌な予感がしたため、干し肉とコーヒーで腹と喉を潤した後に、この場から 移動することにした。
軽く辺りを散策していると、オレンジ色の毛皮をしたイタチみたいな生き物を発見した。
体は細長く、足は比較的短くて頭部は平たい。鼻面はとがっていて、耳は幅広くて短かった。
その生き物はランプの光に驚いたようで、威嚇するような鳴き声を上げると逃げていってしまった。最初から逃げ出すモンスターを初めて見たので、興味が湧いた零は、後先考えずに逃がすまいと追いかけ始めたのだった。
◆◇◆◇
「見失ったか……」
最初はイタチのようなモンスターを上手く追いかけることが出来ていた零だが、相手が草むらに入って姿を消しながら移動するため、途中で振り切られてしまっていた。
ランプで辺りを照らしながら小さく溜め息をつく。
「奥まで進み過ぎたみたいだ……」
もう少し慎重に行動するべきだったかと自分の行動を反省しつつ、気を取り直して一旦浅いエリアまで戻ろうと、来た道の方向に歩き出す。
しかし零はわずか2、3歩歩いただけで足を止めた。
前後左右の茂みから再びブルーウルフが四体(ABCD)飛び掛かって来たからだ。
「何っ!?」
驚いて目を見開くが、すぐさまブルーウルフ(A)の下に潜り込む様にスライディングをして、飛んでいる相手の腹部に剣を突き立てた。
「ギャンッ!!」
鳴き声と共に絶命したブルーウルフ(A)は地面に突っ伏す形で落ちる。
そして起き上がった零に狙いを定める3匹(BCD)のブルーウルフ達。
零の意識が3匹のブルーウルフをどのように狩るのか思考を始めた瞬間に、背後で木の枝が折れる音が聞こえた。本能的に身体を捻りながら横に飛び退くと、背中に鋭い痛みを感じる。
3匹いるブルーウルフの前方に着地したそれは、他のブルーウルフと比べて2回りは大きな身体をしたブルーウルフだった。
(こいつが親玉か……)
このゲーム内で初めて自身に傷をつけた相手を見据えながら、集中力を高めていく。
まず3匹のブルーウルフたちが零に向かって一斉に向かって来る。
(まずは相手の足並みをバラバラにする!)
零は地面に落ちている小石を素早く掴んで、一番左端のブルーウルフ(B)に投げつける。左のブルーウルフは石を避けるためにさらに横に広がったため、一瞬だが隙間ができた。
(今だ!!)
チャンスを逃すまいと足並みの崩れたブルーウルフに突っ込んで行く。
まずは真ん中のブルーウルフを左に躱して横っ腹を斬り裂き、隙を見せた左のブルーウルフを避けて横っ腹を掻っ切ると、そのままの勢いでボスブルーウルフに突っ込んで行く。
ボスブルーウルフは右前足で零を踏みつけようとして来るが、それを避けてボスブルーウルフの身体の下に入り込み、下っ腹を剣で斬り上げる。
「マジかよ!?」
だが、斬りつけた場所には傷一つけられず、そのままボスブルーウルフが跳び退いたため、ブルーウルフとボスブルーウルフに前後で挟まれる形となってしまった。
(傷一つつけられないのは予想外だったな……)
ボスブルーウルフの見た目はブルーウルフと同じで藍色の毛並みをした狼だ。
(大きさが違うだけでここまで通常のブルーウルフと性能が違うとは……)
武器が初期の装備だというのも一つの原因だとは思うが、かなり厳しい戦いになった。
背中に受けた傷を見る限り、一回でもまともな攻撃をこちらが受ければ、死ぬことは間違いない。
零が攻撃したブルーウルフ2匹は息絶えてるようだから、実質2対1。
(まずは1対1に持ち込む!)
ボスブルーウルフを無視するようにブルーウルフに向き直り、走り出す。
しかしボスブルーウルフは執拗に零に向かって襲い掛かって来た。
(速い!)
このままだとボスブルーウルフからの攻撃も受けることとなる。
(それなら!)
目前に迫ったブルーウルフが迎撃のために飛び掛かってくる。
零は不敵に笑うと飛び上がり、ブルーウルフの顔面を踏みつけバク転し、背後にいたボスブルーウルフの上を通り過ぎる瞬間、急所である目に向かって剣を突き刺した。
「ギャン!ギャン!」
目の中に深々と突き刺さった剣の柄に摑まって、振り落とされないようにしていた零だが、ボスブルーウルフが身体ごと横に一回転しようとしたので、柄から手を離して飛び降りる。
一回転してまた立ち上がったボスブルーウルフだったが、零を少しの間睨んだ後に、ゆっくりと地面に突っ伏した。
それを見た残った1匹のブルーウルフが慌てて逃げ出して行くのを横目に、零は慎重にボスブルーウルフに近づいて行く。
目に刺さった剣を引き抜き、もう一度剣を突き刺したが反応は無い。
「倒したか……」
達成感と満足感と共に、背中に鋭い痛みが走る。顔を顰めて背中に傷があったことを思い出す。そこで零は持ってきていた薬草を取り出し、背中の傷を覆うように張り付けた。
少し痛みが和らいだことで、ホッと溜め息を吐き、倒れ伏しているボスブルーウルフに目を向ける。
彼は最初のエリアでダメージを受けたりはしないだろうという、慢心をしていた自身の浅はかさに苦笑いをしつつ、剥ぎ取りを開始しようと剣を持ち直した。





