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第八百六十四話

 飯を食ってると、警報が鳴った。


「所属不明艦発見」


 あー、はい。

 これだけドデカいものが移動してると様々なものが引き寄せられてくる。

 デブリやら漂流した戦艦の残骸やら、廃棄された衛星やら。

 ほとんどはシールドで防御できるが、大きなものが装甲に突き刺さる。

 安全確認したら装甲を交換。

 壊れた方はリサイクルする。

 いやー、やっぱり長距離航行しないと運用方法がわからないわー。

 衛星やら戦艦は分解して調査する。

 データがあれば妖精さんが分析する。

 他のものはベルガーさんたち古代人調査チームが調べる。

 ベルガーさんはこの間の遺跡の調査といいハードワークすぎるような気がする……。

 本人は喜んでるのでいいか……。

 なにやらバラバラになりかけながら装甲に突き刺さった軍艦は何百年も前の幽霊船のようだ。

 工兵が分解して倉庫に置く。

 幽霊船と言っても、分解された姿じゃなにも怖くない。

 俺はベルガーさんと調査チームに同行。

 工兵と分解作業に入る。

 装甲にぶつかり破損、もともとかなり劣化してる。

 それをプラズマカッターで外から切っていく。

 すでに内部構造はわかっている。

 生命体もいないのはドローンで確認した。

 蜘蛛型ドローンをケビンの動きを学習したAIで動かすものだ。

 これにより調査から攻撃まで一般兵にもある程度群れを制御することができるようになった。

 センサーとドローンの二重チェックで安全を確認し、油圧ドアの倉庫。

 しかも空調と生命維持装置なしの状態でフル装備の宇宙戦用戦闘服を着て作業する。

 俺を暇な状態にしてるよりはマシという判断だ。

 燃料はエネルギーパックが開発される前の遙か昔のもの。

 すでに気化してなくなっている。

 爆発の危険性はないようだ。

 長年宇宙線にさらされたせいか外装はボロボロ。

 少し触っただけで崩れていく。

 それを切断していく。

 なお俺は現場監督までは許してもらった。

 暇にしてるよりはマシと思われたに違いない。

 京子ちゃんも俺より偉い現場監督と参加してる。

 解体した戦艦の外壁をプラズマできれいにする。

 するとかすかに残った船体の外装が現われる。


「ラターニア艦ですね」


 ベルガーさんが鑑定してくれた。

 古いラターニア語で船名が書かれている。

 ちょっと知らない単語だ。

 翻訳機にも登録されてない。

 そらく固有名詞だろう。

 ラターニアのことなのでラターニア遠征船団にいるポリーナさんに写真つきで資料を送る。

 ついでに解体許可も取る。

 もう半分解体しちゃったけど。

 でもわかった時点で報告。

 解体してもいいか許可を取る。

 拒否はされないだろう。

 それにこれで向こうの偉い人にも伝わる。

 許可が出るまで休憩。

 空気のある区画に移って水分を取る。


「解体許可出ました」


 しらばらくするとポリーナさんから文書が送られてくる。

 判子多いな。

 相当面倒な案件だったようだ。

 最近さあ、ラターニアの中でも俺を危険視する勢力がだんだん力を持ってきたんだよね~。

 それ自体は問題ない。

 俺だって近所に俺みたいに次々領土広げていく指導者がいたら嫌だもん。

 だから怖くて面倒だけどつき合うって路線でいいと思う。

 だからその勢力ともつき合っていくつもりだ。

 その結果がこの判子の量。

 ま、内部で異論があるのはいいこと。

 ラターニアの政治が正常ってことだろう。


「ありがとう。じゃあこっちで解体するね」


「資料の送付お願いします」


「了解ッス」


 ということで作業に戻る。

 ベルガーさんはその間も解析をしていた。


「お疲れ様です。なにかわかりましたか?」


「わからないことがわかったというところです」


 そりゃそうだな。

 聞き方が悪かった。


「なんでラターニアがこんなところをうろついていたと思います?」


 この辺はラターニアの領土になったことはないはずだ。

 うろつくにしても遠すぎる。

 逆にラターニア人苦難の時代と考えてもさすがに遠すぎる。


「漂流か……探索任務か……それとも奴隷船だったか……わかりません」


「ですよねー」


 なんだか面倒なものを拾ってしまった。


「危険な生物なんかは?」


「確認されてません。空気がない状態でも生存できる微生物がいる程度ですね」


「毒や病気は?」


「問題ありません」


 ならいいか。

 そのまま分解。

 乗員のミイラ化した遺体が発見された。

 ミイラでいいのかな?

 とにかく水分飛んで乾燥した遺体。

 ラターニアに遺体の画像を送る。

 遺体への敬意と捉えるとあまりよろしくない行為だが、かなり昔のものだ。

 ラターニア側の機嫌を損ねることもないだろう。

 俺たちちゃんとラターニア式で死者を弔うって信頼あるし。

 ラターニア遠征船団からラターニアの従軍神官に来てもらう。

 はい作業はここで終了。

 遺体が損壊しないようにケースに入れて引き渡し。

 向こうで遺体の調査はするだろう。たぶん。

 うーん、なにもわからない。

 これ自体が足止め策って気もしない。

 なにかの偶然だろう。

 だけどその偶然で仕事が増えたのは事実。

 汚染物質除去室を経て、食堂で幹部会議。酒と焼き鳥を添えて。

 俺はジュースでいいや。まだ仕事あるし。


「それで、なにがわかった?」


 イソノの野郎がネギマを食べながら言った。


「わからないことがわかった」


「まだその段階か」


「ゼン神族の動きは?」


「特にない」


「ローザリアは?」


「定期的に交信を試みてるけど返事なし」


「結局行くしかないか」


「なんだよねえ……」


 わからないのでつくねを食べる。

 軟骨入ってないやつ。

 俺は軟骨入りじゃない方が好き。

 なんて……どうでもいいやりとりをした48時間後に事態は急変するとはまだ誰も思ってなかった。

 ゼン神族もとうとう本気出してきたわけである。

 それはまたもや警報から始まった。


「所属不明機多数発見」


「デブリの可能性は」


 オペレーターに問い合わせる。


「ありません」


 ですよねー。

 そろそろ来ますよね~。

 わかってはいたんだけど、とうとう尻尾をつかんだ。

 ゼン神族はどこにいるかわからないから怖いのだ。

 つまり表に出しさえすれば、普通の敵でしかない。

 強さはまた別の話だけどね。


「総員警戒せよ」


 さーて、やりますかね。

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